春の松花堂弁当(2020/02/29)

 茶名引き継ぎの裏で、松花堂弁当を作りました。

画像1 

 左前はご飯、桜の塩漬け、白瓜の粕漬け、沢庵、柴漬け。

 ご飯は梅おかかでも振るとさらに彩りが良くなったが、味のしっかりしたものが多かったので白ご飯で正解だった。懐石料理と違い4つ椀を清める必要もないので香の物はなくてもいいような気もする...と思って調べてみると、漬物が香の物と呼ばれるようになったのは、聞香の際に鈍った嗅覚を取り戻すために沢庵をかじったことから来ているらしい。つまり茶懐石風に言えば、「食事の後の抹茶を楽しむために、食事で鈍った嗅覚や味覚を取り戻す香の物を食べる」ということになり、やはり香の物は最後にお湯と共にいただくのが順当なのだろう。

 左奥は、鯛の昆布締めと海老を加減酢で和えた向付と、きゅうりの梅肉和えの小鉢。

 白身魚はもともと熟成させるとATP(アデノシン三リン酸)がイノシン酸(旨味成分その1)となり味がしまって美味しくなるが、熟成中に昆布のグルタミン酸(旨味成分その2)も与えて旨味の相乗効果を生みつつ保存もよくするというのは極めて理にかなった調理だと思う。先人の知恵は偉大だ。今回は鯛は20時間ほど昆布締めし、柚子の果汁(7人分でゆず1つ)と少量の透明醤油を合わせた加減酢と和えたが、もう3日くらい熟成させつつ昆布の旨みを吸わせると、醤油なしでわずかな柚子果汁だけでも美味しくなりそう。ただスーパーの柵を4日置くのは少し不安なので、自分でさばいたものの方がいいだろう。エビは子持ちだったので卵を別で調理して出せばよかったと反省している。

透明醤油(フンドーダイのHPより)

透明醤油HP用(背景透過)

 きゅうりの梅肉和えはごま油を少量使ったので香りがよかった。醤油で味を整えたが梅の味だけでも十分だった。


 右奥は炊き合わせ。

 ヨモギの生麩、長芋、オクラ、タケノコ、レンコン、しいたけ、タコを炊いた。長芋は少し短めに炊いて食感を残すとよかった。オクラは片面のみ短時間で炊いて表側の色を残すと綺麗だった。その場合、味がつかないので塩を多めで炊くと良さそう。タコはよく味がしみていた。


 右手前はりんごと春菊の胡桃和え、小魚の甘露煮、鰆の蕗味噌焼き、アスパラガスの辛子酢味噌和え。

 胡桃和えは春菊の香りとりんごの甘みが丁度よかった。甘い割にはけっこうお酒に合うような気がしている。甘露煮は調理していません。ちょっと魚が多かったので、豆系とかでもよかったような。鰆の蕗味噌焼きは今回一押し。さわらは一晩酒と醤油に浸けたので鰤のように身の柔らかい仕上がりになった。蕗味噌は単体だと苦味強め、かつ砂糖多めだったが、鰆の下味が強かったためちょうど蕗の香りだけを楽しめる味になったのは発見でした。辛子酢味噌は味が決まらなかった気がしたが、炊いたアスパラのだしの香りとマッチしてなんとかなった。

画像3

 煮物椀は蛤真薯と菜の花、人参、吸い口は柚子。

 蛤は小さかったのでもう少したくさん入れるべきだった。菜の花はしっかり炊いたのでやや鮮やかさに欠けるがその分香りが良く、吸い口無しでも良いほどだった。人参はやや塩味が強く、みりんと出汁のみで炊いた方がよかったかも。


 とくにレシピは書きませんが、ネットで調べていただければ色々出てくると思います。質問等あればコメントいただけると幸いです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?