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先延ばしによって失うもの

ものごとは、先延ばしにするとろくなことにならない。

これは、私が今まで生きてきた中で覚った一つの真理だ。

私は奥歯が1本欠損している。
20代の頃、うっかり取れてしまった詰め物をそのまま放置してしまったのだ。
すぐに歯科に行けば、簡単に治ったはず。
ところが、歯科に行くのが面倒くさくずるずると時間が経過して、
最終的に抜歯することになってしまった。
そして、抜歯をするまでの長いあいだ、
食事をするたびに歯にものが挟まるという、不快な思いをし続けていた。

先延ばしにしたがために、大切な歯を1本失うことになったし、
長い間気持ちよく食事をするという機会も損失してしまった。
そして今でもずっと義歯は磨きづらい……。

先延ばしの代償は、あまりに大きかった。

そんな感じで、長らく私はものごとを先延ばしにする癖があった。
学生時代の夏休みの宿題は、8月末まで取りかかれなかった。
社会人になってからも、提出物は締切日まで出すことができなかった。
支払いは期限ギリギリに支払っていた。
一度期限までに支払うことができず、延滞利息を払う羽目になった。
返信が必要な書類は、なぜかわからないけどずっとテーブルの上にあった。
返信を促す督促が来たこともある。
クリーニングに出すのを先延ばしにして、
シミが取れなくなってしまったこともある。

その頃の私は、それをダメだと思っていなかった。
だからもちろん、改善したいという発想もなかった。

けれども、小さいと侮っていた問題は、時間経過とともに肥大化していく。
そして、手をつけられない程になってしまうことがある。

かつて仕事で親しくさせていただいていた、なんでもすぐやる人がいた。
その人は、とにかく仕事の取り掛かりが早かった。
当時私は保険会社に勤務していて、
保険加入希望者を営業担当者に割り振りをするという業務をしていた。
営業担当者は、本当にさまざまなタイプの人がいた。
割り振りをするや、すぐに客と連絡を取って動く人。
客からまだ担当者が来ないとクレームがあるまで動かない人。
当然、割り振りをするこちら側としては、
すぐに動いてくれる人を頼るようになる。
そのため、その人は信頼を得て依頼は常に多かった。

ある時、先延ばしにしない秘訣を聞いてみたことがある。
答えは、
「気になることは一刻も早く頭から排除した方が、
さっぱりして気分がいいでしょ」
モヤモヤと、あれやらないと。とか、面倒くさいな。とか
そんな思考でいる時は、間違いなく気分は良くない。
そんな気分でいる時に、いいことなんて起こるわけがない。
その機会損失こそがいちばんもったいないものだから、と教えてくれた。
あ、と腑に落ちた。
あの虫歯がまさにそうだ、本当にそのとおりだ。

それ以来、私は先延ばしをしなくなった。
先延ばしをしないことの効果はあまりにも大きい。
まず、さっさと終わらせることによって、自分自身がリラックスできる。
ぽっかりと空いた時間や空間には、必ず新しい何かが入ってくる。
そして、期限より早めにするということは、
他人からの大きな信頼をも得ることができる。

あんなにしつこい先延ばし癖を克服することができた。
そして私は今、なにごとも光の速さで行うことに、とても味をしめている。


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