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ザ・プレイス 運命の交差点

星新一のショートショートのような設定です。どんな望みでも叶えてくれる男が、ザ・プレイスというカフェの奥に陣取ってます。そこに多くの人が訪ねてきます。視力を取り戻したい盲目の男、息子を癌から救いたいと願う男、アルツハイマーの夫を抱えるお婆さん等々。。

望みを叶えるためには男の提示する条件をクリアしなければなりません。その条件というのが、女性を犯すとか、他人の子供を殺すとか、爆弾を商業施設に仕掛けるとか、、とんでもないにも程があるレベルです。


ここに来る人たちは、欲望を満たそうという人もいますが、自分が被っている理不尽な境遇から脱したいという思いの人が印象的です。


盲目の人が視力を持ちたいと願う事を、欲望と定義することは可能ですが、カレンダーのモデルとヤりたいから叶えてくれと言ってきたオッサンと同列にするのはさすがに可哀想です。このオッサンこそがザ・欲望。清々しいほど下品ですが、こんな願いが叶うと知れたら世界中から下品な男(ほぼ全員)が殺到すること間違いなしです。

そんな、全く見ず知らずの人たちに課せられる条件の内容が、それぞれに絡み合っていきます。パズルのピースがはまっていくような面白さがあります。全てのピースがあるべき所に収まって、カタルシスを感じるような見事な着地を決める訳ではありませんが十分です。


そして実はこれワンシチュエーションムービーです。全てカフェでの会話のみで進行します。依頼人たちは、自分たちの心境の変化や、進行状況などを報告しに男に会いに来ます。その会話のみで物語が動いていきます。

ちょっと間違えれば退屈になりかねませんが、それぞれのキャラクターの雰囲気とか表情によって、映し出されない映像がかなりリアルに想起されます。


で、物語の舞台となるザ・プレイスとは一体どんな場所なのか。
特に意識せずとも、彼が座っている場所が、カフェでありながらも、まったく違う世界であることはなんとなく分かりますし、他の客からは彼らのことが見えていないと想像できます。

そして願いを叶える謎の男とは何者なのか。これはもう謎の男としか言いようがありませんが、おそらく、神か悪魔の代理人的な存在です。

これは、哲学的な問いかけに見せかけた、決意と決断と善意の物語です。謎の男も不思議な場所も物語を際立たせるためのトリッキーな舞台装置でしかないので、具体的な説明は必要ありません。

とはいえラストは、謎の男の正体について想像力を刺激するような、含みをたっぷりもたせた絶妙な幕引きでした。

アルツハイマーの夫を治すために、爆弾を作って多くの人を殺せと言われたおばあちゃんが、男に言い放ったセリフが名言過ぎて唸ります。

知りませんでしたが、この監督の「おとなの事情」という作品が世界中でリメイクされまくっているらしいので、そちらも見てみようと思います。

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