【ロゴ検証】日産の新しいロゴにはこんな法則があった!
株式会社ニードのデザイナー、櫻井です。
私は入社して3年目になりますが、普段はスポーツウェアブランドや化粧品のウェブサイトのデザインや更新作業を行ったりしています。
と言ってもウェブだけでなく、先月は大学案内の見開きページのイラストとデザインを担当しました。作ったものが冊子になって手元に届いた時はとても嬉しく感じました。
話は変わりますが、皆さんは普段車に乗りますか?
ニードのオフィスは渋谷ですが、都内では日常的に車に乗る人は少ないかもしれませんね。私も普段車には乗らないですが、ニード社で制作している案件では自動車関係もいくつかあります。
車は毎日街で見かけますし、仕事で関わったりSNSや広告で日常的に情報が目に入ってきます。テレビCMは特に多いなと感じます。
そんな中、7月15日に日産から新ロゴが発表されました。
今回はこちらの新ロゴについて検証していきます。
日産の新ロゴ制作の経緯
日産の公式ページでは制作チームの意図や制作のプロセスを読むことができます。
新しいロゴは、工業的でハードな印象から、上品で親しみやすく、デジタルとの親和性の高いデザインへ移行したと言えるでしょう。
引用:日産STORIES GLOBAL
https://global.nissanstories.com/ja-JP/releases/redesigned-nissan-logo
たしかにガラッと印象が変わり、シンプルで上品なロゴになりました。
近年、自動車ブランドがロゴを2D化する流れがあります。各社様々な意図があるはずですが、デジタルデバイスとの親和性の高いロゴにするためという点は共通していると思います。
今回の新ロゴ制作において、日産グローバルデザイン担当専務執行役員であるアルフォンソ アルバイサ氏は、制作のキーワードに「薄く、軽く、しなやか」の3点をチームに与えました。
制作チームは2017年の夏から約2年間構想を練り続けたそうです。(すごい!)
制作プロセスは3Dロゴの検討から始まり、イルミネーション付き3Dロゴ、イルミネーションなし3Dロゴ、そして2Dロゴと続いて作られ、2年の間で様々な懸念点をクリアするためのシミュレーションが成されています。
イルミネーションでロゴの輪郭をはっきりと表現するためには、輪郭の厚みをどれくらいにすればよいのか。イルミネーションは、各国の法規制に適合しているか。そして、当然ながら、ロゴは光っていない状態であっても、強い印象を与えなくてはなりません。
引用:日産STORIES GLOBAL
https://global.nissanstories.com/ja-JP/releases/redesigned-nissan-logo
シンプルなロゴですが、エンブレムのライトにするために、細部の太さや余白にかなりこだわったようです。
また、エンブレムの法規制で様々な確認に時間がかかったのではないでしょうか。
今年からロービームの自動点灯、オートライト機能が義務化されていますがエンブレムにも規制があるとは知りませんでした。
さっそく新ロゴを検証
前述のプロセスや制作チームのキーワードを踏まえ、規則性を検証した結果、ただ眺めるだけでは分からない様々なことが見えてきました。なお、2Dと3Dでロゴが異なるので、この記事では2Dロゴについてのみ検証します。
2Dと3Dの違いはこちらです。
2Dロゴは上下にあるアーチ部分が正円なのに対し、3Dロゴは正円でなく旧ロゴ同様に少し横にのびています。そして光ることを考慮してかアーチが若干細いです。
下の画像では旧ロゴと新ロゴ3Dを重ねて比較しています。アーチの楕円が合うことが分かります。
今回は正式なデータを元に再現していないので解釈違いもあるかもしれませんが、結論から言うと、グリッドや黄金比などのたくさんの「規則性」を用いて構成された、考え抜かれたロゴデザインでした。
それでは以下から、詳細な検証結果を解説していきます。
グリッドについて
まずは縦のラインを引いて分割しました。
少し微差がありますが、NISSANタイポの上下にあるアーチの出っ張り部分に合わせ全体を8分割にできました。
両サイドの「N」はラインにぴったりと合わず、揃って見える様に外にずらして調整していると思われます。
2つ目の「S」はぴったりラインに揃っていました。
「A」はちょうどラインの中心になりましたが、意図的なのかは分かりません。
カーニングを揃えつつ、グリッドにも添った美しい見た目です。
黄金比について
黄金比とは、古代ギリシャでの発見以来、人間にとって最も美しく安定した比率とされる美術的要素のことです。アテネのパルテノン神殿、 レオナルド・ダ・ヴィンチのモナ・リザなどに用いられ、現代ではペプシやTwitter、アップルのロゴマークにも黄金比が使われています。
ここでは下の図のような黄金比 1 : 2 : 3 : 5 : 8 : 13 の円を当てはめました。
上の図をまとめると
アーチ部分の円のへこみ → 1
タイポのアルファベットごとのサイズ → 2
アーチとタイポの余白 → 3
2つ目の「S」から右端まで → 5
左端から1の円にそって2つ目の「S」まで → 8
全体 → 13
特筆すべきは全体を囲っている13の円です。
全体よりやや大きい円ですが、下の画像のように新3Dロゴを重ねると赤いラインで囲ったNISSANロゴの帯部分が13の円の直径にとても近くなります。
帯部分は創業時のロゴから新ロゴまで引き続き表現され、日産ロゴの要素として外せない部分です。ロゴの意味は以下の様にまとめられています。
創業者である鮎川 義介が抱いた「至誠天日を貫く」という信念は、「強い信念があればその想いは太陽をも貫く、必ず道は開ける」という意味を表しています。
引用:日産STORIES GLOBAL
https://global.nissanstories.com/ja-JP/releases/redesigned-nissan-logo
今まで日産ロゴのモチーフについて明記はされていないですが、NISSANタイポの上下にあるアーチ部分が太陽、帯部分が道を指していると思います。
画像引用:創業当時のロゴ
出典:http://cartalk.tokyo
アーチ部分について
上下にあるアーチ部分についても、規則性を検証するために円に添ってラインを引いてみます。
青いラインの幅を1とすると、赤いラインの幅は1.7になりました。
黄金比ではないですが1.618にとても近い数字です。
まだ何かありそうなので、赤いラインの幅と同じ直径の円を作り、色々な箇所に当てはめてみたところ、3つ発見がありました。
1.「S」のカーブ部分と円の大きさが同じ
「S」のカーブは正円で赤い円にぴったり当てはまっています。これはアーチ部分との印象と揃えているからかもしれません。
2.「A」のなかぬき部分の三角形の頂点が円にはまる
「A」が正三角形に限りなく近く、あえて幾何学図形の様に見せているのかもしれません。
3. アーチから中側に円の大きさ分、一本ラインを足すと「I」のラインに添う
これは意図されていないかもしれませんが、縦ラインで8等分した時に「I」だけラインに添わなかったことにも関連するかもしれません。
タイポについて
おそらく作字されたオリジナルのフォントです。
似たフォントを集めてみましたが、当てはまるものはありませんでした。
また、新しいロゴには「薄く、軽く、しなやか」というキーワードがありますが、アーチの出っ張り部分に目を向けるとしっくりきます。
試しに角張らせてみたロゴです。
しなやかさと上品さが一気に消えてしまいました。ローマン体の高級感に通ずるものがあると思います。
検証を通して見えてきたもの
先にも書きましたが分解することで、規則性が多く使われていることが分かりました。
日産創業時からロゴには「至誠天日を貫く」という信念が込められていますが、そこを踏まえ前回までの旧ロゴをうまく2Dに落とし込んだ美しいロゴデザインだと思います。
私自身、要素同士の余白やの要素の大きさは感覚でデザインしてしまうことが多いので、黄金比や規則性などを意識してデザインするべきだなと改めて思いました。
今後は、レターヘッドやディーラーの看板、SNSなどの媒体によって、2Dロゴと3Dロゴを使い分けていくそうです。
2Dロゴは今月から展開されていて、日産のウェブサイトのヘッダーロゴはすでに変わっています。(TVCMではまだ旧ロゴが使われていたりしますね。)
車のエンブレムの変更は2021年頃からなので、街で見掛けたときは光り方や立体感などにも注目したいです。
長くなりましたが読んで下さりありがとうございました!
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