老後に必要なのはお金より思い出~DIE WITH ZERO読書感想文~

みなさん、自分の老後に向けて、貯蓄はしていますか?

漠然と、老後の資金に不安がありませんか?

今日ご紹介するのは、そんな老後の資金に関する本で、題名は「DIE WITH ZERO (ゼロで死ね)」です。


ゼロで死ね、つまり資産を残して死ぬな、資産を使い切って死ね!というのが本書の主張です。

資産を残して死ぬということは、本来その資産を使って出来た様々な体験を経験せずに死ぬということで、勿体無いですよね。1000万円を残して死んだら、それは1000万円分の経験をするチャンスを逃したことに。しかも、あなたが今、老後に向けて一生懸命お金を蓄えているとして、もし未来の自分が、いま一生懸命貯めているお金を使わずに死んでしまったら、今のあなたの努力も、ちょっと勿体無く感じませんか?もし自分の老後に必要な資金が合理的に分かっていて、漠然と貯蓄するのではなく、老後に本当に使う分のお金だけを貯金する計画を立てれば、もしかすると今のあなたは、貯金以外にももっと色んな経験に時間とお金を使うことができるかもしれません。

ただ、将来何が起きるか分からないし、老後に資金が尽きたらと考えると不安になりますし、実際なにも考えずにお金を使い続けるのもダメです。貯金なんて無駄だから遊べ!といっているのではありません。備えあれば憂いなしということで、備えることはとても大切なのですが、備えることに専念しすぎるのではなく、もう少し将来自分が必要となる資金と資金が必要になるタイミングを深堀って必要な備えの解像度を上げ、同時に若いときの経験がどれだけ大事かについても考え、バランスよい人生をおくりましょう。特に慎重派の人は、まるで自分が150歳まで生きるかのような過度な貯金をすることもあるため、もう少し合理的な貯金の仕方をしましょう、ということです。

このように本書では、自分の老後に本当に必要となる資金の計算の仕方老後資金の合理的な貯め方を学ぶことで、無駄にお金を貯めて、それによって自分の大事な思い出づくりを犠牲にしないようにすることをコンセプトとしています。

老後に大事なのは、お金より思い出

みなさんは、自分が老人になったら、どのくらいお金を使う想定ですか?

なんとなく想像つくと思いますが、老後ってそんなにお金を使わないそうです。体力的にできることが限られてくるし、精神的にもそんなに何かをしたいと積極的にならず、生活に最低限のお金や、ローン返済などにしかお金は使わないそうです。確かに僕の祖母は、外食もしないし旅行にも行かないし友達と遊んだりもせず、日々の楽しみはテレビとパチンコを嗜む程度。

つまり老後はお金があってもそのお金を使って出来ることが少なく、お金の価値は若い頃と老後では全然違くて、老後のお金の価値はそんなにない。じゃあ老後生活で何が価値があるのかというと、これまでの人生で蓄積した経験や思い出が、老後において一番価値があるんですって。確かに、これまで何十年も過ごしてきた記録を写真や動画で振り返り、伴侶や家族や友達と共有するのは、とても楽しいだろうなぁ。このように老後においてお金の価値は低く、思い出の価値は高いにも関わらず、多くの人は、今しかできない思い出づくりを犠牲にして、将来そんなに使わないお金を無駄に溜め込んでいる。

実際アメリカでは、資産は歳を重ねるにつれて増え、多くは70代になっても資産が増えているそうです。70代になっても資産が増え続け、使い切れないお金を溜め込んでいるのなら、若いうちにそんなに努力して働かなくても良かったのかもしれない。

老後に本当に必要な資金はいくらか計算し、明確な将来の計画を持ち、今を楽しむのも忘れない、というのが著者の人生のコンセプトです。そして老後に必要になる資金やその資金の貯め方について、本書では具体的に説明されています。

思い出は複利でどんどん増えていく

皆さんは、お金の投資はしていますか?

お金を投資して、その数%の配当を得る。今度は元手と配当を合わせた金額を投資して、その数%の配当を得る。投資を続ける期間が長くなるほど、複利的に資金が増えていくのが投資ですよね。

本書では、思い出づくりの経験もまた「投資」で、経験で得た記憶を「配当」と表現しているのが面白いと思いました。

確かに、ある経験をして、その経験をキッカケに新たな出会いや人生の選択肢が生まれ、さらにそこから新たな経験が、、、と考えると、経験も一種の投資なのかもしれません。

そして、経験への投資が早ければ早いほど、記憶の配当はたくさん手に入る。20代に何かを経験すれば、30代で経験するよりも長い間、記憶の配当を得られ続ける。なので、若いうちにたくさん経験しておけ!というのが著者のメッセージです。

貯蓄の割合は収入で変わる 

「収入の○%を貯蓄に回そう」という話はよく聞きますが、収入によらず一律で一定の割合を貯蓄に回すのは合理的でないこともあるそうです。特に、将来的に自分の年収の増加が見込めている場合、まだ収入が少ない間に身銭を切って貯蓄をすることは、未来のお金に余裕がある自分に対して貯蓄していることになり、なんのための貯蓄なんだ、ということになります。本書では、収入によって、あるいは年代によって貯蓄の割合を変える方法を提案しています。例えば20代は経験に投資して貯蓄はせず、30~40は20%、それ以上はもう少し、といった具合です。そして、シミュレーションに基づき、残りの人生を生き延びるために十分な金額を確保したら、積極的に使うことを推奨しています。

感想

最初にお伝えしたように、ゼロで死ね、つまり資産を残して死ぬな、資産を使い切って死ね!というのが本書の主張です。

ただ、率直な感想としては、「自分はベンチャー企業にいるし、いつ収入が途絶えるかも、今後どのくらいの収入が見込めるかも正直不安はあり、シミュレーションに基づいた貯蓄額の計算は難しいかも」と思いました。

実際に本書のターゲットは「ある程度の経済基盤があり、適切な計画さえしていれば、金が足りなくなることはない人たち。今しかできない経験のための金を、無駄に貯め込んでいる人たち」と書いてあり、筆者が私のことを見たときにターゲットに含まれているのかは疑問に感じました。

しかし、この本が無駄だったということは一切なく、参考になったことがいくつもありました。

まず、自分は老後に必要な資金について全く考えてこなかったな、というのは感じました。今ではネット上で問診して自分の推定寿命を出すことはできますし、「仮に65歳でリタイアしたら」などの仮説を置いてシミュレーションをすることは可能です。また、本書ではいくつかシミュレーションの方法を提示しているものの、あくまで参考程度にして、ファイナンシャルプランナーに相談することを勧めています。

そして、歳を経るごとに肉体的にも精神的にも衰えていくことも、そしてそのときにはこれまでの思い出が貴重な資産となることも、もちろん理解はしているものの、「今しか出来ない経験に投資しよう」という行動は、あんまり出来ていないと感じました。

総じて、自分がいつか死ぬこと、その死に際にハッピーでいること、それまで充実した人生を送ることに対して真剣に向き合っておらず、漫然と今を生きているなぁ、というのを感じました。

本書を通じて、改めて自分が人生で経験したいことはなんだろう、と自分と向き合うキッカケになりましたし、早速スキューバダイビングのライセンスを取得することにしました。数年後には子育てなどで忙しくてその機会を失うかもしれませんし、出来るうちに経験しないと。

ということで、ゼロで死ね、つまり資産を残して死ぬな、資産を使い切って死ね!をテーマにした「DIE WITH ZERO」の読書感想でした。


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