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収納という魔窟

懲りずに義伯母の生前整理の話。

義伯母は持ちものが少なかったため、たぶん収納スペースを持ち余していた。
今のツツジなら持て余してなんぼだろ!と考えるのだけど、義伯母の世代だともったいない気持ちも抱いたとしてもおかしくない。義伯母の部屋には大きな箪笥も毎日使う鏡台もあって、台所には小振りながら食器棚もあった。箪笥や食器棚を使わない選択肢も、お気に入りの鏡台を手放す選択肢もなかった。なら、それに収まるだけでよかったはずなのに、押入れの中にはプラスチックの収納ケースもあって、手の届かない天袋や吊り戸棚には消耗品がぎっしりと詰め込んであった。

一人暮らし用のアパートだったのに、なぜか家族用のわが家と同じサイズの下駄箱があった。上の段はいらないと思うけど、とりあえず付けられるなら同じもの付けとけって感じなのかな? わが家も靴だけじゃなくて、自転車バイク用品やら外で使うものが置いてあるもんね。義伯母はそういうツールも使わないから、純粋に靴を入れていたけどたぶん持て余しまくっていた。
義母が来たタイミングで下駄箱の靴を全出しして見てもらったけど、よく履くものは買い替えられているものの、普段履かないパンプスや夏用のサンダルは崩れ落ちそうなほどボロボロだったことに驚いた。
それでも捨てなかったのは、
スペースが空いていたから。
ボロボロのままだったのは、
滅多に履くこともないし、
買い替えの必要もないと判断していたから。

当時はまだ元気だった義伯母に確認したら、ほとんど取っておくと言っていたらしいけど、履かない靴を施設に置いておくのも憚られるし、義母の判断でほとんど処分した。

洋服は着られそうなものは見てもらうからと義母が箪笥ごと持ち帰ってくれた。義伯母のサイズはツツジと娘くらいしか着られないからと確認させられたけど、花の刺繍が入ったジーンズとか、キラキラした柄のTシャツとか、申し訳ないけど趣味じゃないので未開封のヒートテックインナーだけをいただいた。
そういえば、義伯母が元気なころにもキツくなった補正インナーとか、サイズが合わなかった新品の服とかいろいろ持たされたっけ。そういうものは処分を任されたと考えて、持ち帰って時間を置いてから手放した。
厳密に言うと、横のサイズは変わらんけど身長は10cmくらい違うからね。娘も身長は大きくないけど、頭ちっちゃくて手足長いからね。そもそも義伯母は派手好きなんで、ツツジなんかはまだまだ着られるレベルに達していない。

押入れのプラスチックケースからは、未開封のものやコンパクトに収納されたバッグが山ほど出てきた。
出してみたら容積が大きくなる感じ、わかります?
レスポートサックのバッグとかポーチとか、ギュウギュウに折り畳まれてちっちゃい袋に何重にも入れられてた。義従姉妹ちゃんたちからお土産でもらったりしたのかもしれない。友人知人も多くていろんな人に親切にしていたから、そういう人にいただいたのかもしれない。自分のアルバムなんかは、本人いわく「1番いいときの写真」だけ残して処分してきたみたいだけど(遺影にするって言ってたらしいけど、さすがに昔すぎて違う写真になった)、人が好きな義伯母だからいただきものは処分できなかったのかもしれない。一緒に誰かの手作りらしきラッピングされた布小物も詰め込まれていたことだし、もしかしたら自分が使わなくても誰かにあげようと思っていたのかも。箪笥から発掘された古いヴィトンの財布は、高校生の娘が今も愛用している。
残念ながら、ほとんどのものは親族にも不要と判断されて息子のお小遣いになった。しかも、売れたのはエルベのバッグと未開封のインナーくらいだった。「いつか売れる」と狭いわが家の限りある収納スペースに詰め込まれている夫のゲームたちも、どうせ二束三文だろうし売らなきゃ不用品のままだよと薄目で眺めている。

ただ、義伯母が亡くなったあとに義実家がスープの冷めない距離に引っ越してきたんだけど、「部屋がひとつ減るし、だいぶ物を捨ててきた」ってわりに引っ越し当日は寝る場所も確保できない状態だったし(義姉と一緒に必死で確保した)、「近いんだから1室を娘の部屋にすればいいわよー」と言っていたけど、その1室は物置き部屋になっていて奥まで入れる状態じゃない。義伯母の箪笥もしっかり引っ越してきている。
それと比べたら、やっぱり義伯母の持ちものは少なかったと思う。夫も結婚前に売れそうなものは友達に売りつけてたし、その後もマンガなんかは手放してくれたし、義実家の引っ越しで、こっそり義実家に隠していたマンガが1箱戻ってくるというハプニングはあったものの、半畳の収納になんとか収まってるくらいだから少ないと言えば少ないのだろう。
夫が死んだら全部捨てるけどね。



ちなみに、ツツジはゲームは一切やらないし本やCDも持ってない。本は図書館で借りるし、音楽はスマホで聞いている。
限りあるスペースを自分の過去のもので埋めるくらいなら、子どもたちの今のものを優先したかった。娘はオタクなのでいくらスペースがあっても足りないようだけど、わが家が狭いのでずっと我慢してくれている。
自分が物を持たなくても楽しめるタイプだとわかったのも断捨離の収穫だと思う。

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