魚類との交流〜おべんとうの場合

おいでちゃんがいなくなってしまったあと、しばらくして我が家にやって来たのが、おべんとうです。
名前としては変わっている自覚がありますけれども、由来は簡単。つまり、おべんとうである丹頂という種類は、真っ白なボディ、頭に梅干しのような赤くて丸い模様がついているんですな。
その様、鶴のごとし、という優美な名前であるのに、我が家でついた名前はおべんとう。名付け親の美的センスと生まれの貴賎が知れるというものです。満足だけど。

そんなド庶民の家庭に育ったおべんとうですが、本名をObentou von Öwentu、オベントウ・フォン・オヴェントゥと申しまして、これは語学に堪能な友人がつけてくれました。フォンがついた、れっきとしたお貴族様の名が付いているのです。すてき!かっこいい!よかったね、おべんとう!

ところで、金魚の白は美しいという話をしても良いでしょうか。おべんとうは丹頂なので透明鱗ではないのですが、その白の美しさといったら、薄い赤や、緑、青。いろんな色の光が合わさって白を形成している。そんな、光の三原色の真ん中を体現したような色なのです。まさに虹のごとし。
そんなご飯粒あるかい、というツッコミもごもっともでありますが、まあ、本家丹頂鶴の方もご飯粒色ではないので、許していただきましょう。

あの頭の赤色って、赤色の羽が生えているのではなく、剥げていて皮膚が透けているだけってご存知でした?わたし、長いこと知りませんでした。おつうさんがハゲだったなんてショック。

閑話休題、話を魚類に戻しましょう。おべんとうの梅干しは、しかしながら、深漬けの梅干しのように紫がかっても、シワシワでもなく、鮮やかな朱色をしています。こんな色の梅干し、着色料たっぷりの安いお弁当に入っているカリカリ梅でしか見たことないわ。
しかもしばらく色揚げを目指していた時期があって、エビやらクロレラやらをやってみたら、頭の朱は変わらずに、尻びれに朱が入るという謎のポテンシャルを発揮。お、おまえさん、そのおべんとうの具は一体……?

しかしこの子の尾びれ、家庭内で言うところの尻尾、の話もしておきましょう。
はじめに白状しておきますと、わたしは決して良い飼い主、上手な飼い主ではありません。かの女を何度尾ぐされ病にかからせて、メチレンブルーやエルバージュというお薬漬けにしたことか……
そんないきさつもあり、かの女の尾はいま……数えると……5股……?普通、丸出の金魚は四つ尾とか三つ尾なので、ぱっと見からして奇形です。しかも病気の名残で赤い血管がいく筋にも走り、いわゆる美魚とは言いがたく……
しかしながら、わたしはおべんとうが体長ほどもある長い尾をひるがえして泳いでいるところを見るのが、とてもとても好きなのです。

そんなおべんとうも、この8月23日でうちに来て4年になります。当歳だった小さくてやせっぽちな金魚は、今や立派な人格のある、食いしん坊でお腹がパーンと張った、可愛い可愛い子になりました。

おべんとうがいてくれて、よかった。
今は5歳(金魚は数え年で年齢を数えます)、頑張って長生きしてね。

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