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今夜、列車は走る

アルゼンチンと言われても、ほとんどの人はタンゴとサッカー以外思い浮かびません。他にはファナモリーナとかフォークランド紛争とか度重なるデフォルトといったところでしょうか。ロス・プーマスと答える奇特な人もいるかもしれませんが。。。

政府の民営化政策によって、鉄道が廃線となり多くの鉄道マンたちが職を失います。
痛みを伴う改革です。(訳 儲けたい人達のために弱者が痛い目にあうこと)

1人は正式な通告の前にこめかみを撃ち抜き自殺します。


超不景気で治安も悪いアルゼンチンで職を失った男たちが次の人生へと踏み出しますが、そうそううまくはいきません。
追い詰められた人々の困窮した生活が淡々と描かれていく中で、ある男が自暴自棄になります。

彼はスーパーに強盗に入ります。
そこには元仲間の一人が警備員として働いていて銃を向け合います。スーパーのテレビにはかつての仲間がこの事件について語っている映像が流れ、2人はそれを目にします。なぜ善良な鉄道マンが強盗になってしまったのかを。自分のことです。


スーパーは武装警官と報道陣に取り囲まれて騒然となりますが、そこで感動的な出来事が起こります。正直なところ、特に劇的なことではないのですが、なぜか凄く感動的です。人々の表情がなんとも胸に刺さります。

それは、暗澹として出口が見つからない敗者の世界に投げ込まれた一石です。

出口が見えないのは当たり前で、もとから出口なんて無いからです。自分が動いて作らなければならないし、その為には前を向かなければなりません。でも、そんなに簡単な話ではなく、前へ進むための集中力を削ぐような感情が随時湧き出てきます。コケにされた恨みであり、裏切り者への怒りであり、そんな立場に陥った自分への忸怩たる思いや不安。
認知能力を著しく減退させるネガティブな感情に蝕まれ続けるとまともではいられなくなります。

闇の中であろうと雨の中であろうと、何かを変えるためには前を向いて走り続けなければなりません。そんなメッセージとともに未来への希望らしきものが感じられるエンディングでした。

ただ、この映画が制作されたのが1998年で、公開されたのが2004年。その間の2002年にアルゼンチンはデフォルトをしています。目も当てられません。

ちなみに2002年はワールドカップでもやらかしています。

7.5

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