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あまり好かれない店長の話

私は今年に入ってから、駅の中のケーキ屋さんのアルバイトを始めた。バイト先の人達はみんなとっても優しくて、仕事を一つ一つ丁寧に教えてくれるし、たくさんお話してくれる。おかげで最近は仕事にも慣れて、短時間だけどお店を1人で任されることも増えてきたし、バイト先のみんなとお話する時間が楽しみになっている。
その中で唯一まだきちんとお話できてない人がいる。店長である。店長は、私が入る2ヶ月くらい前に入ってきたらしい。少し大柄で、とても真面目なおじさんだ。うちのキャストは女性ばかりだから、馴染めていないのが目に見えてわかる。仕事を覚えるのが遅いらしく、ベテランの先輩たちが悪く言っているのもよく聞く。
店長は真面目で、正直話しかけづらい。あとどうしてかは分からないけど、なんかダサい。そんな店長だけど、私は結構好きだ。

バイトを始めて1ヶ月経ったある日、最近入ったばかりの同期と締め作業をすることになったのだが、どうやっても在庫の数が合わない。とうとう困って、休日の店長にLINEした。すると店長は、わざわざお店に電話をかけてくれて、色んなアドバイスをしながら一緒に数えてくれた。結局、見本用の空箱まで数に入れていたことがわかり、お礼を伝えて電話を切ろうとすると、「締め作業が終わるまでいつでも連絡返せるようにしておくので、困ったことがあれば連絡ください。」と言ってくれたのだ。それから何度か忘れそうなポイントを指摘してくれて、無事に締め作業を終えた。再度お礼を伝えると、「自分もそうですが慣れるまで大変ですよね。大丈夫です。一緒に頑張りましょう。」と返信をくれたのだ。嬉しかった。それだけでなく、幾度となく店長は新人の私のミスを庇ってくれたり、励ましてくれたりしている。おかげで私は失敗を恐れずに色んな仕事ができている。前のバイト先では店長に対する恐怖で押し潰されそうだった私にとって、今の店長の存在はとてもありがたい。

店長のような真っ直ぐで真面目な人は、きっとこれまで数え切れないほどに損をする経験をし、理不尽に怒られ、辛い想いもしてきたんだろう。現に今も言葉にせずとも周りのキャストからはやんわりと嫌がられている。でも、私はやっぱりそんな店長を尊敬している。店長みたいな人がちゃんと報われる世の中になったらいいなと思う。

私もできるだけまっすぐに生きていたい。

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