蒼くて淡い深夜番組【エッセイ】
子供の頃、田舎にある親戚の家で観る深夜番組が大好きだった。親戚全員が寝静まって、一人リビングで突如テレビを点ける。ドキドキしながら、誰かの影を気にしつつも少し甘酸っぱい気分に浸る至福の時間。大人になってから決して味わうことは出来ない懐かしい思い出。普段見慣れないローカルタレントが司会をし地方色がとても濃い番組は笑いが絶えることはない。「これ誰?」「何この番組?」とか思いつつも、何が面白いのか分からなくても子供心では何か身近な地方局の良さを感じていた。マスメディアの仕事に興味を抱いたのはテレビがきっかけだったが、こういう何か身近な地方局の番組の存在のお陰かもしれない。
深夜番組の合間に流れるコマーシャルはだいたいが地元の企業がスポンサーで分からない知名が並んだ。また演出やそこに出演するタレントさんに微妙な?インパクトがあった(私はあの奇妙なローカルぽさが好き)。
親戚のおじさんやおばさんが「おい、ジウ君。子供は夜ふかしするなよ」と眠気まなこで残酒の匂いを振り撒いてリビングにやって来て注意をしてくる。深夜番組から流れるやや桃色さからくる高揚感なのか、親戚や親から叱られるかもしれないという切迫感なのか、自分の家では無いのにリビングに深夜一人でいるという背徳感なのか。なんであんなにもドキドキワクワクしたのだろうか。思えば、今だにはっきりとした理由が分からない。
一つ言えるのは、大人になったらあんな不思議な緊張感は味わえないということ。人は気がつかない間に何か大切なものを失っているのかもしれない。
【了】
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