ニコ☆プチが見る「すばらしき世界」。「しのぎ」を変える出版界
娑婆(しゃば)は我慢の連続ですよ。我慢のわりにたいして面白うもなか。やけど、空が広いち言いますよ――。
ご無沙汰しております、新潮社広告部ニコ☆プチ営業担当のS木でございます。西川美和監督の「すばらしき世界」よりキムラ緑子さん演じるヤクザの親分の妻のセリフです。いやはや、胸を締め付けられるような言葉でした。この一言で胸を掴まされた方は多いのではないでしょうか。このシーンから涙が止まらなくなりましたよ・・・終盤の六角精児もいいんですよ。未見の方は是非。
さて、偶然か必然か。上記作品のように、ここ最近ヤクザものの良作が多いのです。舘ひろし主演の「ヤクザと家族 The Family」、「だからヤクザをやめられない」(新潮新書)、「教養としてのヤクザ」(小学館新書)。少し前には「やくざと憲法」(東海テレビ)、「ヤクザとサカナ」(小学館)などなど。
小学生の時、映画「BROTHER」の北野たけしのモノマネで「ファッキンジャップくらいわかるよ馬鹿野郎」と言って教師に頭をはたかれた身としては大変魅力的なラインナップなのですが、なぜこんなにも作品が出るかというと、2013年の改正暴対法が大きな契機となっています。法について詳しくは延べませんが、要はヤクザの人権を取り上げ、「しのぎ」(収入を得る手段)をがんじがらめに縛り上げることで暴力団というものの存在をこの世から抹消しようとする法律です。自身を「絶滅危惧種」と表現した講談師・神田伯山よろしく、ヤクザも同じく風前の灯火の存在ゆえ、様々なメディアの題材となっているわけです。
で。話は変わって私が身を置く出版業界。鬼退治だ巨人だ呪術だと景気のいい話を皆さん聞かれて、さぞ好景気かと思われているでしょうが、さにあらず。雑誌全体の部数は下げ止まることを知らず、出稿の金額もタガが外れたように他媒体(主にネット)へ流れております。そんな巨大な氷塊にぶつかった後のタイタニック号に乗船するS木(出版業界12年目)は思うのです。
あ、これ今のヤクザのおかれている状況と同じだ。と。
さるTV業界の方が話していたのですが、
時代に対応して、しのぎを変えていかなければ、我々に待つのは死のみです。とはいえ、今までのしのぎの軸を捨てるというわけではなく、なにか明確にポジティブな進化をしなければ生きていけない。
「しのぎ」を「紙の出版業」に言い換えるだけで上記の言葉は出版界にも大いに当てはまります。事実、出版界の最大手・講談社に関して今年2月にこんなニュースが出ています。
出版大手の講談社が19日に発表する通期決算で、電子書籍と権利ビジネスを合わせた売り上げが、紙の出版物を初めて上回ることがわかった。2019年12月から20年11月の講談社の売り上げ約1449億円のうち、紙の雑誌と書籍が約635億円で前年比で1・2%減、電子書籍は約532億円で19・4%増えた。(中略)漫画を元にしたアニメ化やゲーム化などに伴う権利ビジネスによる収入は約170億円で、特に海外向けは前年より3割ほど増えた。講談社全体で売り上げは前年比6・7%増、当期純利益は同36億円増の約108億円だった。
出版社の稼ぎ方が明らかに変わってきているのです。もはや売り上げの大半を担うのは電子であり、権利ビジネスなのです。出版は今後IP産業を基幹とする未来がスケスケで見えています。
こういう話をすると、「講談社は漫画でしょ」「うちはそういうのないから」「紙の読者がすでにいるから」という方々が往々にしていらっしゃいます (◜◡◝)
違うだろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
このハゲええええええええええーーーーーーーーーーーーーーーー!
は! つい心の中の、おいでやす小田が叫んでしまいました。失礼しました。。。
とはいえ、どこの世にも現実を見たくない人はいるものです。約2000年前、ローマの政治家で天才軍人ガイウス・ユリウス・カエサルも「人間、自分の見たいものしか見ようとしない」と嘆いているくらいです。2009年に出版され世界的ベストセラーになった、ナシーム・ニコラス・タレブの「ブラック・スワン」でも、「我々は過去の事例が通じない状況、つまり『黒い白鳥』が目の前に現れても、それを否定してしまう」と書かれてます。
GoogleをはじめとするGAFAを代表するように、画期的なイノベーションが次々に行り、指数関数的に変化を遂げる時代です。第一次産業革命以前なら、よそはよそでよかったのですがそうは問屋が卸さない。世間から周回遅れを食らっている出版業界も変化をしなければ、そして変化し続けなければ、「すばらしき世界」は見れないのです。
さて、前置きが長くなりましたが、今回のテーマはニコ☆プチの公式動画チャンネル「ニコ☆プチTV」についてです。
ご多分に漏れずニコ☆プチも雑誌の販売だけに頼ることなく、様々な取り組みをしております。その中でも力をかけているのが動画。
まだ道半ばの取り組みではありますがそこで編集部がどんなことを考えて制作しているのか。撮影、編集を行っている株式会社goat-filmsの瀬川さんにお話を伺います。次回に。
皆さんの心の中の、おいでやす小田が叫んでいるのが聞こえます。
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