ピンク・レディー 全アルバムレビュー!
こんにちは、龍垣です。書き終える前からこんなに伸びんやろなあと思う記事は初めてですが、ドM根性爆発、ピンク・レディーを扱わせてください!
世代の方々にとっては知らない人はいないどころか歌えない人はいない、踊れない人はいないクラスに日本を席巻したアイドル、ピンク・レディー。
後追い世代として、シティポップを聴く人間がいてもピンク・レディーの音楽を聴こうという変態はなかなか私以外に見つけられませんでした。そんな中でさらに彼女らをアルバムで評価してやろうという変態的な企画、ある程度魅力がわかっている方向けの超ド玄人企画なので、まずは魅力を少々語らせてください。
ピンク・レディーの魅力
え、音ネタ?奇抜過ぎない?衣装も振り付けも。これが昭和だからとかじゃないんです。あの時代の中でもピンク・レディーの存在は異質でした。こういった曲ごとの衣装や振り付けも大きな魅力ですが、今回は全アルバムレビューということで、ここは各々ゆっくり履修しといてください。めちゃ楽しいですよ。
あ、向かって左がミー、右側がケイです。
主旋律などにこだわらずミーが高音、ケイが低音を担当し、たまにしかハモらず基本ユニゾンです。
さて、音楽性としてはめっちゃ変なので一言で言い表すことは難しいのです。彼女たちを歌謡と一蹴することは出来ません。
世界観やサウンドに「ニセ未来」感があるのが重要で、女性の本音みたいなものを奇天烈に表現したり、セクシーに表現しようとしたりしてます。ただ、良い意味で全くエロくなく、未来感もニセなのです。ピンク・レディーの前では「エロ」も「未来」も記号に過ぎません。そのキャッチーさとクオリティの前では、「ホンモノ」へのこだわりなどバカらしくなります。
楽器隊はR&Bやロックンロールの影響を受けつつ、歌謡の枠からはみ出たり戻ったりしてます。リズムが気持ちいい楽曲が多く、それが天才阿久悠の独特過ぎる歌詞と相まってピンク・レディー感となるのです。ただ、どんなヘンテコな曲でも、というかヘンテコな曲に限って歌謡マシマシの琴線にくるサビがあるのがたまらないんです。
そして何より彼女たちはシングルを売りまくったアイドル。だがその面白すぎる音楽性をシングルだけで味わうのは勿体ないと思うのです。アルバム収録されてないシングル名曲もあるのですが、その逆も然り。
もっちろんシングルの神曲たちを拾えるようにおすすめベストも最後に紹介します!
1976年から1981年までの5年間の活動で、オリジナルアルバム扱いは5枚。(『PINK LADY』(1981)は除く)
さあ、ロックンロールも歌謡もアイドルソングも好きな奴、手の鳴る方へ。
1.『ペッパー警部』(1977)
アイドルとして満点のデビューアルバム。
ピンク・レディーの自己紹介のようなバラエティ豊かなオリジナル曲のA面と、ほぼ同世代のイギリスのアイドルバンド、ベイ・シティ・ローラーズの日本語カバーだけという、アティチュードを示すB面というめっちゃ面白い構成。
鮮烈なデビューを叩きつけた「ペッパー警部」からこのアルバムは始まりを告げる。様々なジャンルをごった煮にしたような変なイントロ、訳の分からない歌詞、ピンク・レディーど真ん中の名曲。この軽いアップテンポはスタートにぴったり。
2曲目はケイのソロ「インスピレーション」で、ピアノが気持ちいいミドルテンポのロックンロール。このどこかステレオタイプ化されたニセロックンロールがたまらない。
3曲目「乾杯お嬢さん」はピンク・レディーが持つトラブル感を過度に上げたヘンテコ歌謡。
4曲目「ピンクの林檎」はヘンテコ度でいうとトップクラスにくるような、歌謡なのに歌謡以前のテイストのジョーカー枠。
5曲目ミーのソロ「ゆううつ日」は珍しくストレートに暗い歌謡をやっており、普通に質が高いのでピンク・レディー感はなくとも、がっかりせずに聴ける。
6曲目「S・O・S」 はピンク・レディー感が溢れ出す歌謡部分とR&B部分がミルフィーユ構造の名曲。この軽薄さと楽器の説得力のアンバランス加減がミソ。うまし。
と、レコードにおけるA面を全曲紹介してしまった。ほんとにアルバムで聴くことをよく考えられた勝負のA面である。
B面、すなわち7曲目からはベイ・シティ・ローラーズのカバーなのだが、ここからの必聴曲としては、
7曲目「I Only Want to Be with you」のカバー「二人だけのデート」。良い意味でオリジナルも軽薄なのだが、ピンク・レディーはドラムのR&B感や日本語特有の歌謡のスパイスをかけ、こちらも違う軽薄さになっている。
そして8曲目「Keep On Dancing」のカバー「朝まで踊ろう」はライブ仕様になっており、合いの手が入ったりしてアイドルというアイデンティティを強烈に表明した上で、オリジナルとはまた違った生バンド感。
9曲目「マネー・ハニー」ははっきり言える。オリジナルより硬派だと。ギターの音圧から簡単にそのガチ感が伺えると思う。
ところが11曲目「ロックン・ロール・ラブレター」ではオリジナルよりかなり軟派になっているのだ。当時まだ邦楽に対して格上と言われた洋楽に対してこの「のらりくらり」感。降参している訳でも勝負を挑む訳でもなく、ただ楽しんでいるのだ。音楽を。
ピンク・レディーはライブではプレスリーやビートルズなどロックンロールに狙いを定めてよくカバーしているのだが、元々ビートルズが現れるまでロックンロールなんて作家が書いた曲を歌ったり、カバーをしまくる世界だった。ピンク・レディーは作家主義なんて知識階層の奴らのやることだぞとアイドル側からロックンロールに警鐘を鳴らしていたのかもしれない。
あはは、そんな訳、ないか。
とまあ、あまり振り向いてもらえないこのアルバム、クオリティは高く、カロリーもちょうどよく、聴きやすい。とにかく敷居が低いので歌謡初心者にもオススメできる良作である。
2.『星から来た二人』(1978)
爆発的にシングルヒットを飛ばしながらリリースされたセカンドアルバム。ピンク・レディーらしさは完全に板に付き、スターの自信がみなぎっている。
1曲目「百発百中」は出す曲出す曲全て社会現象になる自らをセルフオマージュ満載で笑い話にしてしまうアッパーナンバー。ビートルズの「ア・ハード・デイズ・ナイト」のような深刻な忙しさをポップに昇華させる姿勢にも最高にワクワクする。
2曲目「千の顔を持つ女」はアルバムの2曲目感がしっかりあるキャバレーっぽい曲。前作の2曲目もミドルテンポロックンロールだったが、ニセ未来感、宇宙感の楽しさったらない。
3曲目「ミステリー・ツアー」はピンク・レディー感、歌謡感も素晴らしいのだが、とにかくサビのメロディと歌詞が良すぎる!歌謡を超えた絶品のメロディの上で1度目のサビでは、
謎は心の夢の重さ
夢みるだけ深まる謎
2度目は、
愛は心の謎の重さ
ふしぎなだけ深まる愛
と方程式のような美しささえ見出せる、バッハよろしく建築家的な所業もこなす阿久悠の作詞センスには、開いた口が塞がらない。
4、5曲目「フレンズ」「星から来た二人」はピンク・レディーのアニメーション作品のセルフカバーになっており、楽曲としての評価をするより、アルバムの雰囲気を作り出す上で重要なアンセムとして評価すべきだろう。ピンク・レディーらは「フレンズ」という現実の人間でありながら「星から来た二人」なのだ。まさしくアイドル。その奇妙な偶像化は止まらない。
6曲目「2001年愛の詩」
『2001年宇宙の旅』(1968)が恐ろしい精度で未来を当てに来たように、ちょうどその10年後、ピンク・レディーも2001年の未来を楽しく予言した。歌謡のメロディが沁みる素晴らしいニセ宇宙、ニセ未来楽曲なのだが、歌詞がすんごいので、ここに全文掲載させて欲しい。(リフレインしている箇所を一部省略)
オオ諸君 地球の諸君
隅から隅まで おめでとう
いよいよ諸君も 宇宙の仲間に 認められました 諸君の歴史は愛の歴史といえるでしょう
愛をたずねる不思議な旅を
重ね重ねて何千年
重ね重ねて何千年
ようやく諸君も気がつきましたね
ようやく諸君も気がつきましたね
愛することがあたりまえなら
愛という字がいらないことに…
1999年 1999年
地球の辞書から LOVEという字がなくなった L・O・V・E LOVE
L・O・V・E LOVE
LOVEという字がなくなった
オオ諸君 地球の諸君
宇宙の果てから おめでとう
この日が来るのを
千年前から 待っていたのです
諸君は地球に痛い思いをさせながら
夢を壊した魔法の旅を
つづけつづけて何千年
つづけつづけて何千年
ようやく諸君も気がつきましたね
ようやく諸君も気がつきましたね
愛することがあたりまえなら
愛という字がいらないことに…
1999年 1999年
地球の辞書から LOVEという字がなくなった L・O・V・E LOVE
L・O・V・E LOVE
LOVEという字がなくなった
何なんだこの手塚治虫とか藤子・F・不二雄みてえなSF観は。人間の歴史を愛の歴史としながら、地球に痛い思いをさせた科学の進歩を「夢を壊した魔法の旅」と表現する。
文字や言葉によるコミュニケーションからの脱出という点では『2001年宇宙の旅』と遠くないテーマだ。そしてどちらも2001年という読みを大外ししたが、ピンク・レディーの方はもっともっともっと先になりそうだ。
7曲目「コマーシャル・ソング・メドレー」には度肝を抜かれる。自身のシングルヒットをCMに起用される際、替え歌をさせられたり、オリジナルのピンク・レディーソングを歌わされる訳だが、その尺のまま使うことで、売れたシングルがそのまま入りまくったベストアルバムになることを防いでいる。
ピンク・レディーが如何に社会に浸透していたかがこのメドレーでわかる上、前の曲と比較して俗っぽくなったこの高低差も気持ちいい。
そしてDJ的に曲を繋いでいるのではなく、ちゃんと「メドレー」なのがバンドファンにとって嬉しい。
8曲目「スーパーモンキー孫悟空」では多様なサウンドエフェクトを身に付けて宇宙っぽく、未来っぽくなっていくピンク・レディーが取れないロックンロールの匂いをむわりと嗅がせてくる。安直に打ち込みに頼らずとも未来ロックはできる!ジミヘンだって宇宙的なロックにおいてそうだったじゃないか!
しかもロックじゃなくてロックンロールにこだわるのがなんともかっこいい。
以上曲順完璧、内容も深く浅く広く狭く、正しく宇宙のような未来のようなピンク・レディーにしか出せない世界観のアルバムである。
というか、散々ニセ未来ニセ宇宙と言ってきたが、本物の未来や宇宙なんて表現しようがないものなのだ。元も子もないことを言うが。
ピンク・レディーはここでサウンド的にR&B、ロックンロールから進化を遂げた。
彼女たちの歌が描く未来には、どれだけ技術が進歩し、宇宙人との距離が縮んでも、愛だの恋だのに悩まされ、浮かれている人間たちの変わらない姿がある。そんな未来もいいじゃないか。そう納得させるほど楽曲のクオリティも宇宙レベルだ。
3.『ピンク・レディーの不思議な旅』(1979)
ピンク・レディーが音楽に乗って世界中を旅するというコンセプトアルバム。
曲間の繋ぎがないのに隣り合わせの国に行く訳ではなく、前作がある種「時間」を意識しつつ無視した作品だったのに対し、今回は「空間」を意識しつつ無視した作品で、その縦横無尽さとラブソングしか歌われていないという統一感が幻想的な雰囲気を醸し出している。
アルバムとして聴くことが前提なのに1曲1曲の展開も面白い。そして楽器はずっとかっこいい。最高じゃないか。
1曲目「オープニング・テーマ」ではエスニックで幻想的な音楽に合わせてピンク・レディーの二人のナレーションが入る。
あなたは旅をする時、どんな乗り物に乗りますか?私たちの乗り物はリズム、そしてメロディーです。
というフレーズが印象的だ。形のない乗り物に乗って旅に出るというグローバルな素晴らしいコンセプトを表している。
実質的な1曲目の2曲目は「リオの女王」日本の真裏から情熱的に始まる。メロディも一級品だし何よりドラムがずっとかっこよすぎる。サンバよりもファンクを感じるとかこの際どうでも良いのだ。
3曲目は「チャイナ・タウン」といきなり中国へ。昭和の日本人が向ける中華への眼差しがノスタルジックを刺激する、ご機嫌なのに湿り気のある良質な中華風歌謡。
4曲目「悲しき草原」でモンゴルへ移動する。ザクザクと刻まれる歪んだギターと冷たいドラムがかっこいい。もちろんメロディもかなりキャッチーで歌モノとしても優れており、この曲はとにかく展開が面白い。
5曲目は「空飛ぶじゅうたんエロチカ」、アラビアへ移る。インドとアラビアの違いを演出するのが下手なアーティストも多い中、しっかりアラビアンである。砂漠の昼の暑さと夜の涼しさが見事にエロティックな表現に集約され、中東の危険で魅力的な香りまでしてくるのだからほんとに大したものだ。
6曲目の「カルメン・シャワー」は個人的にこのアルバムの目玉だと思っている。超絶かっこいい攻撃的フラメンコ、情熱の国スペインに飛ぶ。ボーカル含め全パート絶品で、最後のオレ!まで全く隙がない盛り上がり所。
7曲目は「恋愛印象派」、アコーディオンの響きはお隣のフランスへ導く。正直言ってクオリティはそれまでより一段落ちる楽曲だが、脳を音楽旅行モードにシフトすれば気にならない。もちろん好みなので、これが好きな穏やかな方もいるだろう。
8曲目は「波乗りパイレーツ(USA吹込版)」で、アメリカや言うてるのにイントロはセックス・ピストルズの「God Save the Queen」をパロディするガバガバ加減。でもそんなところが最高にピンク・レディー。アメリカの西海岸ロサンゼルスの雰囲気は元よりピンク・レディーのルーツのロックンロールと相性抜群なのでノリノリである。
9曲目は砂塵の音と共に「ナイルの赤い月」、エジプトへ。アメリカにも広大な砂漠があるので、こういう繋ぎ方にこそ、このアルバムの幻想的な魅力がある。ずいぶん抽象的なエジプト加減で、単体として楽しめはしないが、アルバムの中では必須の役割を果たしている。
10曲目は「女は勝負する」でアメリカの東海岸、ニューヨークに行くのだが、9曲目の終わりの砂塵の音は、ここに移ったあとに砂漠の風でもあり、ビル風でもあったと気付かされる。曲としてのクオリティはあまり高いと感じず、ニューヨーク感があるわけでもない。ここは厳しく切り捨てさせてもらうが、古い都会観である。まあ、それを楽しめばいい話。
11曲目は「オリエンタル・フィーリング」。だんだんタイトルがモロになってきた。インドの情景として海辺を選択するのは面白いと感じた。それまではピンク・レディー感と世界音楽のバランスが均衡していたのに対し、ここではかなりピンク・レディー感が強まっており、旅の終わりを予感させるのも良い。楽曲的にも安心のクオリティ。
12曲目「南太平洋」。あのさあ、もうタイトル投げやり過ぎない?忙しかったんだろうけどさ。でも国を聞き手側に限定させない事で、各々の南国に重ねて欲しいとの願いがあるのかもしれない。これは好みの問題なので、強く言うことは出来ないが、私はなんせ80年代日本の雰囲気が苦手で、この曲からはそれが猛烈に香ってくる。薄味の松田聖子と思って楽しんで頂きたい。
13曲目「惑星ハネムーン」そして旅は宇宙のとある惑星へ。ロケット発射のカウントダウンは古びた表現だが、このハラハラは時代を問わないと思うので是非私も使っていきたい所だ。ニセ宇宙感はお手の物。サヨナラのサウンドで飾られたクライマックス。このアルバムを通してここに到達しなければこのお別れは味わえない。普通に良曲。
14曲目「エンディング・テーマ」なるほど、オープニングの作風を汲みながら繋がるようなエンディングがここで、
っておおぉおおおうおおうおおおおおい!!!日本わい!!!!
ニッポン!!!!!!!!わい!!!!!!
確かに歌謡の血が流れるピンク・レディーが全曲歌っているのでそれが日本なのだと言われればそれまでなのだが、せっかく恋は万国共通というテーマがあるのだから日本に帰ってきて欲しかった。。。これにモヤモヤしてしまい、アルバムとしての評価はある程度減点せざるを得ない。ニューヨークなんか行かんくて良かったから、、、まあでも、、、東京っぽいってムズいし、、、演歌は嫌だよな、、、。
とまあ全体の流れとしては繋がりもシームレスで美しく、前半は特にピンク・レディー感と世界音楽のバランスが良く、ピンク・レディーが世界音楽を表現するのでなく、世界音楽でピンク・レディーを表現しているような趣がある。自身のスタイルへの自信が溢れるかっこよさだ。
殺人的な多忙さの中にあるアイドルとは思えない意欲作で、そこは評価に値するし、日本の存在の欠如と所々の低クオリティには評価を下げざるを得ない。くぅ。
4.『ピンク・レディー・インUSA』(1979)
アメリカデビュー盤の日本版である。1.3.5曲目以外はどうやらカバーらしいが、こういう感じになると私は元ネタを知らないので、そういうの抜きで評価していきたい。吾輩はロックンローラーであるのだから。故に全曲は扱わない。
ピンク・レディーが主役じゃない曲が、、、あるんだもん、、、。
1曲目「KISS IN THE DARK」はかなりディスコを意識した作風で、生バンドではあるもののバチバチの四つ打ちで、全て英詩である。ビルボード37位にまで食い込んだらしい。私はこういう作風が好きでは無いが、英語は上手いと思うし、ブレイクがかっこいい事は確かだ。
2曲目「ダンシング・イン・ザ・ホール・オブ・ラブ」では歌姫的な仕事もこなせることに感心し、こういうジャンルでここまでギターが歪んでいるのも面白いと思う。
5曲目「ストレンジャーズ・ホエン・ウィー・キッス」はベースが頑張っているダンサブルナンバーで、サビの日本的な感性に、やっと安心感を覚えられる。
10曲目「ラブ・カウントダウン」、ラストを飾る1曲で、こういう作風が5曲目以降続いていたが、これは各楽器の工夫も良く、ピンク・レディーのバカらしさやアダルトな雰囲気が良い方向に作用しており、まだ聴く価値がある作品。
この挙げた曲数の少なさで色々察して頂けると思うが、やはりクオリティは高くない。
それに英詩のこういったジャンルを聴くんなら、音楽好きとしてはせめて本場のやつを聴きたくなってしまう。
いくら海外向けの作品とは言え、ピンク・レディーの良さを殺しているのだ。人間臭い70年代なりの歌唱法を封印して、トレンディーな80年代のやり方をやろうとしても、最初からトレンディーな奴らには敵わない。
まだ好き放題感があるシンディ・ローパーとか聴いちゃうよね。比較的近いとこなら。
5.『ウィー・アー・セクシー』(1979)
同じ年に何枚出すねん。作風も変えずに。
でもなんか前作よりクオリティが上がっている。どうやら初期の頃よりライブの編曲を担当してきた前田憲男氏が編曲を担当しているようで、良い意味で硬派になって帰って来た。
ただこれが最後でなくともよかった。
売れ過ぎたし、ファンは子どもばかり。反動がこうさせたのだろう。スターの宿命である。
アダルティな歌い方とピンク・レディー的に歌うことを使い分けて、前作より確実に生き生きしている。
2曲目「アイム・セクシー」ではやっと日本語が聴ける。この作風になってからドラムとベースの仕事量が逆転しているが、ベースに耳を傾ければ楽しめるのだよ。
3曲目「ウォーク・アウェイ・ルネ」ベースも勿論いいし、ピアノもメロも良い。この曲は良いから取り上げたのでは無い。この時期のピンク・レディーの問題点がわかりやすいから吊し上げる。歌がうますぎるのだ。歌が日本的に上手すぎるばかりに、洋楽の脱力感とミスマッチなのだ。ふぉ。
4曲目「ダンスに夢中」サビ以外日本詩。やはりアップテンポナンバー×日本語になるだけでピンク・レディーっぽくなる。この有頂天な感じもめちゃくちゃマッチしている。これは良曲。
5曲目「スター・ラブ」はオール英詩なのにリズムの面白さからか、全然嫌悪感を感じない。編曲者の偉大さを身に染みて感じることができる。方向性はズラさず、ピンク・レディーの非凡なボーカル能力を活かしている。見事だ。
そして1.6曲目にはメドレーを収録しているのだが、これが真面目にかっこいい。ディスコなのにディスコに行ききらず、ファンク要素でコーティングすることで生バンドの迫力、ピンク・レディーの迫力が全面に押し出され、黄金期とは違う魅力をやっとわからせてくれる。ここまでのクオリティーが出せるならこの路線で行ってもいいと思えるくらい。よくないけど。ロックンロールにこだわらなければならない理由もないし、当時のファンだったら涙で送り出せただろう。
そして7曲目「ラスト・ダンス」でこのアルバムは終わってしまうが、これは正直お粗末。ラストダンスで終幕するのはBLANKEY JET CITYと同じなのでまあよしとするか!(?)
さあ、日本を揺るがすブームを起こし続けたあと、異国を夢みて、ふるさとの人に白い目を向けられ、最後は少しの希望が見えて終わる。日本的な感性に刺さる美しいストーリーではないだろうか。ただオリジナルアルバムでは呆気なく終わる黄金期だが、最初も言った通り、彼女たちはシングルが爆売れしたアイドル。おすすめのベストを挙げよう。挙げさせてくれ。
おすすめベストその1
『ピンク・レディー「阿久悠 作品集」』
初心者にはまずこれ。ヒットは全部入ってるし、これをサラッと聴いとくだけで、若者ならこれで親世代の方々とコミュニケーション計れるくらい好きになれると思う。そしてさらに好きになった人には、、、
おすすめベストその2
『GOLDEN☆BEST Complete Single Collection PINK LADY』
これ聴いてください。ピンク・レディーはシングルのB面にこそ、神曲があります。ほんと全アルバムレビューとかやってる場合じゃないんですマジで。「らしさ」を掴む為にもシングルヒットを押さえとくのは重要です。だから、
またピンク・レディーを好きになって、この記事を読みに来てくださいね!では!!
俺は「透明人間」が一番好き!
あなたのお気に入りも教えて!
他の全アルバムレビューもオススメ中だヨ!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?