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タカラヅカとニコ☆プチ動画の最大公約数は独自性

これ余談なんですけど

新潮社ニコ☆プチ営業担当S木(36)は、大阪の朝日放送で火曜深夜に放送されている、「これ余談なんですけど・・・」という番組が好きで毎週欠かさず視聴しています。TVerで。

最初に与えられたトークテーマはほどほどに、MCの「かまいたち」やゲストの芸人が「・・・これ余談なんですけど」を合言葉に言葉通り余談を話し始める。その余談が別の余談を生みトークは思わぬ方向へ。その予想できない会話の流れと、芸人ならではのオチのつけ方が面白いんです。というわけで。

余談① 実家の話

・・・これ余談なんですけど。先日が母の日ということで久々に実家に帰ったんですが、様変わりしておりまして。

家につきお手洗いで用を足そうとしゃがみこんだ瞬間、人の気配・・・。ふと目線を前にやると男装の女性のポスターが。ん。リビングを見れば、壁という壁に別の麗しき方々の写真がある。んん。テレビに目を向ければ、ゴージャスな舞台で歌い踊る男女、いや女女。んんん。本棚に不自然に挟み込まれたベルサイユのばら全巻。んんんん。開いた口が塞がらない私の元に出されたのは、兵庫県宝塚市の定ド番土産の炭酸せんべい(下記参考画像)。んんんんんん。

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高校時代からうっすら感じてはいたのです。「センシュウラク」という謎の日には夕食が作り置きされていること。白装束に身を包み「タイダン」とつぶやきながら有楽町方面へ出かける母を(註1)。DVDの時代なのに未だVHSデッキが稼働していることを(註2)。私が大事に保存していたCDの山が段ボールに収まり、そこにやったら上質紙を使った「GRAPH」という雑誌が置かれていたことを。見てはいたんです。察してはいたんです。ただ父の与り知らぬ母の新しい恋路に触れるのは思春期の男子にはどうも憚られ、秘するが花ということもあり、息子は高校卒業とともに黙って大阪へと向かいました。

あれから約15年。当初、細流(せせらぎ)のようだった母の宝塚歌劇への愛はどうやら途絶えることなく、どこかでダムからの放水があったのでしょうか。滔々(とうとう)と流れるの揚子江のようになっていたのです。ふと思い立って妹の部屋を覗き込んだら、あっ。おそらく私が不在の間に大河が侵食したのでしょう。母の部屋とは別の男装の女性のプロマイドがそこに。新たな命が実家の壁に芽生えているではありませんか!これぞ生命の進化。

≪(註1):トップスターが歌劇団を退団する際、最終日の出待ちにはファンが全員白装束でお見送りするのが習わし。なかなかすごい光景で、最初その画像見たときパナウェーブ研究所かと思った。ちなみに有楽町は東京宝塚劇場の最寄り駅です。(註2):宝塚の過去の名作はDVD化されることは少ないらしく、大昔の弁当箱ならぬVHSを見るために90年代のsony製VHSデッキが往年の山本昌並みに現役です。≫

余談② 宝塚歌劇の話

・・・これ余談なんですけど、なぜ宝塚歌劇はこんなにも母を、いや人を熱狂させるのかについての本を最近読みました。

「宝塚歌劇団の経営学」(森下信雄著、東洋経済新報社刊)によれば、

宝塚歌劇団の最大のウリは「女性が男性を演じる」つまり「男役」である。そして、男役とはズバリ「虚構」なのである。その虚構性が宝塚歌劇ビジネスの最大の成功要因であり、「世界観」を構成する概念である。(中略)この「虚構」は究極の差別化を生み出しているといえる。(中略)極論すれば、顧客は宝塚歌劇の「世界観」を不変の、普遍のものと信じているのだ。

男役という虚構が唯一無二の独自な世界観を生み出し、それ以外に代替がないためにファンは継続して応援し続ける。他にも様々な要素はありますが、ひとつのキーとなるのは「独自性」ということが書かれていました。そこで。

本題 跳ねる動画制作の秘訣

・・・これ本題なんですけど、ニコ☆プチではyoutubeにおいて公式チャンネル「ニコ☆プチTV」を運営しております。

ニコ☆プチの動画制作については、とある若手映画監督さんに協力をお願いしております。popteenの動画も手掛け、これまでに優に三桁は動画制作をしてきた監督さんが最近辿り着いた事実は、youtubeにおいて大事なのは「独自性」ということだそう。

監督「youtube動画の勝ちパターンて、他のチャンネルで人気の企画を行うことなんです。私服紹介とか検索履歴をみせるやつですね。実際popteenのチャンネルはそれで視聴者数が上がった。ならばとニコ☆プチでもと行ったのです・・・」

・・・これ補足なんですが。youtubeにおける、いわゆる勝ちパターンについて動画制作専門会社の方に話を伺った際、同様の回答をえました。人気企画の類似モノは、視聴中の動画の「次の動画」として画面の右側に出たり、個人のyoutubeのトップ画面にお勧めされやすいからです(この機能はブラウジング機能と呼ばれます)。

人気企画の真似⇒お勧めに表示⇒視聴者流入⇒再生数アップ⇒お気に入り増

この流れが作ることができれば、あとは左団扇。永久機関のように視聴者数は増えていくという構図です。とはいえそう簡単に話は進まないのが世の常でして。

監督「何故かpopteenでやったことがニコ☆プチで通用しないんです。自分の勉強不足のせいかと思い、過去の雑誌を読み漁りましたが、女性誌ってその世界観を理解するのがなかなか難しい。テロップやサムネなどを変えましたが手ごたえがない。そこで私が担当する前のニコ☆プチの動画を見たんです。すると、意外なものが再生数が多かった」

それがこの動画。

監督「これは意外でした。他の動画再生数よりも飛びぬけて多い(約11万回)。一般の人の嗜好性と小学生のそれが異なっているのではないかと思ったんです。正直、人気企画の真似も食傷気味ですし有象無象のチャンネルが同じことをしているレッドオーシャン的環境から脱そうと独自路線を開拓したんです」

そうして編集部と協力して始めたのが、youtube上で連続ドラマの制作。2020年夏から「カバーガール」の公開をスタートしました。

先に登場した動画制作会社の方曰く、「連続モノは勝ちパターンでは決してない。継続するごとに視聴者が減っていくので、単発で企画をやるのが鉄則ではあります」

その鉄則を裏切り、毎週金曜日に公開されたカバーガール全10話は、チャンネル内では高視聴数を毎回叩き出しました(初回視聴数9.6万回、最終回視聴数5.6万回)。

監督「制作費は少ない、撮影スタッフは一人、脚本はニコ☆プチの編集者とアルバイトの大学生2人、演者はモデルとはいえ役者経験がほぼゼロの女子小・中学生。それでよくぞここまで数字が伸びたなと思います笑。これだけのものが作れたのは僕自身、自信になりました。数字が良かったのも企画の独自性が光ったのかなと思います」

・・・これ余談なんですけど、映画監督の西川美和さんの「スクリーンが待っている」(小学館)の中で、昨今のnetflix全盛時代に関する考察が書かれていました。アメリカではnetflixはまぁギリ本物の映画という扱いでアカデミー賞にもノミネートされる。でもフランスでは映画館で上映されない映画は映画ではないと頑としてnetflixを認めない。カンヌ映画祭にも招待しない。そんな状況に西川さんは、

映画を売る側のセオリーにあてはめられて中身に注文を付けられたり、あっという間に上映回数を減らされるくらいなら(中略)、長く広く見られ続け内容の自由を保障してくれるnetflixに配給権を渡すのはよくわかる

ほぼ全員素人の小学生のドラマなんていっぱしの映画会社は作ろうと思わないし、配給会社も積極的に買い取るとは思えない。一般的には「無い話」です。ただだれでも自由に映像を作れる現代において、誰もやらない独自の話だったからこそ、そこに鉱脈があったということなのでしょう。これぞまさに弱者の兵法(©野村克也)

監督「まだまだ視聴者数は少ないし伸ばしたい。これからは親世代を巻き込んだ動画や、ためになるような科学実験的な動画を制作してみたいですね。とにかく、今変化をしないといけないと思うんです・・・これ余談なんですけど、制作費をかけた大掛かりな企画もやってみたいとは思うんですよね。それこそ独自性が映えるような気がするんですがねぇ・・・」

余談③ 尽きぬ余談

・・・これ余談なんですけど、弱者の兵法で知られる野村克也は著書で「お金も選手も潤沢なジャイアンツの監督を一度はやってみたいなぁ」なんて書いていたことがあります。が、直ぐに「まぁでも俺は限られた資源でやることばっかやらされるんだろうな。まぁそれが向いているから仕方ない」なんてぼやいてました。愛すべきノムさん。監督もそうなるのかなぁ・・・って、余談はつきませんね。












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