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ぼくはあなたになれないはなし

「ぼく」は「ぼく」で
「あなた」は「あなた」

「ぼく」は「あなた」じゃないし
「あなた」は「ぼく」じゃない

当たり前みたいなことなのに
ぼくたちはたまに忘れてしまう

=====

「あなた」は「ぼく」のために
たくさんの「あなた」を教えてくれた

「あなた」のすがた
「あなた」の好きなもの
「あなた」の友達

一緒にあそぼうよ、といって
「あなた」はいつも外に連れてってくれた

「あなた」になれない「ぼく」は
「あなた」に受け入れてもらえない気がして

「あなた」のすがた
「あなた」の好きなもの
「あなた」の友達
「あなた」と同じように好きになろうとしてみた


だけど
「ぼく」は「あなた」になれないし
「あなた」も「ぼく」になれないし

「あなた」のすがた
「あなた」の好きなもの
「あなた」の友達

全部まねしてみようと思ったら
なんだか自分がからっぽになる気がした

=====

「きみ」は「きみ」で
「ぼく」は「ぼく」

わかっていたはずなのに
「きみ」の優しさが嬉しくて
「ぼく」はたくさんの「ぼく」を押し付けた

「ぼく」のすがた
「ぼく」の好きなもの
「ぼく」の友達
「きみ」は「ぼく」と同じように
好きになろうとしてくれた

「ぼく」の好きが「きみ」にとっても好きのはずって
「ぼく」は勝手に信じてた

「ぼく」と「きみ」はちがうから
「きみ」が「きみ」だから好きなんだということ
「ぼく」はわかっているふりをして
本当は忘れてしまっていたのかもしれない

=====

「ぼく」は「あなた」になれないし
「あなた」は「ぼく」になれないし

「ぼく」は「ぼく」のままで
「あなた」に好きになってほしかっただけだったんだ

「ぼく」は「ぼく」のままで
「あなた」のことを好きでいたかっただけなんだ


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