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アスファルト

フランスのどこかの郊外。
どん詰まりの掃き溜め団地に流れ着いた冴えない人たちの群像劇。華麗なるパリとは大違いです。ミッドナイトインパリと続けてみると、出だしの落差がすごい。


地味。ひたすらに地味。
序盤はほとんど台詞がありません。
そして、こんな団地とはまるで接点がなさそうな宇宙飛行士の映像が唐突に挟まれます。
で、飛行士が聴いてる音楽が80年代のアリソンモイエのカバー曲。こんな選曲とかも含めて雰囲気とか間とかが、かなりカウリスマキっぽくて彼の作品が好きなら間違いなくアタリです。

移民のおっさんと病院の看護師。
年増の女優と少年。
移民のおばさんと宇宙飛行士。

この3組の、特に盛り上がるでもないオムニバス的な作品。

特に良かったのは移民のおばさんと宇宙飛行士の組み合わせです。 
全く言葉が通じない中で、気持ちを通じ合わせる、でもなかなか思いを伝えられない。そんな、もどかしくぎこちない関係性が何とも言えません。 
 
香港で似たような状況に陥った事があります。

中国人と二人きりにされた時に、
「Can you speak English?」と尋ねたら、
「No」と言われたので、
「Me too」と答えたらウケましたが、その後はずっと気まずい沈黙。。。Me too 運動不発で微妙な時間が延々と続きました。
まぁ、YESと答えられたら、それはそれでもっと困ったわけですが。

話がそれましたが、このエピソードは絵的にもシュールだし、水回りの修繕のオチも脱力的で面白い。で、この飛行士、ボードウォーク・エンパイアで、マフィアの世界でのし上がろうとしていた若者ではないですか。なんと。マイケルピット。

 
移民のおっさんミハイロビッチ(名前的にユーゴからか)も笑えます。悪い意味で思考がシンプル。おまけにというかそれゆえにというか、常に悪いタイミングで厄介な事が起こります。冴えない人生を送る人たちを象徴するような人物です。彼の滑稽さが地味な映画の序盤を引っ張っていきます。

鮮やかな色彩もなく、ほとんどモノクロームに包まれた生活を送る人たち。
彼らがこの環境から抜け出せるとは思えないけど、それでもその中で、人生でぽっかり空いた穴を埋めるような出会いがあり、小さな喜びを感じて生きていく。市井の人たちのお洒落っ気ゼロで惚けたハートフルコメディーの秀作、、いや傑作かも。


実は、寂れた団地ならではの素晴らしいカットが多く、映像的にかなり洒落ています。

8.5

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