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AI流行ってるけど、あなたの周りはどうなのか

2010年代に入ってディープラーニングが台頭し、第3次AIブームと呼ばれる時代に突入しました。世の中「AIに仕事を奪われる」とか、「人間はやることがなくなる」とか色々言われていますが、記事を読まれているあなたの周りはどうでしょうか?
AIは流行っていると言われているけれど、実際はどうなのか。私の身の回りのことと、現行技術ついて触れながら考えてみます。

身の回りのAI

普段生活していく中で、私自身はAI触る機会が多いと思います。現在はAIのインストラクターをメインにお仕事をしているのですが、仕事の種類や内容は別として、私はよくアマゾンで買い物をすることがあります。アマゾンや楽天といった、いわゆるECサイトと呼ばれる、電子決済ができるウェブサイトでは、ユーザーの購入履歴などに応じて、次に買ってくれそうな商品を自動で検索して推薦をしてくれます。このような機能を「レコメンデーション」と言います。マーケティングなどをされている方ならご存知でしょう。アマゾンが提供するサービスのほとんどにこのレコメンデーション機能が使われているのではないかと思います。
 また、電子決済のアプリなどで顔写真を登録しておいて、個人識別のために顔認証をするといったこともできたりします。スマートフォンにインストールできるアプリの大多数にすでに何かしらのAI技術は使われているのではないかと思います。さらに、Googleが開発したAndroidスマートフォン「Pixel 6」シリーズには、同社が独自に開発したチップセット「Tensor」が搭載されています。このチップ自体にAIの機能が載っていて、オフラインでもAI翻訳などの機能が使えたりします。
気になる方は覗いてみてください↓
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病院ではどうだろう

目に見えて体感できる範囲で、あるいは、特定の人しか実感できない場所・分野でAIはすでに普及しています。では病院ではどうでしょうか?というのも、私は国家資格を持った医療専門職として病院で仕事をしていました。直に患者さんと接したり、医師や看護師、その他の医療専門職と関わってきましたが。そんな私が実際に経験から、病院では先端IT技術に触れる機会はほぼなかった、といえます。あくまでも個人的な感想や経験なので、大学病院や大きな病院で働く方はその限りではないと思います。ただ、私もいわゆる大病院と呼ばれる医療機関で働いた経験もありますので、広い意味で病院・診療所と呼ばれる場所の実情は知っているつもりです。ただ、2022年現在、特定分野に限ってはすでにAIを活用した診療は始まっている部分もあると考えています。
 例えば、東大発医療ベンチャー企業がAI画像診断支援技術をすでにサービスとしてローンチしています。ただし、活用できる医療機関は大学病院や国公立の基幹病院などに限られているのが現状だと思います。他にも、AI技術を使って内視鏡からがん細胞を発見するサービスを展開している医療ベンチャーもあり、実用段階に入っています。このような診断支援サービスは経済産業省が推進する「戦略的基盤技術高度化支援事業」として扱われているものもあります。加えて、細胞の立体構造を解析したり、ゲノム配列の分析をいこなうバイオインフォマティクスと呼ばれる分野の研究でもAI技術は使われています。
ざっくり言えば、画像診断支援と薬の研究開発分野ではAIは結構使われている、という感じでしょうか。

引用:理化学研究所

だた、一般の患者さんがそうした技術を体感する、もしくは、AI技術を利用した診療をしている病院で診てもらっていると感じることはまだあまりないかもしれませんね。

分厚い倫理的問題と人の意識の壁

医療分野の先端IT技術の技術開発は、一般社会のサービスに比べて5年程度の遅れがあるように感じます。医療現場でAIを使った診断や業務の効率化を行うときに大きな問題になるのが、倫理観と患者意識の問題ではないかと思います。AI技術を開発するには膨大な量のデータが必要なのですが、開発のための研究に患者さんのデータを使う場合は、さまざまな倫理的ハードルを越える必要があり、研究開発・AIの導入両面において高いハードルになります。大量の治療データを取得する場合には、個人情報や秘密情報の管理が問題になります。最近では少しづつデータ活用の法整備やガイドラインが整いつつあり、なんとかクリアできる要素になってきたとは思いますが、スピードは決して早いとは言えません。そして、患者さんの心理的なハードルも結構越えることは大変なのかなあ、と個人的には感じています。ご高齢の方は理解不能で時代についていくことも大変でしょう。ただ、高齢者の医療・介護に先端技術が導入されことで、働く側、サービスを受ける側の双方へのメリットはとても大きいです。そこで私が重要だと感じることは、「人間と機械の差を感じないこと」だと思っています。

機械と人間の区別がなくなると、人はAIを受け入れる?

飲食店の店員や、一緒に住む人がアンドロイドだったら、きっと寂しいとか、やっぱり人間を相手にしたいとか思うでしょうか。私は、日本人は他国の文化と比較して、ロボットやアンドロイドを受け入れやすい民族だと考えています。
例えば、お腹が痛いので、病院に電話して症状を伝えると、優しく受け答えしてくれて、予約もしてくれた。担当者は誰かはわからないけど、いい病院だなと思って電話を切ります。病院に行き受付に遠隔画像のお姉さんが丁寧な対応をしてくれる。感染症対策だと思うけど、受付も画像だなんて進んだ病院だな、なんて思いながら無事診療を終え帰宅する。実はこのお姉さんが人間ではなく、高精度なチャットボットだった、なんて未来はすぐに来る気が私はしています。そして、日本人はこれを欧米人よりも比較的素直に受け入れられるのかなとも思っています。何しろ、ドラえもんや鉄腕アトムが生まれた国なのですから。
「人間と機械の差を感じないこと」とは、コミュニケートする相手が機械か人間かなんて関係がなくなり、存在自体が尊いものになる。そのような感覚によって患者さんの心理的なハードルが無くなってしまうことと言えるんじゃないでしょうか。

これから必要なこととは?

長々と書いてしまいましたが、AI技術の診療への適用は確実に医療の分野でも特定の診療分野ではありますが進んでいます。カルテとか診療情報の扱いや事務作業の効率化という観点で言えば、診療支援よりももっと普及していると思います。ただし、今の段階でA Iを使ったサービスを導入したり、新しく作ろうとすると、金銭的な面で負担が大きいのかなと感じます。診療報酬の改定は定期的に行われていて、医療機関には厳しい改定内容も決して少なくはありません。小さなクリニックではそんなことにまで予算をかけられないのが現状だと思います。しかし、AIの普及がもっと進み一般的なサービスになってくれば、予算を回すことも可能になってくると思います。そのとき大切なことは、「AIを使いこなせること」、「カスタマイズができる」、「簡単なメンテナンスができる」ことだと思います。

AI教育のこれからのあり方への個人的感想

私の専門分野である医療についてお伝えしてきましたが、一般の企業に勤める方にとっても、「AIを使いこなせること」、「カスタマイズができる」、「簡単なメンテナンスができる」というのは大切だと思います。というのも、2022年の8月に画像生成AIである「Stable Diffusion」というAIモデルがリリースされました。Stable Diffusionはオープンソースで誰でも無料で利用することができるモデルです。このAIに英語の文を入力すると、勝手に絵を描いてくれるAIです。さらに、英語の文自体を生成してくれるAIも登場しており、画像だけではなく、画像の元になる言葉自体もA Iが生成する時代に突入しました。しかも、Stable Diffusionを動かすのにそれほど大きなマシンリソースを必要とはしないので、誰でも気軽に簡単に利用することが可能です。ちなみに、多少のITリテラシーは必要かと思いますが。いずれにしても、プログラミングコードを書くことなく、簡単に使うことができるのです。そのような高性能な「ノーコードAI」が登場したことで、AIを使いこなすことによって、時代の流れにうまく乗れるような時代に静かに突入したように感じています。Stable Diffusionのようなモデルを「拡散モデル」と呼びます。そうした背景から、プログラミングの能力よりも「AIを使いこなせること」、「カスタマイズができる」、「簡単なメンテナンスができる」というスキルと情報収集力を育てるAI教育が重要なんじゃないかと最近考えています。

「着物を着た少女が窓際に座っている」という文から生成した画像

AIのプログラミングを指導スクールも結構増えてきましたが、優秀なモデルがオープンソースで発表されるたびに、AIについて理論をしっかり理解したり、プログラミングをゼロから学ぶということもそのうち必要なくなるのかなと感じる今日この頃です。

試される適応力

ノーコードで動かせる無料で高性能なAIが使えるなら、絶対に使わない手はないでしょう。そして、拡散モデルが登場したことで、進化のスピードはさらに加速することが予測されます。私のバックグラウンドである医療の世界も、それ以外の皆さんが従事されている分野でも、キャチアップよりも上手く流されて、使いこなすことで時代に取り残されない人材になっていくことはできるのではないでしょうか。そうすれば、AIとか機械を相手にすることへの抵抗感は下がっていくのではないでしょか。
これからきっと自然とデジタルの区別がつかない世界もそう遠くないうちに来るはずです。その話については別の記事で書きたいと思います。
今回は私の身の回りのAIについて記事を書きましたが、皆さんのもの周りではどうでしょう。普段の暮らしの中で、AI技術やその使われ方について考えてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

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