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ライターが挑戦!ChatGPTで記事作成はできるのか?

こんにちは! 西川コミュニケーションズ(NICO)SDGs広報チーム“つつつ”のハッシーです。

人が書いたような自然な文章を、ほんの数秒でアウトプットしてくれると話題のChatGPT。文章制作はそのうちすべてAIにお任せできるようになるのでは、なんて言われていますよね。実際、ChatGPTにどこまで書けるのかは、普段ライティングの業務をやっているハッシーとしても気になるところ。

そこで先日公開した【もっと働きやすい職場を目指して!組織の健康診断「社内サーベイ」やってます】の記事作成の際に、ChatGPTを取り入れてみました!

AIを仕事に取り入れて生産性を高めていくことは、SDGsの目標8「働きがいも 経済成長も」の達成にも欠かせません。はたしてライティング業務はChatGPTの活用でどう変わるのか。実際の記事制作に取り入れてみた感想や、そこで感じた課題についてお届けします。


ChatGPTってどんなもの?

まずChatGPTとは何ぞやというお話から。「もうバリバリ使ってるよ!」という方にはもはや説明不要かもしれませんが、まだまだ業務への活用はイメージもつかない方も多いのでは。

ChatGPTとは、AIが対話形式で質問に答えてくれる生成AIの一種です。開発・提供はアメリカのOpenAI社。最新版の「GPT-4」は有料版のみですが、「GPT-3.5」はアカウントを作成すれば無料で利用可能です(13歳未満は使用禁止。13歳以上18歳未満の場合には保護者の同意が必要)。今回、使ったのはこの無料版GPT-3.5です。

登場したばかりのころはいろいろな質問をぶつけておもしろ半分に使っていた人も多かった印象ですが、「GTP-4」の進化が目覚ましいこともあり、今ではビジネスシーンにおいてもこれをどう使いこなしていくかが業務効率化のカギとして注目されています。

ここで気を付けたいのは、ChatGPTはあくまで「それっぽいテキスト」を生成するものだということ。

膨大なデータから学習した「このテキストのあとにはこういうテキストが続く確率が高い」という確率論的な考えのもとに回答を生成しており、内容が正しいかについてはまた別の話です。学習元のデータが間違っていれば、ChatGPTも同じように間違えます。また、GPT-3.5が学習しているのは2022年1月までのデータのため、それ以降の出来事については知らないことも注意。(GPT4は2023年4月までのデータを学習)

ChatGPTは間違えることがあるから信用できない、なんて言う人もいますが、そもそも調べものをするための検索エンジンではないということですね。

そんなChatGPTをうまく使いこなせるかどうかは、入力する指示や質問の文章=「プロンプト」の作成が鍵になります。

プロンプトの作り方について、参考にしたのはこちらの方法。

確率論的にテキストを生成するというChatGPTの特性を踏まえ、例えば記事の要約をしてほしいなら

  • 最初に「あなたはプロのライターです」などChatGPTに役割を与える

  • 制約条件(〇〇〇文字以下で説明、〇〇にもわかりやすいように など)をつける

といったふうに、さまざまな回答条件を与えることで回答の精度を高めようという方法です。

では、このやり方を参考にして実際に記事を作成してみましょう。

社内サーベイ記事制作の流れ

今回の記事作成の流れは以下のとおりです。

話し手との事前打ち合わせ
  ↓
質問事項の作成
  ↓
インタビュー(リモート)
  ↓
インタビュー音声の文字起こし
  ↓
原稿作成
  ↓
原稿チェック(社内関係者)

このうち事前打ち合わせは、記事の目的や方向性を確認するためのものです。つつつはnote上で発表しているとはいえ社内報ですので、NICOが従業員に届けたいメッセージがぶれないことが大切。質問事項もそれに沿ったものを考えるため、必要に応じて話し手と事前の打ち合わせをしています。

今回はこの打ち合わせで「なぜ社内サーベイを実施するのか、実施することで何が起こるのかを従業員に理解してもらい、回答率を上げたい」という管理本部の要望を確かめています。

ChatGPTの出番はこれ以降。インタビューはさすがにお願いすることはないので、質問事項の作成と原稿作成に取り入れてみました。

まずは質問文を作成

というわけで、最初に取り掛かったのが質問事項を考えてもらうためのプロンプトづくりです。しかし私も初心者なもので、一度では到底うまくいきません。プロンプトを作り、ChatGPTに入力し、出てきた回答を確かめ、またプロンプトを修正し……を繰り返します。

しかし、生成された質問文はなんだか微妙。これで本当に聞きたいことが聞けるのか?

ChatGPTが生成した質問文の画像。質問文は以下のとおり。1.サーベイの目的は職場環境を改善することですが、具体的にどのような点を向上させることを目指していますか?
2.これまでのサーベイの結果を受けて、どのような具体的な対策を実施してきましたか?
3.社内サーベイに対する回答は匿名であり、個人が特定されないようになっていますが、それでもなお結果は信頼性がありますか?
4.社内サーベイへの回答が匿名であることにより、人事評価には影響しないことが保障されていますが、それについて従業員にどのように伝えていますか?
5.社内サーベイに対する従業員の理解度や参加意欲を高めるために、どのような工夫を行っていますか?
6.サーベイへの回答が継続されることが、職場環境の改善にどのように寄与していると考えていますか?
7.社内サーベイにおいて特に注目すべきポイントや改善が必要とされた領域はありますか?
8.従業員にとってサーベイへの参加が魅力的と感じられるようにするために、どのような情報やフィードバックを提供していますか?
9.サーベイの結果をもとに行われた対策が、従業員全体の満足度向上にどれくらい寄与していると考えていますか?
10.最後に、従業員に向けてメッセージを伝える際に重要視しているポイントや伝えたいことがあれば教えてください。
試行錯誤の途中。例えば質問3に「個人が特定されないようになっていますが」とありますが、
匿名性がいまいち周知されてないのがそもそもの課題。「完全に匿名である」を記事内で紹介したかったのですが、この質問ではその答えが引き出せそうにありません。


もちろん私が不慣れなせいも多分にありますが、それだけではない課題がそこにはありました。

課題①個別の事情を汲んだ深い質問は生成できない

そもそもこの記事の作成にChatGPTを取り入れてみようと思ったのは、サーベイが一般的な事柄だから。NICO独自の取り組みを紹介するような記事よりはやりやすいだろうと思ったわけです。

しかし、今回の記事の目的はあくまで「サーベイ実施の目的や効果を従業員に理解してもらい、回答率を上げること」。その目的に合致した質問を生成してもらうには、NICOがどんな会社で、サーベイの実施にはどんな背景があるのかといった個別の情報が必要になります。そこが抜けていると、「サーベイとは何か」というごく一般的なことを説明してもらうための質問文にしかなりません。

そういった事情をプロンプトにも盛り込まないといけないわけですが、懇切丁寧に書き連ねるのは骨の折れる作業です。でも書かないわけにはいかないし。NICOのことをまったく知らない外部ライターさんに、書面だけでライティングを発注するとなるとこんな感じでしょうか。

しかもGPT-3.5にはこれまでのプロンプトや出力を学習してくれる機能はありません。つまり今後もGPT-3.5でつつつの記事制作を続けるなら、NICOってこんな会社ですという説明を毎回しなくてはならないわけです。これはなかなか果てしない作業だ……。

課題②自分の中にイメージがないと、出力の良し悪しが判断できない

出力された結果に対して、この質問文で聞きたいことが聞けそうかというのが、すぐには判断できないことにも戸惑いました。

自分の中に目指すべき方向性がイメージできていないと、質問文だけあったところでその良し悪しが判断できないのですね。結局のところ、ChatGPTが出力してきたものを採用するかどうかの判断は、人間がしなければならないわけです。

とはいえプロンプトを作る段階で目指すべき方向性をしっかりと考えるなら、その過程で質問文も自然と出てきます。これもう、自分で考えたほうが早いのでは……。もちろん私がプロンプトの作成に不慣れなせいもあるのだと思いますが。

そんなこんなでくじけそうになりつつも、最終的にChatGPTで作ったのがこちら。

プロンプトを入力したChatGPTの画面。入力内容は以下のとおり。User
# 命令書:
あなたは広報課の社内報担当者です。
定期的に実施している社内サーベイについて、従業員の認知度を上げてより回答を集めることを目的としたブログ記事を制作することになりました。そのためのインタビューを社内サーベイ担当者に対して行います。以下の制約条件と入力文をもとに質問事項を出力してください。


# 制約条件:
・質問数は10個

# 入力文:
サーベイの実施概要
サーベイの目的
集めた回答はどう活用されているのか
サーベイの実施に関して課題と感じている点や、それに対する対策
今後について

それに対する出力がこちらです。

上に入れたプロンプトに対するChatGPTの出力結果の画像。テキストは以下のとおり。1サーベイの実施概要について教えていただけますか?具体的な手法や周期などについてお聞かせください。
2サーベイの主な目的は何ですか?従業員にとっての重要性や期待される効果について教えてください。
3集めた回答はどのように活用されていますか?具体的な例や成功事例があればお聞かせいただけますか?
4サーベイの実施に関して課題と感じている点があれば教えていただけますか?また、それに対する具体的な対策はどのようになっていますか?
5サーベイの実施において特に工夫している点や成功体験があれば共有していただけますか?
6従業員の認知度向上のために取り組んでいる具体的な取り組みや広報活動があれば教えていただけますか?
7サーベイへの参加率を向上させるための工夫やアプローチはありますか?
8過去のサーベイ結果から得た洞察が、組織内の意思決定や方針策定にどのように反映されていますか?
9サーベイの結果を通じて変化した具体的な取り組みやプロジェクトがあれば教えていただけますか?
10今後のサーベイに関する展望や計画について教えていただけますか?新たな試みや変更点があればお聞かせください。

やはりどうしても抜けている部分があるため、ここからあれこれと手を加えました。最終的に話し手に提出したのはこちらです。

ChatGPTの出力結果をもとにリライトした質問事項の画面。5つの大項目とそれに関する2~3の小項目からなる質問文が表示されている。テキストは以下のとおり。サーベイの実施概要
・対象範囲について教えてください
・どのような頻度で行われていますか?
・設問の数やそれぞれの意図(何を把握しようとしているのか)について教えてください

サーベイの目的
・社内サーベイを実施することで、何を把握することが目的ですか?
 (現状どのような課題があり、それをどう改善していきたいのか)
・従業員にとって、サーベイに回答することはどのようなメリットがありますか?

集めた回答はどう活用されているのか
・従業員からの回答はどのような形で集計されていますか?
(個人が特定できる形では集計されていないことの説明)
・集計結果は誰に共有され、どう評価されていますか?
・評価の結果をもとに改善などの対応をとった例があれば教えてください。

サーベイの実施に関して課題と感じている点や、それに対する対策
・回答の収集に関して感じた課題などはありますか?(回答率、従業員の反応など)
・それに対する改善や対策が行われている場合、具体的に教えてください。

今後について
・サーベイの実施を通して、どのような会社にしていきたいと考えていますか?

結局大部分を書き換えてしまいました。あとから思いましたが、質問事項をイチから考えてもらうというより、自分で考えた土台をブラッシュアップするような使い方のほうがよかったのかもしれません。

いよいよ原稿本文の作成

さて、この質問文をもとにインタビューを行い、文字起こしをして、いよいよ原稿の作成に入ります。

ChatGPTを使ったライティングはすでにたくさんのライターによって試されているため、それらの記事を参考にしたところ、文字起こしのテキストからそのまま記事を生成するのは難しいようです。そこでまずは文字起こしをChatGPTに要約してもらい、それをベースに自分で書いていくことにしました。

ChatGPTには一度に入力できる文字数に制限があるため、ある程度話がまとまっている部分で小分けにして入力していきます。

ところが、ここにも課題はあれこれ……。

課題③重要なキーワードが削られてしまう

確率論的に文章を生成するという仕組みゆえなのでしょう。うまく指示を出さないと、よくある無難な表現になってしまうのです。

例えば、今回のインタビュー中に出てきた「社内サーベイは組織の健康診断のようなもの」という発言。これは事前打ち合わせでも出てきた言葉で、今回の記事のキーになる表現だと考えていました。

ところが、ChatGPTが出力した要約文では「健康診断」のワードが削られてしまったのです。おそらくサーベイを健康診断にたとえる表現がそれほど多くないからだと思われます。だからこそ記事では積極的に使っていきたいのに。

もちろんそこで「健康診断というワードを入れてください」と改めて指示をすれば、ちゃんとその一文が入った文章になります。けれど削られてしまったワードはそれだけではありません。入れたい要素に抜け漏れがないかを逐一チェックし、プロンプトを追加していくというのは、これも果てしない作業です。

課題④インタビューの文字起こしだけでは情報量が足りない

インタビュー中に交わされる情報は音声だけではありません。資料を見ながらお話しすることもよくあります。しかしその場合、文字起こしに残っているのは「この表のA列に書いてあります」といった会話のみ。

さらにこれは同じ会社の従業員同士でインタビューしているからですが、すでに共有している情報も多く、インタビュー時には飛ばしてしまう話もあります。

それらを要約に含めてもらいたければ、資料の内容や飛ばした話について書き出して、プロンプトに追加しなければならないわけです。でも、そこまで詳細なプロンプトを書くくらいなら、もう直接原稿を書いていったほうが早い……!

結局、この時はちょっとばかり急いでいたこともあり、原稿部分はほぼ自分で書いてしまいました。

そうして完成した記事がこちらです。

結論:GPT-3.5では、使いどころはまだまだ限定的。けれど今後の進化に大いに期待!

結論としては、インタビュー記事の原稿作成におけるChatGPTの使いどころは

  • 質問事項の土台を作成する

  • タイトルや見出しの案を出してもらう

また原稿はほぼ自分で書いたとはいえ、まとめ方に迷ったときなどはごく短いテキストを要約してもらい参考にしたので、

  • 行き詰ったときの参考やアドバイスを求める

あたりでしょうか。
まだまだ私自身のプロンプト作成スキルが足りないせいもありますが、原稿作成に使うには限定的だなというのが私の感想です。

しかし、これはあくまで2024年2月(原稿作成時点)の、GPT-3.5でのお話。

ChatGPTに限らず、AIの進化は爆速です。一年後、いや半年後にも大きく状況が変わっているかもしれません。今、限定的にしか使えないからといって敬遠したりせず、活用できる部分にはどんどん活用して使い慣れていくことが必須だと思います。

また、AI自体はすでに原稿作成に取り入れています。

例えば文字起こしに使っているAdobe Premiere Pro。この文字起こし機能にはAIが使われています。そのまま使えるような精度はなく、必ず自分で聞きながら手作業で修正していく必要はあるのですが、イチから文字起こしをするよりは断然楽になりました。

それから同じくAdobeのPhotoshopでは、画像の生成も可能です。「SDGs AICHI EXPO 2023で聞いてみた!テクノ中部様から見た、中小企業のカーボンニュートラルの現在」で使った下の写真は、Photoshopに標準で搭載されている生成AIで合成したものです。(記事を制作した2023年11月時点の最新版)

青空にしてという指示をプロンプトの入力欄に入れるだけで、雲の多かった空がものの数秒で見事に晴れました。数年前まではこんな合成はレタッチャーに頼むものだったのに、自分で簡単にできてしまう時代になったんですね。

繰り返しになりますが、AIの進化は爆速です。しかもそうと意識していなくてもすでに業務に取り入れている部分も多く、AIはすでに身近なものになってきているのだと感じます。ChatGPTに限らず、AIツールをどんどん活用して、よりよい仕事をしていきたいですね。

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