夜、海のカーニバル

夜、海のカーニバル、
満潮の、漣ひとつ、満潮の、
宵闇の、浅瀬で拾う貝殻の、
銀河を意味する巻貝の模様、
萌えいづる大海に沈むもの、
厳選された深海の聖遺物の、
粗野で、臍を噛む癖のある、
腐りゆくクジラのはらわた、
ジャンケンでチョキをだす、
メンダコの揺れている歯舌、
拒絶、女の形をした、拒絶、
途絶えた両目にあいた穴の、
逆さまの真理の誤謬を好み、
夜、海のカーニバル、

夜、海のカーニバル、誰も知らない水死体を啄む海の幸、その海の幸を食べる人達が、また水死体となり、海へかえる時、夜、海のカーニバル、灯台の灯りが届かない場所にいる。

2024年3月3日
雛祭り、ちらし寿司に海鮮を乗せるか。海老だけを乗せることにする。冷凍の海老。満潮の、漣ひとつ、満潮の、宵闇の、名前すらない宵闇の、冷凍庫の暗闇に潜む、死してなお、届く、轟く、驚くほど遠くまで轟く死肉の声、凍え、ながら、ことごとく、炎のごとく、夜、海のカーニバル、

伝説に、きっとなれたんだ。星ばかり降る宇宙と、宇宙の光すら届かない海底とを、繋ぐのは闇、退化した目、色の濃い透明、食卓を飾る、夜、海のカーニバル、