「最後のギョウザ。」/ショートショートストーリー
今日の夕飯は家族全員の大好物であるギョウザだ。うちの場合は手作りなので昼過ぎからみんなでせっせと作り始める。家族のテンションは徐々に上がっている。
「手作りだと具を好みにできていいわね。」
「それそれ。今回僕はなにを入れようかな。」
「でも、全員が好きとは限らないけどね。」
「お父さんは何でも大丈夫だ。」
ホットプレートでギョウザを焼き始めた。みんなの顔は幸せこの上ない。
最後のギョウザがひとつ。みんながこのギョウザを狙っている。
「前回はお母さんが最後のギョウザを食べたのよね。だからお母さんは遠慮してね。」
「仕方ないわね。」
「僕にちょうだい。」
だが一番食いしん坊のお父さんが最後のギョウザをつまむと口に入れてしまった。家族からブーイングがおこる。それなのにお父さんたら笑い出した。だけど笑いがいつまでもおさまらない。
何かの間違いか、ギョウザの具に紛れ込んでいたのはワライタケだった。
それでいつだったかしら。最後のギョウザは。