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王さまの本棚 48冊目

『ある小さなスズメの記録 人を慰め、愛し、叱った、誇り高きクラレンスの生涯』

クレア・キップス作/梨木香歩訳/文芸春秋社刊

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そう、この本にはずっと悲しみが漂っています。それは、クラレンスの亡くなった後に書かれた過去形の物語であるからで、わたしたちにも愛しい人の不在を悼む心があれば想像に難くないでしょう。

わたしは「サブタイトル」「梨木香歩」「酒井駒子(表紙などの絵を描いている)」という三つのキーワードから、かわいらしいファンタジーのような物語を期待してこの本を買ったのですが、その予想は見事に裏切られます。
ここに描かれているのは、淡々とした事実、事実からにじみ出るいたわりと友愛、そして静かな筆致の慟哭です。
わたしにここまで冷静な視点を以って詳細に愛する人のことを書けるだろうか、あるいは、ここまで深く人を愛しているだろうかと思うと、背筋の伸びる気がするのです。

我が家がねこを漫然と深く愛する様と著者の愛し方は異なるものだけれど、どちらも幸福だなあと思うものです。

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