「最後の神様。」/ショートショートストーリー
親父は最近毎日朝晩と神棚を拝んでいる。気持ちはわかる。でも、だからと言って神頼みしてなんとかなるものではないと俺は思っている。ほかに打つ手はあるだろう。拝むより先にやることはあるではないか。
母さんもそんな親父に呆れている。気持ちはわかる。でも、だからと言って親父をバカにしちゃいけないと俺は思っている。よく考えたら俺も将来親父のようにああやって神棚を拝んでしまうのかもしれない。
「執着したらいけないのよ。かえってそれがね仇になるらしいわ。最後だからと言って神様だって困っているわよ。早く受け入れたら。」と母さんが親父の背中に向かって言っている。だが親父の耳には入らないようだ。ぶつぶつ言っている。
「かみさま。お願いします。後生ですから。」
母さんはきっとこのままではいけないと思ったのかもしれない。母さんは拝んでいる親父の頭に手をやると残った最後の髪を抜いてしまった。
親父はへたりこんで最後のかみさまがと言っている。
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