エビデンス
医療では
「エビデンス・ベースド・メディスン(EBM)」
が推奨されている。
エビデンスとは
「根拠」や「証拠」という意味である。
ビジネス分野でも使われているようだ。
EBMとは、
「根拠に基づく医療」であり、
勘や経験に基づくものではない。
医療におけるエビデンスとは、
大規模な研究の結果から決定される。
いわゆる「ランダム化比較試験(RCT)」だ。
これは、ある薬が効くかどうかを調べたい時に、
A群とB群に分けて、
どちらかにはその薬を、
もう一方には益にも害にもならない薬(プラセボ)
もしくは既存の薬を与える。
その結果を比べて、
統計学的に有意な差がでるかどうかをみる。
いくつかのRCTを統合して検証したものは
「システマティック・レビュー」といって、
さらに信頼できるエビデンスになる。
つまり医療でいうエビデンスは、
「多くの人に有効である可能性が高い治療の根拠」
といえる。
ガイドラインで推奨されているのは
ちゃんとエビデンスのある治療であり、
多くの医師がガイドラインを根拠に
診療を行っている。
若いうちは、
医師としての基礎を固めるために、
ガイドラインを元に診療を行うことが必要だろう。
いきなり自己流の治療を行うのは
ただのヤブ医者である。
ただ、ある程度経験を積むと、
エビデンスが全てではないことがわかってくる。
「エビデンスはないけどなぜかこれで上手くいく」
ということが増えてくる。
特に緩和ケアの分野では顕著だ。
なぜか。
RCTを組みにくいからだ。
緩和医療は、
苦痛を取り除くことを主な目的としている。
苦しい人、痛がっている人に
プラセボかもしれない薬を飲ませることができるか?
既存の薬との比較はできるだろうが
プラセボを用いた研究は
倫理的に許されるものではないだろう。
だから緩和医療では
エビデンスの集積がなかなか進まず、
公開されているエキスパートの経験が
治療選択の根拠になることも多い。
エビデンスに基づく標準治療は
もちろん大事である。
しかし
「エビデンスがない治療は効かない」
とは決して言えない。
緩和の分野に限らず、
RCT を組めないとエビデンスが出せない。
さらにRCTでは、
目的の介入以外は
できるだけ同じ条件にする必要がある。
たとえば、
ビタミン剤を代表としたサプリメント。
交絡因子という、
結果に影響を与える他の要素が多すぎる。
マルチビタミンなんかは
結構健康に大事だと思うので
自分も飲んでいるが、
エビデンスはない。
「紅麹」サプリが問題となっている。
紅麹にはエビデンスはあるのか。
どうやら基礎研究で
コレステロールを下げる効果がある成分が
発見されているようだ。
しかしこれはエビデンスとは言えない。
もしこのサプリでRCTをしたなら
腎機能障害の副作用が
その時点で明らかになって
ここまで大きな問題にならなかったかもしれない。
他にも多くのエビデンスのない商品が
販売されている。
今後も同じような問題が起きる
商品がでてくるかもしれない。
中には本当に身体にいい商品もあると思うが、
悪い商品もあるだろう。
もし身体にあまりよくない商品だとしても、
摂取量が少量であれば
健康被害は防げる。
普段の食事もそうだが、
バランスよくいろいろな食材を食べることが
リスク少なく栄養を満遍なく摂れて
健康な身体づくりにつながると考えている。
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