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【感想】★★★「悪童日記」アゴダ・クリストフ(堀茂樹 訳)

評価 ★★★

内容紹介

■戦争が激しさを増し、双子の「ぼくら」は、小さな町に住むおばあちゃんのもとへ疎開した。その日から、ぼくらの過酷な日々が始まった。人間の醜さや哀しさ、世の不条理―非情な現実を目にするたびに、ぼくらはそれを克明に日記にしるす。戦争が暗い影を落とすなか、ぼくらはしたたかに生き抜いていく。
人間の真実をえぐる圧倒的筆力で読書界に感動の嵐を巻き起こした、ハンガリー生まれの女性亡命作家の衝撃の処女作。

感想

舞台は第2次世界大戦中のハンガリー。
母親に連れられて初めて祖母の家へ疎開してきたまだ幼さの残る双子「ぼくら」が主人公。
過酷な状況の中、常に自分たちの鍛錬を行い、知識を蓄積し、誰よりも強く賢明に生きていく「ぼくら」のまるで作文のような形式で話は進んでいく。
情景描写が乏しく、心情描写もほとんどない淡々とした語り口は、幼い「ぼくら」を端的に表現しているのかもしれない。戦時下ならではのおぞましい描写は所々に表現されているが、この表現方法により生々しさはない。
どんな状況であろうと、自分自身を鍛え、常に前向きにひた向きに生きる人間の強さを知る事が出来る作品。
名作とも評されている本著だが、決してメチャクチャ面白いという作品ではない。話も唐突の終わるし、読後感も貧弱。続編である『ふたりの証拠』『第3の嘘』までの3部作と捉える方が良い。
良い表現方法とは全く思わないが、サクサクと読み進められるこの文体は他に類はなく、読むのが面倒になる瞬間は無い。
なぜかずっと頭の中に残る不思議な作品。

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