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桜の幹もピンク色に染まっています

こんにちは。にこままです。

私の住む街にも、遅い春がやってきました。
桜の木々が、幹の色まで赤みを帯びて、
青空に映えています。
明日にはきっと、ピンクの花が枝の先々に
咲きほころんでくるでしょう。

今にも咲きそうな桜の木。
赤茶色に見えるその木の幹を見る度に、
染色家の志村ふくみさんのお話を思い出します。

このお話は、大岡信さんの随筆で、
中学校の教科書で読んで知りました。
何十年も、桜の季節になると、思い出します。


志村ふくみさんが、著者である大岡さんに見せた一枚の着物。
それは、なんとも美しい桜色に染まった糸で織られていて、大岡さんは、てっきり、桜の花びらを煮詰めて色をとりだしたと思うが、それは、ごつごつした桜の皮から色をとりだし、染めた色だった。

そのピンクは、淡いようでいて、しかも燃えるような強さを内に秘め、はなやかで、しかも深く落ち着いている色だった。その美しさは目と心を吸い込むように感じられた。(中略)
(この桜色は、)桜の花が咲く直前のころ、山の桜の皮をもらってきて染めると、こんな、上気したような、えもいわれぬ色が取り出せるのだ、と。

「言葉の力」大岡信

桜だけでなく、他の樹木や植物も、もしかしたら、
桜と同じように、全身で花を咲かせているのかもしれません。
桜が特別というわけではありませんが、
何故か桜に感情を揺さぶられます。

春だからですかね。
人間の心も、他の季節と違って、情緒的にさせるというか、
感慨深くさせる何かがあります。


私はその話を聞いて、体が一瞬ゆらぐような不思議な感じにおそわれた。春先、もう間もなく花となって咲き出でようとしている桜の木が、花びらだけでなく、木全体で懸命になって最上のピンクの色になろうとしている姿が、私の脳裏に揺らめいたからである。花びらのピンクは、幹のピンクであり、樹皮のピンクであり、樹液のピンクであった。桜は全身で春のピンクに色づいていて、花びらはいわばそれらのピンクが、ほんの尖端だけ姿を出したものにすぎなかった。

「言葉の力」大岡信

私という人間が発する言葉も、桜の花びらの色と同じで、
私という人間すべてを表している、のですね。
美しい言葉、素敵な言葉が、
私という人間から紡ぎだせるようになりたい。



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