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溢れだす感情に私は口を塞ぐ。(400文字小説)

今宵ベッドに潜り込み、身体を丸め、息を潜める。どこを探しても見つからない、言葉に表せない重い気持ちが私にのしかかる。息が上手くできないまま、見えぬ何かに追われ、私は逃げ場を失いかける。
暗い部屋でスマホが光る。ゆっくり手を伸ばし、光を手繰り寄せる。
暗闇の中、四角い画面と向き合い、眩しさに私は目を細める。そこは画面に広がる文字の海。たわいもない文字の行き来が、私の心を解いていく。文字の海は、寄せては返す波のように、私の重い気持ちを静かに崩していく気がした。
薄明かりの中、私の心の奥底が動き始める。カタカタと揺れ、ゆっくり、確実に、なにかが動くのを感じさせる。
息が上手くできた時、私は全身の力を抜いて、そっと目を閉じる。寝息をたて、夢の中へ落ち始めていく。
「おやすみ、今日の私とキミ」
今日が昨日になって、明日が今日になっても、私とキミの距離は変わらないことをこの文字に祈ろう。そばにいてくれますように。

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