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ザ・ドキュメント・オブ・共テ国語2024第3回(評論)~大学受験生応援コラム1月

曲者? 問4を解きます


’** 0 はじめに ***

当コラムに目を留めていただき、ありがとうございます。大学受験国語の勉強に資する内容提供を目的とした記事を書いています。

過日行われた共通テストの国語の問題を、講師はこんなふうに解くという一つのサンプルとして書き綴っています。大問1評論文もそろそろ佳境です。

’** 1 問4を解く前に ***

今日は問5の選択肢④を読むところからスタートしよう。④はもう正しいことが分かっている選択肢だ。ならば利用しない手はない。これを手掛かりにして本文最後の構成を予め把握しておくと読解が楽になるだろう。

④によれば、9段落に問題点が指摘されるがそれは10段落で簡潔に言い換えられ、そこから筆者の危惧へと話が進むらしい。これを頭に置きつつ、第9段落以降を読んでいきましょう(解き終えた後で思ったが、この作業を最初にやったおかげで結構楽ができました)。

’** 2 問4を解く ***

ではまず、9段落。ここに最後の傍線部Cがある。Cの前後と設問を見ようか。音楽や芸術という概念を自明の前提として始まる議論については、Cなおさら警戒し周到に望まなくてはいけない。それは何故か。

ということは、今の「音楽や芸術という概念を自明の前提として」議論を始めてしまうことが、先の選択肢④で言う「問題点」なのだろう。だって、警戒すべしと言っているのだから。

そしてそれは10段落で言い換えられるのだった。10段落冒頭はこうだ。音楽や芸術について、

最初から「ある」ものではなく、「なる」ものである

だとすれば、傍線部Cの理由は前提とされた音楽や芸術とは何かというその概念自体が固定的なものではなく変容するはずのものだから、だろう。それらの概念は「自明」でも何でもないし、「なる」もの=変容し続けるはずのものなのだ。それを、「音楽や芸術とはこういうものだ」と決めつけて議論をしても前提が間違っている以上、無意味なディスカッションになってしまう。

Cの後の一文にも概念は「変容」すると書かれているし、第10段落の第2文以降は、議論などである概念(定義のようなものだと思って支障はない)が繰り返し用いられると「本質化」(定義が固定化するというくらいの意味に取って支障なし)し、果てはおかしなグローバリズムに利用されるとある。これが先の選択肢④で言う「危惧」だな。

さて選択肢を見ましょう。問4の選択肢はどれも同じ文章構造をしている。


(前)➡「音楽」や「芸術」は、…【第9段落傍線部Cの前の内容】…概念である。

(中)➡その過程を無視して概念を自明のものとしてしまうと、【第9段落第3文、Cの直前までの言い換え、これが問題点だった】

(後)➡…【(中)が問題点なのだから、ここは「懸念」であるはず 】…から。

今書いた「懸念」だけに絞って選択肢を見ると、答えの候補は②と⑤。ただし、②は単にグローバリズムのことしか書かれていないが、⑤はグローバリズムはもちろんのこと、その前の定義の固定化=本質化にも触れている。⑤の最後の「普遍的な価値を持つものとして機能」する、というのは、音楽や芸術の特定の定義がどこでも通用するものとしてどこででも適用されるというくらいの意味で、これがグローバリズムの言い換えになる。

念のために②と⑤の(前)を本文と照らし合わせても、②は第9段落前半の内容とは異なる。一方、⑤は第9段落前半の内容を踏まえていると言っていいし、問6で問題になる「鑑賞」や問3で問われた「まなざし」に触れているところも評価できる。これで答えは⑤でいいだろう。

あ〜しかし、これは少々時間を喰ったな。試験場では答えが割れたかもしれない問題だ。

解いてみて思うのは、やはり問5の選択肢④を利用すべきだというのが1点。

もう一つは、本問4の選択肢の文構造と本文の対応を見抜くこと。

そして以上二つをうまく組み合わせること。★で書いた「問題点」「危惧」が、本文及び選択肢のどの部分か見極めること。

今日はここまで。次回で評論を終わらせよう。


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