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マイ・ボディガード

原作小説のクイネル「燃える男」は、今まで読んだ中でも上位に入るほど好きな小説だったので、この映画が公開された時は異常な期待を持って見に行きました。
どう考えたって映画向きの話だし、つまらなくなるわけがないと思っていたのですが、見てビックリ、原作と全く違うストーリーになっていて、がっかりしてしまいました。

で、原作の呪縛も解け、改めてフラットな視点で見てみようかと思って再見しました。やはり、原作との比較は避けようがありませんでしたが、内容の違いに不満タラタラで不当な低評価をしていた初見のイメージに比べるとはるかに良い映画でした。



元凄腕傭兵のクリーシーは、生きる意味を失いアル中になって抜け殻のような生活をしています。そんな彼にリハビリ的な仕事として少女のボディーガードという緩い仕事があてがわれます。

この少女との出会いがクリーシーを変えていきます。彼を慕う少女に対して、閉ざした心を開いていきます。

ところが彼の目の前で襲撃されます。かつての超人クリーシーなら絶対に守りきれたはずですが、酒のせいで反応が遅くなり、深手を追い、少女を誘拐されてしまいます。



ここまでが基本的なストーリーですが、ここからまるで違う色合いになっていきます。

原作では、怒りを胸に復活を遂げたクリーシーが、かつての仲間を集結させ、マフィアのアジトに乗り込んで、派手な銃撃戦をぶっぱなし、爽快なエンディングを迎えます。単なる復讐劇ではなく再生の物語でもありました。

このノリを期待していたわけですが、しかしながら、映画のほうは昏い復讐劇です。「燃える男」感がまるでありません。これでは邦題もなかなか難しかったかと思いますが、とはいえマイ・ボディガードだとダコタ・ファニングが主体みたいで、なんともな感じです。

前半、少女とクリーシーの関係性が変わって行く過程はかなりきちっと描かれています。敢えて突き放した態度をとっていたクリーシーの心が徐々にオープンになっていきます。ストーリーのテンポが落ちますが、これによって後半の重みがズッシリと増しています。

ダコタ・ファニングが好きではないので微妙ですが、。。

少女が誘拐された後、クリーシーは、陰惨な暴力によって手がかりを手繰り寄せ、最後の局面にたどり着きます。 

シンプルな勧善懲悪アクションストーリーだった原作に比べると、犯行グループの実態や、誘拐事件の裏側の描き方は、映画の方がはるかに深みがあります。

さらに、当時はボロカスに言っていたラストシーンも緊迫感に満ちてスリリングです。

やはり好きな原作の映画化と言うのは、バイアスがかかるので、評価しづらいし、ダメと決めたらとことんダメ出しをしてしまうので、なかなか難しいものです。

7.5

とは言っても、やはり原作の方が遥かに好きですが。。

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