見出し画像

①起きない父親

うちは父親、母親、私、弟の4人家族。

うちの家には暗黙のルールがあった。
父親が起きないことを、外に漏らさないこと。
「恥ずかしいから外で言いなや」と母親に言われ続け、自分の父親は恥ずかしいんだと刷り込まれて育った。


父親はサラリーマンなのに、朝起きない人だった。
起こしても起きない。
揺さぶっても叩いても無理やり体を起こしても、何しても起きない。
挙句の果てには、会社の人が起こしにくる。
それでも起きない。

朝が苦手、とかいうんじゃない。
会社に行きたくない。それだけ。
ゴルフの日は早朝でも起こさなくても起きるし、会社はサボっといて夕方から飲み会だけ行くこともあった。
たしかに恥ずかしい。

朝起きないでどうするかというと、寝たフリこいて会社に電話するでもなくやり過ごし、昼になって起きてくる。
母親は会社からかかってきた電話にひたすら謝っている。
母親も母親で、自分からは電話しない。

そしてのんびり母親に出されたものを食べながら、新聞を読む。
体調が悪いとか、そういうことでも無い。
夜になるとしっかり晩ごはんも食べ、普通に寝る。

さて次の日は起きるのか、どうなのか…
毎日毎日、母親も私もそればかり考えてた。

子供の頃はいつも「お父さんが寝てるから静かにしなさい!」と母親に怒られていた。
寝させておけば、次の日は起きてくれるかと思っていたようだ。どうせ起きないのに。

月曜日はたいてい行かない。
火曜日は、行けば万歳。
行かなければ、たいていそのまま1週間行かない。
そのまま2〜3ヶ月、会社に行かない、ということが年に2、3回ある。

そして何を思ったか、ある日急に会社に行く。
数ヶ月も無断欠勤しておいて、よく行けるなと自分の親ながらどんな神経してるんだろうと不思議で仕方なかった。
行くのは、たいてい飲み会がある日。

何かしらの病気だったのかもしれないけど、精神疾患なら飲み会とかゴルフには行けないんじゃないのかな。
無断欠勤してるのを知ってる会社の人と会う時でも意気揚々と出かけていくから、やっぱりどこかおかしかったんだろう。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?