見出し画像

#43 ベトナムのお店をリモート経営している私達のやりかた

■このマガジンについて

ベトナムホーチミン市にネイルサロンをオープンしたのは、2016年8月。
フリーフォトグラファーとして日本で気ままにやってきた私が、ベトナムで1からお店を作って、スタッフを持つなんて考えた事がありませんでした。
でも、あるとき海外でチャレンジしたい病にかかってしまったのです。
それからは、新鮮で刺激の多い日々...。


全てが初めてでどれも大変な作業の連続。落ち込む事も多いけれど喜びの方が多いんです。
だって、毎日楽しいんだもの。


■私たちのリモート経営について


ホーチミンの古アパート

ベトナムホーチミン市、42Nguyen Hue(グエン・フエ)アパート。
ここはサクセスストーリーが生まれる場所と言われている。

ベトナム政府によって近々アパートが取り壊しになる計画が出ている。

それをを知りながら、私はここでネイルサロンを作ることに決めた。


私は自己紹介する時「ベトナムにネイルサロンを作り、日本からリモート経営をしている」と話をする事がある。

すると、こういった質問をいただくことがある。
「どうしてリモートで経営することにしたの?」
「自分が日本にいるのに、ベトナムのお店はどうやって経営してるの?」

コロナ渦になり遠隔での仕事をする人が増えた。
しかし、2016年当時は珍しかったのだろう。
(私自身も遠隔経営している知り合いもいなかった)

私はどうしてリモート経営をすると決めたのか?
・日本でやっている広告写真撮影の仕事を一気にやめる気持ちが無かった。

・もし、ベトナムの事業がうまく行かなくても日本で稼ぎがあれば、まだやりようがある。

・自分がお店にいなくても成立する仕組みにしたかった。

・お店は作りたいが、移住するにはもうちょっと時間をかけて、情報を集めてから準備したかった。
日本にいながら、ベトナムのお店はどうやって経営、管理してるのか?
・webカメラを見ながら、リモートでリアルタイム管理をしている。

・カメラを見ながら、お店の状況を把握し、スタッフに指示している。



■webカメラがあればベトナムへひとっ飛び!

遠隔監視カメラ

このwebカメラは、日本からベトナムのお店にアクセスするために導入したもの。
リモート経営している私にとって、手放せないツールだ。

webカメラでできること
・ネットがつながるところなら、日本とベトナム間でも問題なくつながる
・スマホやpcからリアルタイムで見れる(数秒の差はある)
・カメラにマイクが付いているので、現場の音声を聞くことができる
・アプリにもマイクボタンがあり、こちらから話すこともできる
・電気を消灯しても赤外線で映像が見れる(防犯に強いね!)
・SDカードに直近の3日分映像が記録できる
・カメラの方向をアプリ内で動かして広範囲を確認できる
(水平:355度 垂直:120度)

日本でwebカメラを探したんだけど、手頃なのが全然見つからなくて...。
サロンオープンを色々手伝ってくれていたTang(タン)くんにダメもとで相談してみたら、速攻で見つかった。

zaloでのやりとり


このカメラは700,000vnd〜900,000vndまで。(約3,500〜4,500円)

「これは買いだ!!」とカメラを4台購入した。

ベトナムの金額表示はややこしい?
ベトナムの通貨、ベトナムドン(vnd)は0が多い。
そのため、0を3つ消して代わりにをK(キロ)で表記していることがある。 700,000vndの表記は700Kと書き、10,000,000vndは10,000Kと書く。
ベトナムに初めて行った方は「K」ってなに?となりがちですが、理解したら簡単なのだ。


■カメラ1:ネイルサロン全体を確認


一番メインで見ていたカメラは、店内全景が見れる位置に設置していた。

その日その時間に、お客様がどれくらい入ってるか。
スタッフが何をしているかを確認するためにこの位置に設置している。

接客面では、お客様を待たせること無くサービスが出来ているかを見ていたし、お客様1人あたりのネイルの時間もこの画面で管理していた。

サロンがきちんと片付いているかはもちろん、クッションの位置、お茶の減り具合までも私にチェックされる。(出来ていないと、メッセージで指示を飛ばす)

監視カメラから見た店内の様子



■カメラ2:テラス全体を確認


テラスの様子も確認できるように1台セッティングしていた。
テラスは日当たりがめちゃくちゃ良くて、冷房が効きにくかったの...。
お客様が暑そうな仕草をしていたら、速攻でスタッフに連絡。
扇子や小さな扇風機を用意するように指示してた。

お客様をネイルしている様子

このカメラは回転もできる。
角度を変えると、Nguyen Hue(グエン・フエ)通りの様子をチェックできちゃうから、状況確認にとても役立った。

イベントの多いグエン・フエ通り
グエン・フエ通りは記念日やイレギュラーなイベントが定期的に行われます。そんな日は、たくさんの人に溢れ、車両、バイクは通行禁止に。
スタッフが駐車場からバイクを出せなくなったり、渋滞に巻き込まれて家に帰れなくなったことがしばしば起きたこともあり、カメラで状況をチェックし、お店を早めに閉めたりと調整していました。

グエンフエ通りの雰囲気



■カメラ3:隣のお店全景を確認


ネイルサロンとは別に、隣の物件に日本の商品を販売するお店も作った。
最初はスタッフを最小限で配置したいから、常にここにスタッフはいない状態。

このカメラの映像を見て、スタッフに連絡をするという手間のかかることをしていた。(お金なかったからね......)

お客様来た → スタッフに連絡 → スタッフがDIYの部屋へ移動

お店をカメラで見た様子

実は、このお店は1年くらいで閉店した。

閉店理由は色々あるが、そもそも店内に誰もいない店ってのは結構致命的だと思う。

スタッフがいないとお客様も入りづらいし、営業してるかさえわからなかったのではないだろうか。

「webカメラでなんとかするか」と頼り切っていた私の完全なミスだな。


■カメラ4:お店の外を確認


私達のお店はアパートの廊下から、さらに細い通路を入った所にある。
だから認知が広がるまでは、ちょっとお店に入りにくい雰囲気だった。

画像16



廊下にカメラをつけ、お客様がウロウロしていたらスタッフが外へ出て誘導してもらう為につけたんだけれど...。

店外には、wifiが届かなかった。
ってことで、4つ目のカメラは「カメラついてまっせ!」という抑止力の為だけのフェイクカメラと化した。トホホ...。


天外につけた監視カメラ



■働くスタッフにカメラで見られている事の反応を聞いてみた


「カメラでお店の状況を確認し、指示を出している」というのが私のリモート経営のやり方。

この話をすると次に返ってくる反応が「監視カメラを置いてスタッフは嫌がらないの?」だ。

スタッフにカメラがあることについて率直に聞いてみた

私:みんなは私がカメラ状況を見ている事についてどう思う?嫌かな?

スタッフA:嫌じゃないです。優子さんがカメラを見て、色々教えてくれるから安心です。

スタッフB:なにかあった時、優子さんにすぐ確認してもらえるからいいんじゃない?

スタッフC:日本人のお客様の癖とか、私達が気づかないことをカメラの映像を見て教えてくれるからカメラがあったほうがいいよ。

スタッフD:たまに寝てたり、お仕事をさぼっちゃうのがバレるから恥ずかしいけど、カメラは必要だと思います。(テヘペロ)

スタッフE:忙しい時に、指示されると進行が狂ったり焦ったりする時がある。でも優子さんの指示の気持ちもわかるから嫌にはなりません。


結論】最初からリモート経営なのはスタッフも承知の上だし、当然カメラくらい置くでしょ。って思っているみたい。


しかし、当時を振り返ると「心配しすぎ!」「カメラを見すぎ!」「指示を出しすぎ!」と過剰だったなと反省している。

途切れ途切れだったが、私は毎日カメラを見て指示しまくっていた。

撮影の無い時は、事務作業をしながら、モニターをちらちら見ながら連絡を鬼のようにしていた。

カメラをつけた事で過剰だったと思うこと。
私にとって初めてのお店経営だったのもあり、1年目は心配で心配で......
日本にいるのに四六時中カメラの映像を見て、些細なことでも指示していました。でもそれをすると、スタッフたちが自分で考えて行動する癖をなかなかつけられないんだよね。お店が2周年を迎えたあたりで「指示されていないことはやらなくなるし、スタッフたちの当事者意識が薄れている」と気付いてから、改善しようと考えを改めました。

そして、私は指示するこを減らしていった。

そして「自分たちで考えて、決めたことを報告してください。ある程度任せます。でも、心配ならいつでも相談してね」とみんなに伝えていた。

また、webカメラも1日数回アクセスするくらいまで減らしていった。

私が何も言わなくなったことを良いことに、好き勝手やらないだろうか。と心配していたが、全くそんな事はなかった。

むしろ、全体的にうまくいくようになったのだ。

もちろん、最初から任せきりなのは良くない。
私たちのお店は、2年の間にある程度のベースが出来上がっていたんだと思う。



■音声のやりとりだけが会話じゃない。



webカメラ以外に、リモート経営する上で重宝していたのがチャットアプリだ。

日本にいる間のみならず、ベトナム滞在中でも使っていた。

使うツールは使いやすいものをその時に合わせて変えていっているが、今もコミュニケーションを取るためによく使っている。

チャットでの会話は英語と日本語とベトナム語が交じる

ちなみに、私とベトナム人がzaloで会話する時は日本語、ベトナム語、英語が入り交じる。

グループチャットは全員に話が共有できるし、必要な事だけを書くから話が早いの。

Zaloとは?
ザロとはベトナム発のアプリで、ベトナム国内で最も使われているメッセージングアプリ(SMS)です。全世界で1億人を超えるオンラインユーザーがいて、そのうちのほとんどのユーザーはベトナム人です。


仕事中のスタッフとやり取りする時は、今もSkypeがメインだ。

skypeでの会話

受付スタッフ、マネージャーとの会話もSkypeで。
今日一日の連絡、報告も文字でやり取りしている。

Skypeとは
スカイプはマイクロソフトが提供するSNSです。無料で電話やテレビ電話などといったことができるソフトウェアで、スカイプ同士なら無料で何十時間でもそういった機能を利用することが可能です。ダウンロードするのにもお金がかからないよ。

もうね。チャットを使った会話をするようになったら、手放せなくなっちゃた。

私はベトナム語のスキルがないし、通訳スタッフ以外は日本語のスキルがない。

共通言語は英語だが、こちらも互いに得意じゃない。


「言いたいことが相手に伝わればOK」というマインドで、お互いに文法が多少間違っていても、単語を並べて意思疎通したり、Google翻訳を使い会話している。

こういう言語に少し困難がある私達にとって、文字チャットでの会話はとても便利だ。


■おまけ


ベトナムホーチミンで私達のお店、KawaiiNail&Eyelashをオープンさせ、2週間が経った頃。

相変わらず私は、日本の事務所で作業しながら、カメラ映像に張り付くように見ていた。

テラスのカメラを見ていると...。スタッフはなにやら騒いでいる。

スタッフがケーキを撮影しているところ

「ケ、ケーキを囲んで騒いでる?なんで??」

よく見ると、スタッフだけでなく、タンくんまで一緒になってワイワイしている。

誕生日のお祝い風景

「もう!やっぱりリモートは駄目かも。さっそく遊んでるわ...。」と思い私は落胆した。

私:みんなで何やってるの?

スタッフ:今日、タンさんの誕生日ですから。お客様が居ない時にサプライズをしています。

私:え!今日タンくんの誕生日なの?知らなかった。私も一緒にお祝いする!


スタッフは、みんなで撮った写真をskypeに送ってくた。

送ってきてくれた写真

遊んでいるなんて勘違いしてごめん。そういうことなら全然OK!

てか、お客様が居ない時を見計らってお祝いするとか、スタッフたち最高じゃん!

そして私は、ケーキを食べている様子をリモートで見ながら一緒にお祝いしましたとさ。

スタッフがケーキを食べるところ


2016年からベトナムのお店をリモート経営してきた私が思う結論
・webカメラで全体を見るのと、その場所で見る景色はちょっと違う。
カメラ映像は俯瞰で全体を見れるのと、その場にいないこともあり状況を客観的に判断できる。

・webカメラは遠隔で状況を確認するために必須のものだが、それがあるからと言ってうまくいくわけじゃない。現地スタッフがちゃんと働いてくれるからこそ成立するものだ。

・遠隔に限らず、指示が過剰だと双方にとって良くないし、相手は依存しがちになっちゃう。

・最初はきちんと管理し、ベースやルールを作る。その後、徐々にスタッフ達に任せていくと◎

・テキスト会話は、一回文字に言いたいことを書き出すので、優しい言葉使いになる。だから、感情がヒートしていても文字に起こす時にクールダウンできる。(互いにとって結構優しい世界だ)

・一日の決まったタスクが完了しているならきちんと働いている証拠。
あとの細かい所はマネージャー含め、彼らの采配に任せていい。


KawaiiNail&Eyelash sns (@kawaiisaigon)

▼ ● ▲ ▼ ● ▲

▼わたしが遠隔でやってきたこと▼

▼ベトナムサバイブ総まとめ▼


この記事が参加している募集

振り返りnote

読んでくださってとっても嬉しいです! いただいたサポートは色々な発信ができるよう勉強に使わせていただきます。