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#18 前十字靭帯損傷の秘密教えます 13リハビリ編ートレーニング後期

こんにちは!理学療法士のKE Iです!

はじめに

今回も前十字靭帯再建術後のリハビリについて記事にします。

それなりに歴史の長いACL再建術ですが、現在強い根拠のある標準的プロトコールは確立されていません。
一般的にはスポーツ復帰まで最短6ヶ月、標準9ヶ月としています。

移植腱の治癒過程に応じて4期に分けています。
回復期:術後6週まで
トレーニング前期:6週〜3ヶ月
トレーニング後期:3〜6ヶ月
復帰期:6ヶ月〜
※半月板損傷の有無や程度によっては遅らせることあり

今回は「トレーニング後期」について書いていきますので、最後までお付き合いください。

それではいってみましょう!


移植腱

術後12週以降は、移植腱ー骨孔結合部の力学的強度が高まり、移植腱自体も血管再生により再構築が進みます。

リハビリテーションでは、走行、跳躍、方向転換といった高強度の運動を再獲得し、基礎的な種目特異的スキルの練習を開始していきます。


筋力の患健差を改善

正直どれだけやっても運動強度が低い状態が3ヶ月程度ありますので、少なからず筋力低下、筋萎縮は生じてしまうかと思います。

膝伸展筋力患健差の改善を目的に、OKCではleg extensionの負荷量を漸増していきます。
CKCにおいてはsplit squat(体幹・前方脚の下腿を垂直、後方脚の股関節中間位で行うスクワット)が有用です。
split squatは後方脚における大腿四頭筋筋活動が顕著に高まる一方、膝関節には後方剪断力が作用し、圧縮力は両脚スクワットより小さいことから比較的安全と言えます。

半腱様筋の収縮は膝関節内側コンパートメントを圧縮し、動的な外反リスクを軽減します。
BTB・HTどちらにおいても、部分的に再生する半腱様筋と半腱様筋からなる内側ハムストリングスの強化は必須になります。


衝撃と姿勢の制御能力の向上

姿勢の安定性を崩す外乱を与える神経筋トレーニングは、不良な運動パターンを減少させ、ACL損傷のリスクを低減させると報告されています。
この時期では競技復帰が近づいていますので、これまで以上に再受傷の予防に力を入れていく必要を感じます。

ACL損傷の受賞機転となる走行、跳躍、方向転換などには強い衝撃が伴うため、再受傷予防には衝撃吸収機能の改善が重要になります。
一方で動作速度や跳躍高を増大して高い競技力を発揮するには強い衝撃が必要になります。
このため、各競技や場面に応じて衝撃に強弱を制御する能力の獲得が不可欠です。
ACL再建後リハビリテーションでは、良好な姿勢を保持しながら、まずは衝撃吸収機能を再獲得し、次に運動の加速度と衝撃を漸増していきます。


加速と減速機能、俊敏性の回復

術後4ヶ月以降、走行速度や跳躍高の改善を目的に下肢関節パワーの発揮を促すトレーニングを開始します。
特にpower cleanやbox jumpなどをおこなうようにしています。

ランニングの速度は漸増し、術後5ヶ月までに全力疾走の50%程度まで増加していきます。
加速機能と同時に減速機能も改善させるため、直線で十分な距離と歩数で減速・停止する練習も実施していきます。

5ヶ月では直線でのスプリントを開始します。あわせて減速時の歩数を漸減して直線での急停止も獲得していきます。
その後、急停止からターンやカッティングへと移行していきます。

俊敏なサイドステップカッティングは競技パフォーマンスに不可欠ではありますが、非接触型ACL損傷の発生頻度が高く、俊敏性と安全性の両立が必要となります。
動作速度と衝撃の漸増をおこないますが、股関節等での重心コントロールが正確にできているかのチェックをしながら慎重に進めていきます。

(カッティング動作の再獲得にはlateral squatが有用です。)



まとめ

今回はACL再建術後トレーニング後期(3〜6ヶ月)におこなうべきことを記事にしました。

★ポイント
内側ハムストリングスの活動で膝外反モーメントを制御する
神経筋トレーニングにより良好な姿勢制御を獲得し、次に衝撃吸収機能を獲得した後、運動の加速度と衝撃を漸増する
加速機能は減速機能とともに向上させ、各動作のスピード・俊敏性と安全性を両立させる

本日はここまで。
別の記事で術前のリハビリについても触れていますので、興味があれば覗いてみてください。

本記事をご覧いただきありがとうございました。
ほかにもACL関連や変形性膝関節症などの記事もありますので、よろしければ読んでみてください。

次回もお楽しみに!

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