見出し画像

あと10年 <004>

誤解のないよう注釈を加えると、うちの会社はブラック企業というわけではない。むしろ極めて良心的であり、社会貢献という意味でも立派な部類であると思う。しかし、経営陣の考えに触れ、実情を知ると、人員の補充などがいかに困難なのかもわかる。

ご多分に洩れず、うちの会社も労働環境は厳しい。残業は当たり前だし、土日祝日も出勤だし、有休もとれず、法令に基づいて年間5日取得したこととして調整される。これだけ人手不足と言われていても、最低賃金のままで専門性を求められ、社会情勢に従って商品も軒並み値上げするが、そもそも消費が伸びない。インボイスで会社負担は上がり、今までなかったような税金も上がり、うちのパートはほとんどが扶養控除内ばかりなので社会保険範囲の拡大(仮に月の収入が10万だと1.5万持って行かれる)で生活苦になるし、最低賃金が上がっても上限が決まっているので給料は増えず、労働時間が減り、さらに一人の負担が増えていく構造だ。
会社がブラックというより、結果を出さなければならず、みんながギリギリで踏ん張ってやっているということ。これは、何もうちの会社に限ったことでなく、日本全体で起きていることなのだろうと思う。うちの部署はかなり残業を減らしたが、その分明らかに過重な仕事量を回され、どうにもならなくなった。それでもノルマはないし、飲食や交通機関などに比べればお客様のクレームも「まとも」である。制度が悪いとも、会社が悪いとも思わない。ただ、みんな真面目なので、壊れるまで働いてしまうのである。

「ゆでガエル」という言葉がある。カエルは熱湯に入れると驚いて飛び出すが、水から熱を加えていくと、出るタイミングを見失い茹で上がってしまうという例えだ。冷静に、置かれている状況を俯瞰してみて、自分で限界ラインを判断しなくてはならない。

そしてもう一つ。僕が会社を辞めるのは、自分の無能をこれ以上思い知りたくないからだ。ただ、これも「無能」であるのは今の会社の仕事においてだ。少なくとも自社パンフのデザインなどでは能力を振るうことができたし、他部署との調整力も発揮した。だから会社は僕を辞めさせず適正のある仕事につけさせようと配慮してくれているのだが、まぁ、もう僕は針の筵なので辞めるという考えは変わらないけれど。

能力への自信という意味ではTwitterなどSNSのフォロワー数にも勇気づけてもらっている。自分のやりたいことで生きていけたらと、それを本気で考える段階がやっときたわけです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?