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<本と映画の答え合わせ>第14回「悪童日記」

【本】
〇タイトル:悪童日記
〇作者:アゴタ・クリストフ
〇感想:
 ・最後のシーンが予測を遥かに上回り恐れ入った
 ・双子には感情がない、つまり、感情を持たないように自分たちで鍛え上げたと言える。これも戦時下およびその後の不安定期における共産圏の小国を生き抜くために必要とされる生き方、逞しさと納得した
 ・戦争がもたらす現実、例えば、幼いうちから目の当たりにする親族の死、死と隣り合わせの日々そして無秩序な日常社会などが赤裸々に描き出されている
 ・現在生じている戦争、紛争であるが報道されているのは表面的なものにとどまり、現地では実際にこのようなことが起こりうる、起きていると感じる
〇評価:◎

【映画】
〇悪童日記(2013年)
〇監督:ヤーノシュ・シャース監督
〇感想:
 ・原作を忠実に再現
 ・共産圏の暗いイメージが映像を通してリアルに伝わる
 ・ドイツ兵が去り代わりにソビエト兵が来ても決して彼らは味方ではない(助けてくれるとは限らない)。現在のロシアによるウクライナ侵攻のルーツを見た気がする
 ・日本は島国であり他国と陸地で繋がっていないことからこのように次から次へと隣の大国から攻め込まれることはない。地理的、歴史的背景が積み重なって民族の特徴に影響を与え、形成していくことをあらためて認識した
 ・このような地政学リスクはこれからも0にはできないものである。防ぐためには独裁者の出現を防ぐ、指導者に対する権力集中を排除する体制を築くしかないのではないか
〇評価:◎

【総合】
〇感想:
 ・過酷な環境下にあって生き残るためにはこの双子のように残忍さ、冷酷さも必然的に身につく、優しさだけでは決して生き残れないとつくづく感じた。
 ・その後の双子がどうなったのか期待して「ふたりの証拠」、「第三の嘘」を読んだが、冗長、複雑であった。本作品で受けたような簡潔で分りやすく、かつ、衝撃的なシーンは見受けられなかった
 ・本作品の作者同様ミラン・クンデラもヨーロッパにおける小国出身でともに抑圧からの解放が作品の根底にあると感じる。一方で同じく素晴らしい文学作品が多いロシアの作家には他国からの抑圧はないものの自国社会からの抑圧は散見される。作家の出身、作品の舞台がいつ、どこの国かを意識することでより多くのことが見えてくる
 ・人間である以上、「歴史は繰り返す」について否めないと感じる。AIのように蓄積し続ける、同期できるわけではなく、人間は「死」によって人生で得た知識、経験は途絶え、新たな「生」は0から始まるのであるから


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