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王さまの本棚 90冊目

『グラン・ローヴァ物語』

紫堂恭子作/潮出版社

本棚での位置はここ。

『バジル氏の優雅な生活』の奥です。

いやもう、ツイートがすべてなので、補足でしかないのですが、ほんの子どものころ、きれいなお姫さまの絵がほんとうに好きで、講談社おはなし絵本館シリーズでも、白雪姫とかシンデレラの人の絵がとても好きで……!

ちょっと話は脱線しますがこの絵本シリーズ、いろんな作者、翻訳者、挿絵画家の集合体でありまして、しかもちょっと、よく単品で絵本になっている王道の作品たちとは違う。
わたしは瀬田貞二さんの言葉の遣い方がとても好きなのですが、『おだんごぱん』も『がらがらどん』も、それぞれ『ころころまるぱん』、『やぎのブルーセ』で出会ったんです。だからわたしにとっては母が歌ってくれた『まるぱん♪まるぱん♪どこいくの?♪』が原体験ですし、がらがらどんたちは、ブルーセたちなんです。ここだけは!瀬田貞二さん、トールキンの翻訳者でとてもとても思い入れがあってすっごく尊敬しているのですが、ここだけは……そうなんです。

話が少し戻って、そして、わたしその誰が描いたのかわからない絵の、白雪姫やシンデレラがとても好きだったのです。

それと並行して、わたしは何度か書いてきたのですが、「母の本棚から本を取り出しては表紙を眺める遊び」が好きで、山岸凉子や萩尾望都が描いたハヤカワ文庫の表紙なんかを眺めていたのですが、これもそのうちの一つだったように思います、たぶん。記憶はとてもあいまいになってしまっているのですが、きれいな女の子だなあ、わたしは2巻の表紙が好きだな、と思っていたことを覚えています。
そしたら母が、読んでいいよ、と。

子どものころ、わたしはたぶんすなおな質で、というよりも、「子どもらしい子どもでありたい→そしていい子ねって褒められたい」という、承認欲求がとても強くて、本の表紙を眺めるのが好きでも、それを「読むもの」としては認識していなかったのです。
はじめて、図書館で大人の書架から借りた本は、今でも覚えています。
このはなしは、またおいおい。

閑話休題、『グラン・ローヴァ物語』は人生のずいぶん最初のほうに読んだもので、もう何度も読み返しているのですが、おとなになってわかったこともあるし、変化した視線や感想もあります。そういう成長とともに味わう読書の醍醐味を教えてくれた作品でもあり、いま手元にあるのはレンタル落ちのあまりきれいではないものなのですが、いつかきれいな装丁で復刊してほしい名作でもあります。紫堂恭子さんが、まさかの、デビュー二作目のこの作品をピークにちょっとわたしの好みからは外れて行ってしまった作家さんなので、どうなることか……ではあるのですが。

物語はというと、正直に言って、(わたしがオタクであることを公言して憚らない)J.R.R.トールキン『指輪物語』のオマージュです。人物名にも遊びがチラホラ見て取れるので、トールキンが好きな方は苦手かもしれません。わたしはおそらく、ファーストインプレッションが『ホビットの冒険』と同じくらい、『指輪物語』よりは随分前だったので、刷り込みに成功したというか、いまでも特に違和感はありません。
さいごなんて、毎回おうおうと泣いちゃいますし。

『王さまの本棚』、あんまり薦める気はない、という体で書いてきたのですが、これはぜひとも読んでいただきたい、良質なファンタジーです。

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