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「庭を食べる。」/ショートショートストーリー #爪毛の挑戦状

妹は生まれつき視力が悪かった。

その分を補おうとするように、妹の耳は少しも聞き漏らすことがなかった。だから妹に何かを内緒にすることができない。

妹の口も饒舌だった。妹が話している間は誰も口をはさむことができない。

そうやって、妹は自分の目について臆することなく日々生活している。

「だって。お兄ちゃん。目だけよ。私がほかの人と違うのは。最近はね。こういうのは個性と呼ぶのよ。」

それでもだ。
いつも朗らかな妹だって本当は家族の顔をしっかりと見たいだろうし、いろんな景色を楽しみたいはずだ。

そんな妹が夕暮れ時に無言で、庭の方を見ている姿を見るのは辛い。妹は鼻が利くから今どんな花が咲いているのか匂いだけでわかるのだ。

ある日、僕は母さんにケーキを頼んだ。母さんはケーキ作りの名人だ。
庭に咲いている花の香りや材料を使って見事に箱庭のようなケーキが出来上がった。

「庭を食べるのは初めて。きっと美味しいはずよ。」

妹は舌も家族で一番なのだ。


爪毛さんからお題を頂戴しました。


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