見出し画像

Vol.3 ウェットスーツなしってどういう事?

ワイルドフラワー・トライアスロンは、トライアスロンを主としたアウトドアスポーツの祭典。様々な距離のロードのトライアスロンを始め、オフロード・トライアスロン、トレイルラン、オープンウォータースイム、サップ等など、様々なスポーツ競技の大会が毎年5月の一週目の週末に、3日間にわたって繰り広げられる大イベント。会場となるのはロサンゼルスの北、400kmほどの所に位置するサンアントニオ・レイク。3日間、野外コンサート、地元ビールのビアーガーデン、ワインテイスティングなど、様々なイベントがあり、参加者の多くは、テントでキャンプをして過ごす。60年代の伝説の野外コンサートに因んでトライアスロンのウッドストックとも呼ばれている。とは言うものの、それが何を意味するかは申し込みの時点では、知るすべも無く・・・

イチゴ畑でトライアスロンデビューをし、初戦、2戦目とローカルの小規模なレースを何とか凌いだ私が、3度目のレースに選んだのは、ワイルドフラワーのロングコース。ハーフ・アイアンマンとも呼ばれる、スイム2km、バイク90km、ラン21kmの大会最長の距離。前回から距離を二倍に伸ばしての挑戦。幸い、海でのスイムは無いので、距離は長いながら気分的にはかなり楽。さっそく5月のレースに標準を合わせてトレーニングを始める。

スイム、バイク、ランとも順調にトレーニングを重ねていた12月のある日、バイクでノロノロ走行中に、なんと立ちゴケし左手を負傷。親指の周りがかなり腫上がり痛みも伴ったが、そのままバイクに乗り続け、翌日以降もテーピングをしトレーニングを継続。一ヶ月経っても痛みが引かない。止む無く専門医のアポを試みるが、アポが取れたのは更に一ヵ月後の2月。アメリカの医者は命に関わるものでなければ、いつもこんな感じ。立ちゴケから2ヶ月して漸く医者に行くと、「Oh, it doesn't look good. あー、これはまずいねー」と何やらかなり雲行きがおかしい。

レントゲンを撮った結果、親指の第一関節部分の骨折。更に手当てせずに放置したために、折れた部分が歪んでくっ付いてしまっているとの事。不自然にくっついた部分を分離し、ボルト止めをする手術が必要。しかも、骨折した部位が極端に小さいため、かなり困難な手術になるとの事。当初は突き指程度と思っていたものが、随分と大袈裟な話になってしまってビックリ。

手術後、完治までには最低一ヶ月を要し、その間は当然スイムもバイクも不可。レースまで3ヶ月と迫っていたため、手術はレース後でも大丈夫か聞いたところ、「これ以上は悪くならないよ。あなたの手なんだから自分で決めなさい」との突き放したようなコメント。全ては自己責任のお国柄。親指は相変わらずあまり動かないものの、既に2ヶ月が経ち痛みは特に無いので、即座に手術延期を決めて練習を継続。

その後、順調に練習を続け、良い仕上がり具合で、満を持してレースの週末を迎える。家族一同キャンプ好きなので、何時ものように家族4人と愛犬のブラウニーを連れて出発。午後早い時間に現地入りし、先ずはキャンプサイト確保。

画像1

その後、レースのチェックインをし、ゼッケンやタイミングチップ、年齢ごとに異なった色のスイムキャップなどをピックアップ。野外コンサートもあり、辺りはお祭りムード。

音楽を聴いて、食事をして、うす暗くなりかけた頃キャンプサイトに戻ると、周りが何だか騒々しい。キョロキョロしていると、裸の集団が・・・

画像2

辺りにはマリワナの匂いも。今更ながらウッドストックの意味を知る。言い換えれば、ヒッピーによるトライアスロンの祭典。それにしては、全体的には若者の姿が多いながら、私たちのような家族連れも少なくない。かつてのヒッピーが大人になって、子供連れで参加しているということか?

騒ぎ立てる声は一晩中続き、あまり眠れないまま翌日を迎える。当日になって水温が高いためウェットスーツ使用不可とのガセネタが飛び交い、スイムが極めて苦手な私は、一旦パニック状態に落ちいったが、結局はウェットありで親指骨折も何のその。無事に初のロングコースであるスイム2km、バイク90km、ラン21kmを目標時間の8時間を切る、7時間39分にて完走。沿道ではクレージーな若者が裸で踊っていたり、奇声を上げたりで始終お祭り騒ぎ。デビュー戦のよう溺れる恐怖に晒される事も無く、2度目のようにバイクで泣きが入る事も無く、3度目にして始めて始終レースを楽しむことが出来て大満足。

レースの一週間後、先延ばしにしていた手術の相談をするべく再度、例の医者を訪問。改めてレントゲンを取ったり色々と検査をした結果、医者の口から出た言葉は・・・「もう治ってるから、手術しないでいいよ」と驚きのコメント。不自然にくっ付いた骨や、ボルト固定は何だったんだ~。結局親指は、稼動範囲も元に戻り全く問題なし、今では骨折したことさえ忘れてしまうほど。専門医と呼ばれる医者の診断も、全くいい加減なものです。

レース後、自慢げにワイルドフラワーのロゴの入ったバイク・ウェアーを着て、近所でトレーニングしていると、流石に有名な大会だけあり、通りすがりのトライアスリートから「格好いいウェアーだね」とか、「ワイルドフラワー出たの?」と、幾度と無く声を掛けられる。デビュー戦、2戦目ともに、惨めな思いをしただけに、ここに来て漸く念願のトライアスリートになれたようで、一人バイクに乗りながらニンマリ。

画像3


ワンポイントアドヴァイス

ウェットスーツ着用のルール

今回のレース、当日になって水温が高いのでウェットスーツは着用不可とのアナウンスがあり、スイムが極めて苦手な私は焦りまくり。よくよく聞いてみると、それほど酷な話ではなく、素人は着用OKということで一安心。

米国のトライアスロンの取り纏めをするUSA Triathlon (USAT)やアイアンマンの大会では、それぞれウェットスーツの仕様とあわせて、着用可能な水温に関するにルールがあります。ルールはプロや入賞を狙うアスリートと、エイジグループのアスリートでは異なったものが適用となります。例えば、USATでは、プロは25.5度以下で、エイジグループは29度まではスーツ着用可。アイアンマン大会では、若干下がりますが、それでも、プロ24.5度、エイジグループ28.8度なっております。拠って、よっぽど水温が高くなければエイジグループではウェットスーツを使うことが出来ます。と言うことで、当日の急なアナウンスにもパニックる必要なし、ご安心を。


By Nick D

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?