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『杉浦康平のアジアンデザイン』 杉浦康平

978-4896294194

美大生なら一度は手にする耳にする目にする杉浦康平。今まで体系的に冷静に分析されてこなかったし、本人が過去を語るのは異例だった。本書を通じて、改めて杉浦の仕事が多岐に渡り、言葉にまとめるのが難しいと感じる。

「神戸芸術工科大学アジアンデザイン研究所の元所長である杉浦康平名誉教授は、誰もが知る戦後日本を代表するグラフィックデザイナーである。」(p12)

「特に1969年から1992年の間に開催された国際交流基金主催によるアジア各地の伝統文化・民族芸能の紹介を目的とするイベント・プロジェクトは、杉浦がデザインの枠を超えて深く関わったものである。これらの企画の進行の渦中において、コンセプトの構想からデザイン実務までを通して、本書におけるテーマ「アジアンデザイン」の概念が、確立されていく重要な契機となった。「杉浦デザイン」の全体像を検討する上で、欠かせない多くの重要なデザインアイテムが制作された。」(p13-14)

「音楽を視覚化するということを、LPが初めて可能にした。だから私はLPを買ってくると、まずプレイヤーに乗せる前に、LPの盤面をじーっと眺める。すると、溝のゆらぎが紡ぎだす光沢の変化から音が聞こえてくるように感じられる。あ、この盤のキラキラした溝のテカリは、これまでにない艶やかな響きが聞けるのではないか…とか、これはもう昔の録音でにぶい光の連続だから、眠気を誘うような過去の音ではないか…、そんなこともすぐにわかるんです。」(p26)

「ですから日本の現代音楽史にとっては、秋山邦晴の実像復元というテーマが大事なキーポイントになると思うのですが、もう誰もそれをできる人がいませんね。」(p27)

「私の場合、デザイン作業で1番使っていた素材は何かというと、「トレーシングペーパー」だった。トレーシングペーパーの上に色鉛筆で黄色を塗ったり、赤を塗ったり、青を塗ったりしたものを次つぎに重ねて、こんな風にずれたり重なったりすると面白い効果が出るな…と試してゆく。要するに印刷での分色版に似た操作を、トレーシングペーパーと自分の手で作っていた。」(p30-31)

「プロセスの途中、プロセスのただ中に、「別の手法」を見つけだした。」(p31)

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