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ジョブズに取り憑いたバイアス


少し古い話ですが、アップル創業者ジョブズの死因は膵癌と発表されています。

しかし、56歳で早世した経過を遡ってみると、理由は癌を発見しておきながら手術して切除しなかったことが原因と分かりました。

自分は大丈夫と思う正常バイアスの存在していたのです。中高年の危機を引き起こす、誰でも取り憑かれる思い込みです。

バイアスが、手術を拒み続けたのです。その間に癌が肝臓など他の臓器へ転移してしまったのです。

最後の言葉は「私の人生は成功の典型的な縮図に見えるだろう。しかし、仕事を除くと喜びの少ない人生だった。…もっと大切な何か他のこと。それは人間関係や、芸術や、または若い頃の夢かも知れない。私が持って行けるものは愛情に溢れた思いだけ。…それと未だ読み終えていない健康な生活を送る本がある」でした。

私生児で苦学して大富豪となっていながら、仕事に没頭して、人としての喜びの少ない人生となってしまったことを後悔し、死んで持っていけるのは思い出だけといっています。

バイアスが作用していては、共感や同情のできる親愛の絆はできません。

例えば、親は我が子が立派に育つよう期待してガミガミ指示や助言をします。子どもは自分固有の考えがあるので衝突し、互いのいがみ合う感情が思考脳を覆いますので話合いになりません。

人のコミュニケーションギャップは、互いのバイアスを譲らないために起きる衝突です。

ジョブズは、ホモサピエンスとして発達した強みの大脳新皮質を使った交流や繋がりが少ないので、喜びで充たされない寂しさを本能的に感じていたのです。

彫刻の「考える人」を造ったロダンは、「自然は神様の造った最高の芸術だ」といっています。ジョブズは、自然や芸術に触れる機会が少なくて、ストレスを癒すことができなかったのです。

「健康な生活を送る本」を読み終えていない、の言葉は、仕事関係の読書や研究に多忙で、健康分野の関心が手薄になって悪循環となっていたのです。

バイアスを取り除く方法は、自然を満喫すること、人との交流、読書によってホモサピエンスの強みである大脳新皮質を刺激することが人間の寿命を長くします。芸術家がその好例です。

注意すべきこととして、言葉を使う弱点として話のできる範囲が限定的です。友人の数も30歳前後をピークに、加齢に伴い比例して少なくなるという、進化心理学者ロビン・ダンバーのデータがあります。
 
長生きのためには、コミュニティへ参加して価値観を共有し、大脳新皮質を互いに活性化して、社会奉仕することで生きる意味を感じることです。
 
思い込みの塊であるバイアスは人流を狭くして、人の命を縮めます。

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