見出し画像

サスティナブルな紙とその可能性とは?【セミナーレポート】

こんにちは。西川コミュニケーションズ(NICO)SDGs広報チーム“つつつ”です。少し前のことになりますが、SDGsを考える会の「啓蒙チーム」がNICOの従業員に向けたセミナーを開催しました!

セミナーのタイトルは、
「サスティナブルな紙とその可能性 〜紙の印刷物は環境に悪いのか?〜」
セミナーの内容は、

●印刷における「紙」という媒体が環境にはどのように関わっているのか?
●これからの未来での紙の持つ可能性とはどのようなものか?

という、紙に関わることが多いNICOの従業員にとって、興味深い内容です。オンラインで全社一斉に開催されたこのセミナーには、62名もの従業員が参加しました。

今回の記事では、セミナー開催に込めた啓蒙チームの思いをお届けしつつ、要点を短めにまとめたセミナーの全容をご紹介します!


セミナーはどうして開催されたの?

啓蒙チームはこれまでも社内にSDGsを浸透させるため、さまざまな啓蒙活動をしています。今回の「全従業員に向けたセミナー」の企画も、その一つです。
セミナーの冒頭では、啓蒙チームにも所属しSDGsの活動で指揮を取る鈴木さんから、従業員に向けて開催への思いが語られました。

<気持ちを熱く語ってくださる鈴木さん>

その内容は、

●NICOは長らく印刷業を主事業としてきた。
●昨今ではSDGsへの取り組みが進む中で、紙やインクを消費する印刷は環境負荷が高いものであり、ペーパーレスやデジタル化こそが美徳だという風潮が見受けられる。
●風潮に流され、クライアントや社会に対してより利便性の高い伝達・管理の手段を提供できなくなっては本末転倒だ。正しい理解というものが必要とされる。

……という、印刷の現場に長く関わってきたNICOだからこそ、実感をともなう切実なものでした。印刷という媒体について今一度考える機会にしてほしいという思いが込められていることが分かります。


セミナーの内容を、大事なポイントに絞ってお届け!

セミナーは、NICOと日ごろからお付き合いがある紙・パルプ分野の専門商社KPPグループホールディングス様にご協力いただきました。
今回のセミナー講師は、コーポレートコミュニケーション室の方が務めてくださいました。

セミナーの内容を大きく3つに分けた項目はこちら!

1:世界中で高まるサスティナビリティの重要性とは?
2:生産量が世界3位の日本。紙の歴史と、現在の市場とは?
3:今回のメインテーマ! 紙は、本当に環境に悪いの?

セミナーに参加された従業員の方も、復習を兼ねて読んでいただければと思います!

<オンラインでセミナーに参加する従業員。しっかり視聴しています>


1:世界中で高まるサスティナビリティの重要性とは?

人類の存続をも危うくすると言われる環境問題にはさまざまなものがあり、エネルギー資源の枯渇、地球の温暖化、海洋プラスチック汚染などはニュースなどでもよく報道されていますね。報道を見聞きする機会が増えるにつれて、人々の関心も高まっていると思います。

これらの問題の根本的な原因としてセミナーで言及されたのは、人口増加に付随して経済活動が活発化していることでした。
ご存知の方も多いかと思いますが、直近100年間で人口は急激に増加し、昨年11月に地球の人口は80億人を越えました…!35年後には100億人に到達する予測にもなっています。

セミナーでは、人口が増加し経済活動が活発化するに従いエネルギーの消費量も増加し続けていることが示されました。
地球の資源には当然ながら限りがあります。このままただ消費していくだけの社会では、人類の存続も危うくなってしまうというのも大げさな話だとは言えません。

このような状況を受けて1960年頃から環境対策が始まり、2000年にはSDGsの前身であるMDGs(ミレニアム開発目標)が設定され、そして2015年についに、よりよい世界を目指す国際目標である「SDGs」が国連サミットで加盟国の全会一致で採択されるに至ったことが説明されました。

サスティナビリティの重要性がどのような経緯によって世界中で高まってきたのか、そしてその原因が人口増加であることが、よく分かりました。

人口の増加によってエネルギーの消費量も増加し続けているんだね


2:生産量が世界3位の日本!紙の歴史と、現在の市場とは?

サスティナビリティが重要視されていき、あらゆる資源が大切であると再認識される中で紙という資材の見直しも始まっています。紙の印刷物の代わりとして「デジタル化」が進んでいますが、しかし同時に、プラスチック製品を「紙化」していく動きも加速しています。

セミナーではまず、紙の歴史から紹介されました。
紙のようなものが発明されたのは約2100年前であり、日本に伝わってきたのは約1400年前のことだそうです。紙はかなり長い歴史をもっています。

歴史の紹介の後には、現在の製紙市場の説明がありました。
紙の生産量は世界全体で年々増加し、2017年で4億トンを超えているそうです。国別に調べると、大きな国である中華人民共和国やアメリカ合衆国が群を抜いて高い数字を示しますが、そこに続いて3位なのが、日本!なんと世界の紙の生産量の5%を占めているそうです。
一人当たりの紙の消費量でも、日本は高い順位を示していました。

世界の紙・板紙生産量
https://www.jpa.gr.jp/states/global-view/index.html#topic01

日本製紙連合会

そんな日本国内で、紙の市場はどうなっているのでしょう。
古くには主に情報の記録方法として用いられていた紙ですが、現代においてその使用用途は多様に広がっていて、大きくは下記の3つに分類することが多いそうです。
包装産業紙:板紙、包装用紙など (例:段ボール厚紙)
●衛生紙
:衛生用紙、家庭用雑種紙など(例:ティッシュ)
●印刷・情報用紙
:上質紙、情報用紙など(例:新聞)

日本国内の紙の生産量は2008年をピークに、リーマンショック以降は年々減少しています。しかし用途別に見ると、印刷・情報用紙が減少傾向にあるのに対して、包装産業紙が微増傾向にあるとのことです。

セミナーでは印刷・情報用紙と包装産業紙の生産量が2020年に逆転したことにも言及されました。
これはコロナの影響により、オフィスで使用される紙の電子化が進んだことが一因だと考えられるそうです。逆に包装産業紙は巣ごもり需要に支えられ、世の中の経済全体が縮小した中でも数値は横ばいのままだったとか。

紙の需要は減る一方ではない、という点が意外な内容でした。さらに、今は先進国が大量に紙を生産・消費しているとしても、これから開発途上国の経済が発展していくことで紙の消費量はますます増えてくることが想定される……とお聞きして、資源としての紙の環境への関わりがますます気になってきました。

紙の需要は減る一方ではないんだね。


3:今回のメインテーマ!紙は、本当に環境に悪いの?

紙が環境に悪い、というイメージは一体どこから来ているのでしょうか?
それはおそらく「紙の製造 = 森林の減少」という意識ではないでしょうか。セミナーでは、製紙産業で「よくある誤解」とされる内容が4つ示されました。

●森林減少は紙パルプ産業のせい ●紙の製造には全て木を使っている ●木が減ってCO2が増えている ●紙パルプ産業はもう古い

この4つを「誤解」だとする理由も、しっかり説明がありました。

誤解その1:森林減少は紙パルプ産業のせい

これについては「紙の生産消費は森林減少の原因ではない」という答えを、国連の機関であるFAO(国際連合食糧農業機関)が出しているそうです。
2010年からの20年間で森林は年平均約470万ヘクタール減少していますが、その主な原因としては、農地などへの転用、違法伐採、森林火災などであるとされています。

でも、木を使用しているはずの紙パルプ産業が、森林減少の大きな原因になっていない理由は何でしょう? 
その答えは「健康な森のサイクル」にある、とのことです。

紙パルプ産業では、森のサイクルを行っていて、基本的に自分たちで植林をし、森林を育て、育て終わった木を伐採してパルプの原料のチップにしています。そのため森林減少の原因とはならずに紙の製造が可能になっているそうです。

木を植え、育て、収穫する。森のサイクルを行っています。
<健康な森のサイクル>


誤解その2:紙の製造には全て木を使っている

紙は木から出来ているというイメージは強いですが、なんと国内で使われる紙の原料の6割以上は古紙をリサイクルしているそうです!
古紙の回収システムは整備されており、すでに1990年には日本における紙の製造の原料は半分以上が古紙、という状況でした。2020年においては7割近くで古紙を使っているのだとか。

これは日本だけではないとのことで、同様に世界全体でも、古紙の回収率・利用率は6割ほどになっているようです。紙を製造するための原料が全て木だということはないのですね。


誤解その3:木が減ってCO2が増えている

木は若木である時にCO2を多く吸収し、成木になるとCO2の吸収量は減っていきます。紙の原料となるのは成木の段階だそうです。
製造された紙が焼却処分されるとCO2が排出されますが、原料である木が成長する際に二酸化炭素を吸収しているため、吸収量と排出量のバランスが取れているとのこと。
この点からも、自分たちで植林をし、森林を育てる「健康な森のサイクル」がいかに大切な役割を果たしているかが分かりました。


誤解その4:紙パルプ産業はもう古い

「いいえ、決してそうではありません」という、セミナー講師の方のしっかりとした否定が印象的でした。一例として挙げられたのは、海洋プラスチックの問題です。
海洋ごみの中でプラスチックが占める割合は7割にもなります。その対策の一つとして考えられている脱プラスチックでは、紙を使用していこうという動きが世界中で広がっているそうです。

プラスチックで出来ているペットボトルなどは海の中で500年残り続けるとも言われていて、しかも500年かけて分解されたとしても、マイクロプラスチック(5ミリメートル以下の微細なプラスチックごみの総称)は残ってしまうとされています。
それに対して、紙は自然界で分解されるということが注目の理由の一つ。例えば、新聞紙は自然界の中で6週間程度で分解されるそうです。
「紙」は新しい視点からの素材として見直されているのですね。


では改めて、4つの誤解についての結論をまとめてみます。

4つの誤解についてのまとめ。上記の太字部分を改めてまとめています。

伝える目的に合わせた選択をしよう!

セミナーの内容を通じて、紙は決して環境負荷が高いものではなく、脱プラスチックの流れの中で新たな注目も集めているということを改めて学ぶことができました。サスティナビリティの重要性が高まる今だからこそ理解が必要な情報も満載で、紙という媒体を見直すきっかけになりました。

紙かデジタルかという視点で決めつけると視野も狭くなってしまいます。クライアントや社会に本当に必要な伝達・管理の手段を提供するための選択肢は何かと考えて、伝える目的に適した使い分けを大切にしていきたいですね。


KPPグループホールディングス様 
https://www.kpp-gr.com/ja/index.html
KPPグループホールディングス様は1924年創立の紙・パルプ分野の専門商社で、連結売上高は国内第1位、世界第3位(2022年3月期)。 2022年3月末地点で45か国・147都市・157拠点に展開されています。

環境に配慮したさまざまな取り組みもしていらっしゃいます。
・グリーンプロダクト:環境負荷低減に資するさまざまな製品を開発し流通
・グリーンソリューション:古紙回収ボックスをショッピングセンターなどに設置するタウンecomo、機密文書を専用BOXで安心安全に回収するオフィスecomo、などの仕組みを展開


この記事が参加している募集

オープン社内報

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?