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「第2回新型コロナウイルス感染症に関する消費者意識調査」から見えてきた消費者の意識変容と事業者が今取り組むべきこと

2020年5月25日、首都圏・北海道を含めた日本全国で緊急事態宣言が解除され、各種自粛要請も段階的に解緊急事態宣言は解除されたものの、新しい生活様式への適用と、経済活動を両立していかなければならない困難な状況が続きます。

誰も答えを持っていない中、営業を再開・再興していくには旅行者にひたむきに向き合い、自分達で答えを作っていくしかありません。ただ、事業者が今まで以上に旅行者者のことを考え、行動するようになることは、将来の日本の観光産業全体を一段と強くすると信じています。

本調査報告書が、全国の観光事業者の方々にとって何かしらのヒントになれば幸いです。

また調査にご回答・ご協力くださった全ての皆様にこの場を借りて心より感謝申し上げます。

↓ 報告書(PDF版)のダウンロードはこちらから ↓

※PDF版もnote本文版も、同様の内容を記載してあります。
※一部読みづらかった部分のレイアウトの修正をしました(6/8)


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アマビエは、170年ごろ前、肥後の海から現れ「疫病が流行したら自分の姿を絵に描いて人々に見せなさい」と言って海に姿を消すという伝説の妖怪です(画像は厚生労働省HPより)。熊本県観光連盟では小学生アマビエイラストコンテスト in The Worldも実施中ですので、ご参加のほど何卒宜しくお願い致します。

■小学生アマビエイラストコンテスト IN THE WORLD
https://kumamoto.guide/topics/detail/132


1−1.はじめに:調査概要

調査目的
5月25日、首都圏・北海道を含めた日本全国で緊急事態宣言が解除され、各種自粛要請も段階的に解除された。夏からは国内需要喚起のための大胆なクーポン割引企画「Go To キャンペーン」も予定されている。それに向けて、感染症対策を行った上で売上を上げていくにはどうすれば良いのか、観光事業者が対策を考え、実行していくための判断材料として本調査を実施し、考察を行った。

調査概要

■調査期間:2020 年 5 月 31 日(日)~ 6 月 2 日(火)
■調査対象:日本全国の一般消費者の方
■調査方法:無記名でのWEB アンケート方式
■調査実施主体:熊本県観光協会連絡会議
(阿蘇広域観光連盟、一般社団法人天草宝島観光協会/一般社団法人 人吉温泉観光協会/平山温泉観光協会/宇城市観光物産協会)
■協力:東海大学観光ビジネス学科エコツーリズム研究室
■有効回答数:N=3,041件

備考
本調査は、あくまで5月31~6月2日時点での消費者の状況・心情を踏まえた回答結果です。状況は刻一刻と変わっていくため、結果を参照する場合はご注意ください。(今後、状況の変化があり次第、定点観測としての調査を逐次行うことを想定しています)

1−2.はじめに:総括

無題

■調査結果
全国の一般消費者3,041名より、緊急事態宣言解除直後の5月末現在の旅行に対する意識調査を実施した。感染拡大期から一旦収束の方向に向かっており、また約2か月に渡る外出自粛期間の反動もあり、第1回(4月末)調査時よりも旅行に前向きな兆候が見られた一方、お客様に「安心」を提供するための必須条件として各事業者が取り組むべき感染症対策の具体的な要望・傾向が見えてきた。

-再開時の感染症対策として、人数制限、スタッフや他のお客様との接点を減らす工夫、追跡システム導入、感染対策ポリシーや発生時対応マニュアルの事前・現地の両方での提示が必須条件である。

-現段階では不確定要素の多いGo To キャンペーンではあるものの需要喚起効果は期待でき、夏・秋頃を中心に日本全体を目的地候補として旅行を検討している方も多い。各地域・事業者は今のうちから現地のリアルタイム情報・感染症対策情報を発信し続けておくことで選ばれる可能性が高まる。

■観光関連事業者に向けて
Go To キャンペーンの追い風も生かしつつも業界全体が安売り競争に陥ることがないよう、各事業者においては自助努力として感染対策を徹底し、コロナ禍の制約下だからこその付加価値を高める工夫をし、それを適切にお客様に伝えるチャネルを持ち、前向きな変化の契機としていくべき


2.回答者属性

無題

今回の調査は、第1回と同様に無記名のWEBアンケート形式で実施を致しました。回答フォームはGoogleフォームで作成し、Facebookターゲティング広告を用いて全国の無差別の方からご回答をいただいております。そうした中で3,041件の回答を頂き、熊本発だったこともあり九州地方の割合が多いものの、概ね人口比と相似した回答数を得ることが出来ています。

居住地区分では、大都市圏・地方都市・それ以外(工業都市、農村漁村、離島など)で分けて回答を頂いています。


無題

オンライン調査のため30~60代割合が高い(Facebook使用のため、年齢層が若干高め)です。また、日本の人口比よりも男性の回答がやや多くなっています。


無題

また、今回は属性毎に傾向を知るためにも、平時の旅行について確認しており、「よく旅行する方」が28%、「年に数回旅行する方」が57%となっておりました。

衛生対策の状況に関しては、99%以上の方が何かしら実施しているとの回答を得ております。


無題

分析を行う上での参考として、その他上記の属性を伺いました。


3.感染症対策へのニーズ

今回、各業種の事業者さまが「何に優先順位高く取り組めばよいか?」の指標となるよう、消費者が「ないと嫌だ」と思うものを質問しております。


無題

【宿泊施設】感染症対策で「ないと嫌だ」と思うこと

宿泊施設では、「個包装・使い捨てのアメニティやスリッパの提供」が最も多い結果となっており、次いで「お客様を含む来館者の全員マスク着用必須」「利用者数の制限」となっておりました。

一番数の多かったものが「個包装・使い捨てのアメニティやスリッパの提供」ということは少し意外でもあったが、やはり使い回しのものに対する感染リスクへの不安の表れではないかと思われる。さらに「利用者数の制限」や「スタッフ、お客様のマスク着用必須」など基本的な感染症対策に関して望んでいる人は多く、全体的にかなり意識が高い。部屋に空気清浄機の設置を希望している数もかなりあった。加えて「感染発生時のマニュアルの公開」など、想定されるリスクに対してのマネジメントがどれほど出来ているのかの確認を利用者も求めているのが伺える。


無題

【宿泊施設】感染症対策で「ないと嫌だ」と思うこと(補足:地域区分別)

旅行者の感染対策への意識は、地域区分ではほとんど変わらない


無題

【宿泊施設】感染症対策で「ないと嫌だ」と思うこと(補足:男女別)

旅行者の感染対策への意識は特に女性の意識が高い


無題

【宿泊施設】感染症対策で「ないと嫌だ」と思うこと(補足:対策状況別)

旅行者の感染対策への意識は、日常の感染対策の実施状況ごとで大きく差がある


無題

【宿泊施設】感染症対策に伴う旅館のおもてなしへの意識変化

宿泊施設の中でもお客様との接客機会が多い伝統的な旅館のおもてなし対応について、コロナ禍においては「無くても良い」ものとして「スタッフ一同でのお迎え&お見送り」「仲居さんからのお部屋でのお茶&おしぼり出しなど」「客室までの荷物運び」となっておりました。

日本の伝統的な旅館のおもてなし自体を否定する意味ではなく、コロナ禍においては「もてなさないことがおもてなしになる」という結果が出ているものだと感じます。

三密の回避のため、スタッフの削減やサービスの工夫が必要な中、利用者にとって伝統的な旅館のおもてなしになくても良いと思われるものを具体的に聞いてみたが、非常に興味深い結果となっている。「仲居さんによるお茶やおしぼりの提供」「荷物運び」「スタッフ一同でのお迎えやお見送り」など、どこの老舗旅館でもこれまで当たり前に見られていた光景であるが、これからはそれがなくてもコロナ対策としてむしろポジティブに捉えられると思われる。おもてなしに対しての考え方は時代と共に変わってきており、お客様のニーズも変容している今だからこそ、宿泊施設におけるおもてなしの意味やスタッフの配置、経費のかけ方の優先順位などを再考するよいきっかけではないだろうか。


無題

【飲食店】感染症対策で「ないと嫌だ」と思うこと

飲食店では「店内・テーブル当たりの人数制限」が最も多い結果となっており、次いで「対面を避けた座席配置」「卓上に常設の調味料や箸・爪楊枝の撤去」という結果でした。

既にあちこちで飲食店が営業を再開しており、様々な対策の様子が報道されていることもあって、基本的な対策としての「人数制限」は当たり前で、加えて各店舗での自助努力に期待されている様子がわかる。しかし、「店員のフェイスシールドの着用」「従業員の健康チェック表の提示」、まして「営業時間の制限」にはそれほどこだわりはないようである。時間の問題ではなく感染対策をしながらの営業を望んでいると考えられる。また万が一感染者が発生した際に濃厚接触者への連絡が速やかに出来る「追跡システムの導入」に関しても約2割の人が望んでいることが興味深い。


無題

【アクティビティ】感染症対策で「ないと嫌だ」と思うこと

アクティビティの場合も「人数・定員の制限」が最も多く、次いで「従業員が大声を出さない工夫」、「受付の簡略化やキャッシュレス決済」となっており、密を避けること、不要な接触を避けることを意識している方が多い結果となっておりました。

観光地におけるアクティビティ催行時に三密を避けることはかなり難しいが、「人数の制限」「大声で話さなくてもコミュニケーションが取れるような工夫(スピーカーやインカムなどの利用)」でそれを軽減することを望んでいる人がかなり多い。また直接お金のやりとりや応対を避けるためにも「キャッシュレス決済」を望んでいる人も4割ほどおり、アフターコロナにおける決済はキャッシュレスが当たり前になることが想定される。また、これはコロナ収束後の訪日観光客の再訪においても必須であることから、システムの導入を考える好機となるだろう。


無題

【イベント】感染症対策で「ないと嫌だ」と思うこと

イベントに関しては「人数・定員の制限」「大声を出さない工夫」「お客様の声量の制限」となっておりました。

より多くの不特定の参加者が想定されるイベントに対しては、様々な感染症対策を広範囲に渡って望んでいる傾向が見られる。特に「人数・定員の制限」を希望する人は顕著で、7割近くにのぼる。従って採算性を考えるとイベントの実施に関してはかなり慎重にならざるを得ないであろう。また、不特定多数の参加者の割合によって「追跡システムの導入」希望者の割合が上がっているのも興味深い。アクティビティでは3割、イベントでは4割に上がっている。リスク対策として、「追跡システム導入」による濃厚接触者への早急な連絡は参加者からの要望でもあることが注目できる。


無題

感染症対策の確認のタイミング

商業観光施設での感染防止対策については、「事前に確認する」「現地で確認する」方が約36%となっており、72%の方が商業観光施設での感染防止対策を確認する事となっています。

感染症の対策に対して事前確認をする人が3割以上、現地で確認する人も含めると7割を超えることから、各施設は感染症対策をしていることを公開することが今後の観光には必須と言えるだろう。


無題

感染症対策に伴う料金意識

コロナ感染対策が徹底された場合の料金についての質問では、「通常と同じ料金であるべき」との回答が最も多く、次いで「多少(100~500円程度)上乗せされていても良い」という結果となっておりました。

事業者は一刻も早く事業を再開して収入を得ることが急務だが、同時に感染症対策を行うこともお客様の受け入れには必須条件となっている。その為に人数制限をしたり対策にかかる経費を考えると、単価を上げない限り採算は取れない状況であろう。それに対してお客様は、割引を期待しているのは1割程度のみ、通常と同じ料金あるいは多少上乗せしても許容範囲との反応である。客が感染症対策の徹底を最優先に望む現れでもあり、それに対しては多少の料金アップはやむなしということだろう。今後、国や市町村の支援策も上手に活用し、安売りをせず営業再開することが望まれる。


4.現在の旅行意向

今回、外出自粛規制の段階的な緩和も見えてきたこと、またGo Toキャンペーンの認知も高まってきたことを踏まえて、今年度の旅行意向に関する具体的なことを質問しております。


無題

今年度の旅行の時期

旅行時期に関しての質問に関しては、「秋頃」との回答が圧倒的に多く、約6割の方が秋の旅行を検討されているという結果になっておりました。6月〜7月という回答も25%程度となっており、6月19日以降の県境をまたいだ移動の緩和以降には一定数が宿泊を伴う旅行に出かけるのではないか?という結果となっておりました。

今年度は長期休業や休学後で夏休みが短くなることが予想されると共に猛暑の予想もあって、夏よりも秋頃に旅を考える人達が一番多い。「今年度は行かない」(当分は控える)人達も1割程度に留まっており、社会状況の変化により旅行に前向きな考え方の人も増えてきているのかもしれない。


無題

今年度の旅行の時期(補足:属性別)

属性別でのクロスの集計によると、秋頃に旅を考える人達の中で「移住に興味を持っている人」の割合が多いのもコロナの影響で移住先を具体的考え初めている兆候かもしれない。また、「以前に比べて収入が増えた人」も早期からレジャーとして旅を具体的に考えていることが想像できる。


無題

今年度の旅行の対象範囲

今年度の旅行範囲に関しては約半数が「日本中どこでも旅行に行く」という回答となっており、次いで隣県という結果となっていました。逆に、「旅行には行かない」という方は5%に留まっています。

前回の調査において、旅行は近場から始まり、徐々に距離が長くなる傾向が見て取れた。それから1ヶ月後の今回の調査では今年度中に日本中どこでも旅行したいと答えた人達の割合が半分にまで達し、海外まで行きたい人の割合も15%ほどあった。日本国内での感染拡大が抑制されたことで旅行への願望、行動も早まっていることが予想される。


無題

今年度の旅行の対象範囲(補足:属性別)

属性別でのクロスの集計によると、中学生以下の子供のいる家庭においては感染のリスクを考えてのことか、旅行予算や長期休暇の短縮によるものか、やはり隣県やエリア内と近場が多い傾向が見られる。それぞれのマーケットに対しての適切な旅行プランの造成が必要であろう。


無題

今年度の旅行における宿泊予約のタイミング

宿泊予約のタイミングについては、「3ヶ月前」「1か月前」で計70%と多数を占め、かなり前広に宿泊予約が行われる見込みとなっています。

コロナ感染拡大・収束の状況を見ながらの直前予約が多いと予想していたが、1ヶ月前には予約をする人達が半分、さらに3ヶ月前から予約する人達も2割もいることから、事前に色々リサーチをして行き先を決め、予約する人が多いことが想像される。現地からの吸引力のある情報発信は旅の行き先、時期を決定する際にも影響力が大きいため、実際の旅の動きが始まる前(キャンペーン以前)から現地からの魅力的な情報発信は効果的だと言えるだろう。


無題

この夏(6~9月頃)の旅行のきっかけ

この夏の旅行についてのきっかけとしては「キャンペーン」が最も多いものの、「観光地・観光施設からのリアルタイムの情報」「観光地・観光施設での感染防止作の取組情報」が求められているという結果となっておりました。

コロナ禍の直近のホリデーシーズンにおける旅の動機付けは、やはり「キャンペーンの実施」が数的には一番多い。しかし、ここで特筆すべきは地域・事業者が主体的に取り組める「観光地・施設からのリアルタイムの情報」や「感染対策情報」の数が多いことだろう。旅の予定を考え始める割引キャンペーン開始前から実際の旅の実現までの間にどれほど効果的な情報発信が出来るかが、選ばれるデスティネーションとなるかどうかの大きな分かれ目かもしれない。



無題

Go Toキャンペーン(割引クーポン)の利用意向

収束後の観光需要喚起策として期待されている「Go Toキャンペーン」の利用についての回答では、「旅行の予定はなかったが、割引クーポンが出るなら旅行を考えたい」と答えた方が全体の4割程度、「元々予定していた旅行に加えて、旅行予定を増やして割引クーポンを使いたい」が2割程度となっており、失われた需要を呼び起こすきっかけになりうる施策であると言える結果となっていました。

Go Toキャンペーンの開始時期はまだ定かではないものの、政府はその導入を決定している。その中で、その時期や使用期間、使用の仕方などまだ色々な課題はあるものの、Go Toキャンペーンの利用を考えて旅を計画する予定の人がほぼ8割に達することから、観光事業者においてはその機会を最大限に活用し、利益を得るための準備が必要だろう。


無題

Go Toキャンペーン(割引クーポン)による旅行予算の変化

Go Toキャンペーン等で割引があることで、旅行の予算・お金の使い方の変化についての設問では、「旅行の全体予算は変えず、いつもより豪華な旅行にする」が最も多い結果となっておりました。他にも「割引率が最大化するように、旅行の予算全体を増やす」「旅行の予算全体は変えず、回数を増やす」など、積極的な消費意向が表れた結果となっておりました。

割引クーポンがある場合、旅行の予算全体は変えずにいつもより豪華な旅行をする割合が一番多く、旅行の回数を増やしたり、予算全体を増やす割合もかなりあることから、キャンペーン時期にはリピーターや周辺観光も含めて滞在期間延長も期待できるかもしれない。それに向けて周辺地域と連携した滞在プログラム充実による消費額アップも備えたい。



5.まとめ(小林寛子教授より)

コロナ禍において消費者の立場ではどの程度のコロナ対策を望み、優先順位の高いことは何か、それをうけて今後の対策として何が必要と考えられるかをまとめると以下のとおりである。

■感染対策の実施とその公開

結果としては、旅を再開するにあたっても三密を避けることに対しての利用者の意識はかなり高く、その対策がきちんとされていること、対策ポリシーの公開、さらには感染発生時の対応マニュアルの公開などにもかなりの期待がされていることであった。旅の再開は政府のGo To キャンペーンなどがきっかけになる可能性が高いものの感染対策は必須であり、それが外から見てもしっかりわかることが求められていると言える。また、追跡システム導入など濃厚接触者への早急な対応についてもお客様側としてもかなりの割合でそれを望んでいることが分かった。

■地域の観光事業者間の連携

観光は一つの宿泊施設や飲食店で完結するものではなく、地域を訪れ、一定期間をその地域で過ごすことで地域にお金が落ちる。この期間を長く、そして落とすお金を多くするためには地域にどのように人に滞在してもらうかを考える必要があるだろう。宿泊施設だけでなく、飲食店、アクティビティ、イベントなど関わるすべての観光事業者が連携し感染対策をすること、そしてそれを公開することが安心安全の旅の再開の第一歩ではないだろうか。加えて、三密を回避した形での事業再開においては人数の制限なども必須である。これまでの稼働率を維持しながら、人数を制限する方法、同時に一カ所に人が集中しない方法を工夫したり、一カ所に集中する人を分散させるためにも地域全体で観光客を回すしくみを考えたり、また単価を維持しながら延泊、リピーターという形で観光消費額を上げる、また付加価値をつけて単価そのものをあげる方法もこれから検討すべき課題と言えるだろう。

■情報の発信

今回のアンケートで旅の動機付けとして感染対策の情報公開はもちろん、観光地・観光施設からのリアルタイムの情報発信が有効であることがわかる。キャンペーンの実施のみならず、現地からの“今”を伝える魅力的な情報発信はデスティネーションとして選ばれるための必要条件であろう。

■新しい観光のあり方を検討

コロナによって観光のあり方は大きく変容する。それを前提にコロナ前に戻るのではなく、アフターコロナの新しい観光のあり方を考えるいい機会であると言える。長い歴史の中で培われてきた伝統的なおもてなしのあり様についても今一度見直してみる、泊食分離や、シングルユース、お一人様用プラン、キャッシュレス決済の導入などこれまでなかなか実践できなかったシステムについても検討するいい機会ではないだろうか。
考察者:小林寛子氏
東海大学 経営学部 観光ビジネス学科 教授(エコツーリズム研究室)

オーストラリアで世界遺産の砂の島フレーザー島にエコリゾートを開発するプロジェクトに参加し、1992年オープン後はその運営とマーケティングを手がける。その後日豪でのエコツーリズムコンサルタントとして、商品開発、マーケティング、人材教育などに携わり、2013年より現職。観光ビジネス学科においてもゼミ学生との実践的なフィールドワークを通じて、地域の課題解決のために、地域の宝を保全しながら地域振興につなげるイベント企画・運営、訪日観光の新商品開発、人材養成、日豪環境ボランティアプログラムの開発などに取り組んでいる。
著書に「エコツーリズムってなに?~フレーザー島からはじまった挑戦~」(河出書房新社)他。NPO法人日本エコツーリズム協会理事、阿蘇エコツーリズム協会理事、公益財団法人地方経済総合研究所理事、熊本県観光審議会委員、熊本復旧・復興4か年戦略委員会委員、熊本市インバウンドマーケティングアドバイザーほか。


5.おわりに

本調査報告書の記載内容について、個別の明示的な承諾を得ることなく、複製、転用、販売などの二次利用することを固く禁じます。ご使用の際は、下記連絡先メールアドレスまでご相談くださいませ。

※本調査は、熊本県の観光の中間支援に関わる若手有志により実施しています。調査から報告書の公開まで全て手弁当で実施していますので、温かいご支援もいただけますと幸いです。

※本調査結果について、本ページ冒頭にてPDF版がダウンロード可能です。

連絡先
熊本県観光協会連絡会議
Mail:allasoassociation@gmail.com(担当:阿蘇広域観光連盟)






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