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ホラー秘宝まつり2023 「世にも怪奇な物語」 202310/27 サロンシネマ


 昨日からサロンシネマにて、ホラー秘宝まつりが始まり第一作品目を鑑賞してきた。

 記念すべき一本目は「世にも怪奇な物語」(1967)。フランスのオムニバス映画である。
オムニバス映画といえばジム・ジャームッシュ監督の「ナイトオンザプラネット」を思い出した。オムニバス映画のいいところは一本の映画で何本分もの満足感を得ることができる点である。

ナイトオンザプラネット(1992)



 本作はロジェヴァディム、ルイマル、フェデリコフェリー二監督という三大巨匠が手がけていることから期待値が高かったが、軽々と予想を超えてきた。



①「黒馬の哭く館」



 まず、ジェーンフォンダの美しさに目を奪われた。彼女の父である名俳優ヘンリーフォンダは個人的に敬愛する人であるので、その娘を大スクリーンで拝むことができただけで儲けた気分である。



 不気味な音楽と悍ましい色味のOPがいい味を出していた。

 自由奔放なおてんば娘ジェーンフォンダが、秩序正しい教養人のピーターフォンダと出会い、成長していく物語である。


イージーライダー(1969)


 好き放題するジェーンに比べ、常識のある行動をとるピーター。そんな彼の些細な一言でジェーンは怒りに狂い、彼の愛する馬がいる小屋を燃やしてしまう。そして救いに行った彼も共に死んでしまい、ジェーンは良心の呵責に苛まれてしまう。

 彼女の周りにはイエスマンしかいなかったため、ピーターのように彼女に忠告してくれたり、自分の思い通りに動かない人物は初めてであった。だからこそ心が奪われたのだ。

 ピーターの生まれ変わりかのように突如として彼女の前に現れた黒馬。彼女は黒馬と行動を共にし、一人と一匹はカップルのように関係を育んでいく。ピーターの死後ぶつけることのできない怒りと満たされることのない情熱を抱えていた彼女は黒馬と過ごすことでその想いを昇華させていく。

 しかし、最後は黒馬に取り憑かれたように共に炎の中へ入り二人は死を共にする。

 この終わり方が二人にとっての幸せだったのかも知れない。


②「影を殺した男」



 私が俳優界の中で最も格好いいと思う男、アランドロン。
太陽がいっぱいにてモンブランの万年筆を手に取り、サインを書くさまは何度見たかわからない。力のある目つきに透き通った鼻筋。どこをとっても間違いなく世界一の2枚目である。


 イントロから何者かから逃げるように走るドロン。教会へいき神父に懺悔をさせてくれと頼み込み一方的に過去を話し出す。
 “人殺し“をしてしまったと語る彼。そこで回想シーンが始まる。

 アランドロンの息子か?と疑うほどに彼に瓜二つの子役が出てきて驚嘆した。

 子供の時から人に意地悪をすることが好きなドロン。そしてことあるごとに彼の悪事を止める同姓同名の男。

 同級生をいじめている時も、医学生となって女性を切り裂こうをする時も、入隊したのちにイカサマでカードゲームに勝った時も同姓同名の男は彼を裁く。

 同じ顔をした男同士が争うさまは、レオナルドディカプリオ演じる「仮面の男」を彷彿とさせた。


仮面の男(1998)



 結局怒りに任せて、男を殺してしまうドロン。しかし、彼の話を話半分に聞き冗談と思い聞き流す神父。

 そして、ドロンは勢いに任せて飛び降り自殺を図るが、そこで倒れていたのは胸にナイフが刺さったドロンの言っていた男であった。

 結局、彼の酒が入ったことによる妄想なのか、はたまた現実なのかよくわからない終わり方はクリスチャンベールの「アメリカンサイコ」味を感じた。


③「悪魔の首飾り」

 最後の作品はフェデリコフェリーニ監督によるもの。OPの音楽から異様なカッコ良さで見たのちに誰が担当していたのか調べたらまさかのニーノロータが手がけていた。やはり天才である。

 物語はイギリスの名俳優であるテレンススタンプがローマに行くというあらすじで、最初に空港が出てくるのだが、空港の雰囲気がウルリケオッティンガーの「アル中女の肖像」に登場するセットに似ていた。

 正直、全体の雰囲気や画はカッコよく見ていて飽きないのだが肝心の物語があまり頭に入ってこなかった。
 けれどこういったこともオムニバス映画だからこそ許すことができる。他のニ本で十分に楽しめたからだ。


余談ではあるが、一本目の監督ロジェヴァディムはジェーンフォンダ、ブリジットバルドーの二人と婚約しており、プレイボーイとしても名を馳せている。




 ホラー秘宝まつりはまだあと三日あるのでこれからも楽しませていただきたい。

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