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韓国映画『三姉妹』を京都シネマで観てきました

12年ぶりに映画館でひとり、映画を観た。
子どもと楽しめるアニメ映画ばかりだったこの10年、わたしが観たい映画を、また映画館で観ることができるようになった。

『三姉妹』監督・脚本:イ・スンウォン 2020年/韓国


主演のムン・ソリがその脚本に感銘を受け、資金集めのためにプロデュースを買って出たとあっては観ずにはいられない。

いわゆる娯楽映画ではない本作(資金集めには苦労したらしい)、当然シネマコンプレックスでの上映はあるはずもなく、調べてみると京都烏丸の京都シネマで公開されていた。

観客の年齢層は若干高めではあったが、観客の半数が男性だったのは意外だった。

左から三姉妹役のキム・ソニョン、ムン・ソリ、チャン・ユンジュ

三姉妹の長女と次女を演じたとキム・ソニョンとムン・ソリはわたしと同世代。私生活では娘を育て、映画やドラマの第一線で活躍する彼女らは、わたしを大いに励ましてくれる存在だ。

とにかく、三姉妹を演じる俳優の演技が凄まじい。特に、大女優の誉れ高いムン・ソリと演技派のキム・ソニョンに食われることなく、ほぼアル中の下品極まりない三女ミオクを演技切ったチャン・ユンジュがすごい。
聞くところによると、このチャン・ユンジュは韓国のスーパーモデル(日本でいうところの富永愛?)で、演技経験もまだ浅いというではないか。

売れない脚本家の三女ミオクを演じるチャン・ユンジュ


こちら『三姉妹』韓国公開時にインタビューに答える、チャン・ユンジュ

とても同一人物とは思えない。
韓国俳優の役に入り込んだ時のすごさに、感服至極。

それぞれに「大丈夫なふり」「完璧なふり」「酔ってないふり」の三姉妹だが、その現実は悲惨で行き詰まっている。
その元凶が父親によるDV(母親は見て見ぬふりでDVに加担している)であることが明らかになっていく終盤は、ジェットコースターに乗っているかのようだった。

あれはDVだった

今から20年ほど前(確か二十歳を過ぎた頃)のことを『三姉妹』を観て、思い出した。

中学テニス部の同級生と久しぶりに集まる機会があった。すでに母親になっている子もいて、その子たちがどこのおむつメーカーがいいかで盛り上がっている会話にわたしは全く入っていけなかった。

そのうちの一人が赤ちゃんをあやしながら、唐突に言い出した。
「うちのだんな、すごくビール飲むねんか。ビール代が月に2.3万はかかる。ビールを飲むだけならいいねんけど、飲んだら暴力振るうねん。だけど、殴ったあとは決まって前より優しくなって謝ってくるから、許してしまう」

当時のわたしには彼女が言っていることを理解するには幼すぎた。
ただ、「そうなんや」とだけ言ったと記憶している。

一昨年の夏、その子が乳がんで30歳半ばで亡くなっていたことを、人づてに聞いた。二人の子どもを残して逝ったという。
わたしは、彼女の夫のDVが彼女を苦しめ、早くに死なせたと思っている。思い込みも甚だしいが、そう思っている。

今ならあの子に言える。それはDVだと。
だから逃げて、殺される前に逃げて、と。

あの時言えなかった後悔が、
『三姉妹』を観たわたしの胸を苦しくさせる。













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