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水野シズク、入社一年目のフレッシュプロマネの挑戦 第六話

ランチタイム

プロジェクトの忙しさの中で、シズクは安藤さんとのランチタイムを特別な息抜きの時間として大切にしていた。安藤さんが福岡出身であり、特にもつ鍋をこよなく愛することを知ったシズクは、二人で「あぶり清水」というお店に足を運んだ。ここはビルの地下にある居酒屋で昼には肉料理を中心としたランチを提供している。特に一人でも楽しめるもつ鍋で有名で、その味は地元福岡のものにも引けを取らないと評判だった。

安藤さんはもつ鍋定食を注文し、その濃厚なスープと新鮮なモツの組み合わせに満足そうにうなずいた。シズクは辛いものが大好きで、同じく提供されている麻婆豆腐定食を選んだ。麻婆豆腐の芳醇な香りとスパイシーな味わいが、彼女の舌を刺激した。

ランチ中、二人は使い捨てエプロンを身につけていた。もつ鍋や麻婆豆腐のスープが飛び散るのを防ぐためで、これがあるおかげで服を気にすることなく食事を楽しむことができた。安藤さんとシズクは、食事をしながらも、プロジェクトの話やプライベートな話題で盛り上がった。安藤さんはプロジェクト経験が豊富で、シズクにとっては貴重なアドバイスをくれる先輩でもあった。

もつ鍋定食を前に、安藤さんは少し興奮気味に話し始めた。「今日、14時からのニシスの全体定例会議で、新しいプロジェクトについての説明があるんだ。何か大きな動きがありそうで、ちょっと楽しみだね。」

シズクはその言葉に耳を傾け、新しいプロジェクトの話題に心躍らせた。現在のマイネットワーク社のプロジェクトが最終段階に差し掛かっていたため、彼女自身が新しいプロジェクトに関与する可能性は低いと踏んでいたが、その内容と方向性については非常に興味があった。

「どんなプロジェクトになるんだろう?」シズクは思わず口に出した。安藤さんは肩を竦めて、「それがさ、詳しいことはまだ聞いてないんだ。でも、結構大掛かりなものになるって噂はあるよ。」

シズクと安藤さんは通常、健康を意識した食事を心がけている二人だ。そのため、彼女たちの体形はすらりとしており、毎日のランチもバランスよく選んでいる。しかし、今日は「あぶり清水」でのモツ鍋と麻婆豆腐定食という少し重めの選択だった。それでも、二人は楽しい会話を交わしながら、美味しくそのランチを平らげた。

全体定例会議

全体会議の会場は期待と緊張で静まり返っていた。ニシスの事業部長である塚本が前に立ち、注目を集めながら話し始めた。「本日は皆さんに大切なお知らせがあります。新しいプロジェクトについての説明と、それに伴うメンバーの発表を行います。」

塚本は続けた。「この新プロジェクトは、IOTを活用したソリューションを提供するVELTIC社との共同開発です。VELTIC社は技術革新に注力するベンチャー企業で、社長はまだ30代で数々のメディアで紹介されています。同社の社員のほとんどが20代と若く、今回のプロジェクトチームも20代で構成することを希望しています。」

シズクはこの話を聞き、内心で驚いていた。彼女がこれまで経験したプロジェクトとは全く異なる新しい試みで、そのダイナミックな環境に興味を抱いた。会議室を見渡すと、他の同僚たちも同じように興奮や好奇心を隠せない様子だった。

「VELTIC社の規模は約30人。私たちはそのポテンシャルをさらに引き出すため、既存システムをベースに新規サービスを追加するプロジェクトを進行します。開発期間は8か月と設定されています。」塚本が詳細を説明した。

会議が進むにつれ、塚本はプロジェクトメンバーを一人ひとり発表していった。塚本の声が会議室に響き渡り、シズクの耳にはっきりと届いた。「水野さんにはプロジェクトマネージャーとしての活躍を期待しています。」塚本の顔には確信と期待が満ちており、その笑顔がシズクに向けられた。

シズクはその瞬間、胸が高鳴るのを感じた。プロジェクトマネージャーとしての役割は大きな責任を伴うが、彼女はこのチャンスを心から歓迎した。VELTIC社との新プロジェクトは、彼女がこれまでに培ってきたスキルを存分に発揮し、さらに新たなスキルを磨く絶好の機会であった。

「このプロジェクトはIOTを使った革新的なソリューションを開発するもので、私たちにとっても学びが多いプロジェクトになるでしょう。水野さん、プロジェクトの成功を共に目指しましょう。」塚本はそう言い、更に続けた。

「開発リーダーには小田君を指名します。彼の技術力とこれまでのプロジェクトでの実績が、この新しい挑戦には不可欠です。」塚本が発表すると、小田は静かに頷いた。

次に、塚本はテストマネージャーの発表に移った。「テストマネージャーとして、安藤さんにその重責をお願いします。安藤さんの経験とこれまでの成功が、このプロジェクトの品質保証に大きな影響を与えるでしょう。」安藤さんはシズクの方を向くと、ニコリと笑顔を見せた。

塚本の発表はまだ続いていた。彼は次に、若手だが非常に有望な開発担当者たちの名前を挙げた。「プロジェクトの成功には、新鮮なアイデアと現代の技術を理解する若い力も必要です。そのため、3名の若手開発担当者を紹介します。」

最初に名前が呼ばれたのは、シズクと同期入社の佐々木だ。彼は大学を首席で卒業し、最新のプログラミング言語に精通している。佐々木は「はい」と手を挙げて返事を返した。

次に、スマートシティプロジェクトで実績を上げた入社2年目の鈴木が紹介された。鈴木は特にデータ分析と機械学習の分野で才能を発揮しており、そのスキルがこのプロジェクトに新しい視角をもたらすと期待されていた。

最後に、アプリ開発コンテストで複数回表彰された現在25歳の小宮もプロジェクトチームに加わることが発表された。彼女はユーザーインターフェースのデザインに特化した才能を持ち、使用者の経験を豊かにするためのアプローチで知られていた。

会議の終盤に、塚本は全員に向けて、「このプロジェクトは私たちにとって新たな挑戦です。しかし、私はこのチームが持つ可能性を信じています。一丸となって目標に向かいましょう」と締めくくった。

新しいプロジェクトを始める前に

カフェの隅のテーブルで、シズクと田中はプロジェクトの進捗について話していた。田中の声には落ち着きがあり、彼はシズクに向けて励ましの言葉をかけた。

「総合テストは終わったけど、まだユーザ受入テスト、データ移行、本番切替の作業が残っています。」シズクはこれまでの努力とこれからの課題を田中に伝えた。

田中はコーヒーカップを手にしながら応じた。「心配ないよ。ユーザ受入テストはマイネットワーク社の業務部門が行うテストだから、しっかりと準備されています。データ移行と本番切替も計画通り進むはずだ。水野さんはこちらのプロジェクトの心配をしないで、VERTIC社のプロジェクトに専念してください。」
「マイネットワーク社のプロジェクトでだいぶ無茶振りしたけど、全部きちんとやり遂げることができました。そういうところが評価されたんだと思います。」

田中は微笑んで、「大変な仕事だけど、やりがいもあるから頑張ってください。あなたの能力とリーダーシップで、VERTIC社のプロジェクトもきっと成功しますよ。」と激励した。そして、「困ったことがあったらいつでも相談してください。」と付け加えた。

シズクは新しいプロジェクトでのさらなる成長を目指し、田中との会話から多くのヒントと勇気を得た。彼女はVERTIC社のプロジェクトでの役割に全力を尽くすことを心に誓い、カフェを後にした。

つづく

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