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フラッシュバック未満

車を長時間運転していると、ふと思い出す。

"そういえば"で思い浮かぶアイツ。

洋楽はpassengerが好きで、
指輪を噛むのが癖だったアイツ。

ピーマンが嫌いで、
逆まつげに悩まされていたアイツ。

特に何か感情が湧くわけではないから、
浮かんだ思い出に思わず微笑んだりもしない。
そんなこと本当にあったのかしら?と首を傾げてしまうまである。

早朝、高速道路の先。
朝日が顔を出そうとしているのに、
灰色で厚い厚い雲は上から押さえつけていて、
さながら天国と地獄みたいだ。

スーッと隙間を縫って首元から
入り込んでくる風は嫌に冷たいし、ちょっとムカつく。

アイツとの最後はなんだっけ。
確か、時間帯は夜、夜。
確か、アイツは眼鏡をかけていて...かけて...いた?多分、うん、かけていた。
アイツの言葉そっちのけで、
眼鏡に反射した三日月ばかり眺めていたもの私。
うん、覚えてる。
その日の三日月は白くてやけに綺麗だったから。

確か...確かに、アイツと私は時に
確かめ合っていたはず。
そういう二人だった、はず。

ちょっと催してきてしまったから、
どこかのサービスエリアに寄りたいけれど、
さっき通り過ぎたばかりだ。

あのホテルの看板が見えるってことは、
直進はもう少し続くはず。

感情に浸ってるフリで、
誰に見せるでもなくカッコつけていたのに




......恥ず。

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