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読書感想文 『キッチン』吉本ばなな

メンバーシップ【cafe de 読書】6月の課題図書。

吉本ばなな作品は、10代の頃からよく見かけて、読んだ記憶もありますが、
その頃は、わたしの中にあまり入ってこなかった感じで…
でも今回読んでみたら、すうっと読めて、ちょっとびっくり。
あれから長い時間が経って、わたしもいろいろ、人生経験積んできたということでしょうか。


主人公のみかげは、台所が好き。

それだけで、わたしにとってはワクワクしてしまう本。
身近な人の死という、“さみしい“がいっぱいな話のはずなのに、
生きる力が、なんとなく染み出してくるような感覚になる。

毎日台所に立つ人なら、たとえば引越しで住む家を選ぶとき、キッチンは譲れないポイントだと思う。

社会人になったばかりの頃に住んだアパートが、学生時代と比べて、贅沢なくらいに広くて綺麗なキッチンで、そういえばとてもワクワクした。
どんな料理、できるかなって。
お菓子作りなんかにも、挑戦したりして。

実家にいた頃も、台所で過ごす時間は長かった。
そうやって、育ってきたように思う。
料理が得意とか、そんなんじゃないけど、
当たり前のように毎日、家族と喋りながら料理をし、食べる。

だけど気がつけばここ数年、わたしは、あまり料理をしなくなっていた。
世の中のおうちワークに逆行して、わたしは仕事づけで、まともな休みをほとんど取っていなかった。
冷蔵庫の中に何が残っているかも、いつも覚えていないから、食材を買うのも適当。
レトルト食品、冷凍庫の保存食はいっぱいにしていた。
さらに、徒歩1分のところにあるお弁当屋さんにも通うようになっていた。
なんかおかしい。
人間らしい生活、できていないのではないだろうかと思うようになっていた。

そして今、ようやく、リセット期間に入った。
そのときに、この本を読んだ。
読み終わって、キッチンの掃除をした。
昔の料理本が、出てきた。

そういえばわたしは、けっこう料理が好きだったはず。
誰かに食べてもらうのも、好き。

仕事柄、家族を亡くした人たちを、わたしはたくさん見てきたかもしれない。
わたしは、大切な何かをなくしたとき、どうやってその穴を埋めるのかわからないけど

今日もキッチンに立って何かをする。
毎日できるだけ磨いて、
これからも台所が好きと思えるようにしておこう。
そんなふうに思った。

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