未来の発明

夏が次第に夏らしくなってきて、まるで天使だった。きみとふたり。目が眩む坂道をしりとりをして歩いた。私は国名ばかりあげてきみを困らせた。しりとり。リス。スリランカ民主社会主義共和国。くま。マリ共和国。くるま。マダガスカル共和国。くすり。リトアニア共和国。もうやめたときみが根をあげた時だった。水たまりに青空が映り込み雲が静かに流れていた。クラクションは徐々に大きく近づいてきて一瞬にして君を連れ去った。水たまりが割れた。水はいっせいに逃げた。空は四散した。すべて一瞬のことなのに私には永遠に感じられた。

またある時は、きみと空を飛ぶ夢を見た。同じ夢を見たことをきみはとても喜んでいた。時間を手に入れた時、私たちは野蛮を脱ぎ捨てるように未来を知った。私たちは三宮の煤けた中華料理屋にいた。私は坦々麺とチャーハンのセット。きみはピリ辛鶏肉炒め定食。片言の日本語を話す店主が一人で切り盛りしていて、なかなか料理が来なかった。その合間に髪の毛座について話した。星座なんて繋げたらみんな髪の毛だよときみは言った。古代の人は暇だったのかな?ちがうね、暇を暇と思う暇さえなかったんだよ。星空を夢中で見上げてしまうほどに。そんな会話をした気がする。坦々麺は冷めていた。麺は少し伸びていた。でも、美味しかった。きみが残した分の鶏肉炒めも美味しかった。何もかも美味しくて、私たちは会計を済ませたあとゆっくりとステージの中央へ進んだ。マイクは既に用意されていた。会場は地下にある。観客が跳ねると、詳しいことは分からないが建物の構造上の都合で向かいにある寿司屋が揺れるらしい。だから、ジャンプ禁止。してもみんな飛んだり跳ねたり。私たちもむちゃくちゃに煽ったり、好き放題した。そうして、その日私たちは同じ夢を見たのだ。

やがて
私はきみを
手放す時が来ると
知っていながら 目が
し みて い る
なみ だ がでてく る
強いて言うなら
強いて言う必要はないが
あえて強いて言うなら
私たちが見上げた空は
ながいながい時間の無駄で
未来のことを思う
限られた余暇だった
星がどこにあるか
わからなかったけれど
しりとりをしよう
国名禁止の

ファンサはわすれずにほどよく堕落していく身体
乱雑に並んだ生きたままものになるものもいる
なのるなもないくせに
首輪の仕方をわすれた奴隷だと
きみは言ったんだ

もう何もかももどれない

腐らないようにしないと

にどとたちあがれない

夏が次第に夏らしくなってきて、まるで天使だった。きみとふたり空を飛ぶ夢の中。二人で墜落を試みた。翼を脱ぎ捨てることが出来ず、かなしいやらなさけないやらわらえてきて、ワイワイガヤガヤしているうちに朝がきて私たちを引き裂いたクラクションが徐々に大きくなって水たまりには空が(きれい

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