東京の電車
2017年の3月28日。
電車に乗って大学の寮に向かう。
午後3時過ぎのやさしい日差しが車窓から入り、私の肩を照らす。
スーツケースが転がらないように手で押さえる。
これから毎日大学までこの電車に乗る。
私の地元のさびれた車両より広くて綺麗な電車が何倍も良いと思った。
スマホの乗換案内アプリを開く。
ちゃんと確認してから乗ったから確かめることなんて何もない。
向かいの窓から外の景色が見える。
アパートや家がぎゅっとひしめき合っている。
人がたくさんいて、いろんなものがあって、楽しいのだろうなと思う。
これから4年間ここで暮らすのだと思ってわくわくして、やっと東京に来たぞと嬉しくて、浮いている気持ちだった。
朝は満員電車でぎゅうぎゅうになって、停止信号で何度も止まり、たまに遅刻しかけて、でも母から余裕を持った行動をするように教えられているから遅刻にはならなくて。
バイトがある日は締めまでのシフトを乗り越えられるように好きな音楽を聴いたり、課題の本を読み進めたり。
サークルがあったり友達とご飯を食べて帰ってきた日は、おもしろかったことを思い出して楽しくなって。夜も遅いのにこれからお風呂入ってお弁当箱洗うのはめんどくさいな、と自業自得になったり。
重いレポートが課題に出た日、乗った電車から見えた商店街の提灯は赤かった。
初めて終電に乗ったときは駅員さんのアナウンスにドキドキした。
東京での生活も3年が経った。
それでも上京した日に乗った電車から見た景色が一番きれいだった。
3月の暖かい空気と、眠気を誘う日差しと、たくさんのアパート、家。
同じ電車で同じ時間に何度も乗ったけれど、あの日が一番よかった。
ちょろい女子大生の川添理来です。