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[コラムに及ばない思考記文-03]美容師の色は何色?

手に職があるということ

現在、10年前、20年前と、ずっと不思議に感じ続けている美容師の社会的な位置づけ。美容師って、誰もが知ってくれているポピュラーな職業なのに、いろんな業界の要素が少しずつミクスチャーされている特殊な職業だと思いませんか。

そんなの気にする?といった声が聞こえてきそうですが、自分が美容師になりたての頃は、職業がら帰宅が深夜ということもあり、美容師が部屋を借りるのって、大家さんによってはちょっと嫌がられたりもしたんです。

いまだに職業欄へ接客業と記入してしまうのは、この頃からのクセなのだと思います。以前お世話になっていた内科の先生に「ちゃんとした国家資格なんだからちゃんと書いてよ(笑)」って言われてからはなんだかちょっと自信がついて、ちゃんと書いてます(笑)

コロナ禍と美容室

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今回のこのコロナ禍で、美容師とはどんな職業で、社会でどのような役割を担っているのだろうかと、改めて考える機会がたくさんありました。

新型コロナウィルス(COVID-19)の感染拡大防止策として、さまざまな業種に休業要請が出されたわけなのですが、理美容室は「生活の維持に必要」との見解があり、休業要請の対象から外されることとなりました。

当初は、この発言を受けて「はじめて美容師の社会的地位があがったねぇ」なんて、一瞬は思っていたものですが、なんだかモヤモヤとした引っ掛かりをすぐに感じ始めたのです。

国が営業を続けてくださいねと認めている、公衆衛生関連サービスの場であっても、外出は控えるようにと連日の報道や知事の会見が繰り返される毎日。濃厚接触+密接をコンプリートしてしまう美容室は、なんの補償もないまま開店休業状態に追い込まれてしまいました。

サロンのお向かいの飲食店の様子を眺めながら、飲食店の強さを目の当たりにするばかり。もちろん、飲食店もとても苦しい思いをしていた事は重々承知しているのですが、楽しみを求めてイートインで足を運ぶ高齢者のプチ団体、テイクアウトに並ぶ家族連れ、店頭での食材販売ににぎわう通りすがりの人々。

美容師の仕事は、お客さまがサロンに足を運んで下さらないと成り立ちません。意外と知られていないところで、美容師が仕事をしていい場所や条件って、法律にしっかり縛られているのです。だって、公衆衛生関連サービスという業種に括られているのですから。

平和の基に成り立つ職業

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リーマンショックや震災後にひしひしと感じたのが、この職業は衣・食・住が問題なく成り立ち、平和な生活が維持されている前提ではじめて求められる職業なのだという事です。

手に職があれば安心、髪は伸びるんだからみんな来るでしょと思われがちですが、それはちょっと違う。全ての職人は、誰かに必要としてもらうことではじめて、その技術が業として成り立つのです。

清潔感を必要とされる場合や人とは違う個性を表現したい場合、メンタルヘルスの維持やモチベーションのアップなどなどのさまざまな理由により、必要とされる技術をお客様に提供する美容師は、いろんな要素をかき集めて足元を地道に固めていかなくてはならない特異な職業だと感じています。

こんなに多面性を持つ業種に就けたことは、今生の糧であり、課題なのだなと感じるばかりです。

美容師が髪を切っていい場所は法で定められている

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美容室は開設するにあたって、保健所から定められた基準をクリアしなければなりません。そして、美容室で働く美容師は、必ず管轄区の保健所に届け出をし、台帳に登録してもらわなければ営業ができません。

 見た目やイメージから想像もつかないかもしれませんが、国家試験のために公衆衛生学や伝染病学、衛生法規なんかも学んでいたりします。

学科の勉強をしたのは遠い昔ではありますが、感染拡大の状況が落ち着かない中いらしてくださったお客さまに、少しでも安心してお過ごしいただける安全な場を提供するために、自分たちは保健所管轄の業種であるという意識が自然と高まりました。

移動美容室なんかすぐにできるんじゃない?とか、施設のお年寄りをカットしに行けばいいんじゃない?とか、さまざまなアドバイスをいただくのですが、それを自由に実現させる事は出来ないからこそこのコロナ禍に苦しんでいるのです。

自粛明け、美容室に行くのが不安な方へ

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ゴールデンウィークが明けてから、少しずつお客さまから連絡をいただけるようになってきました。美容室には行きたいけど、まだ少し出掛けるのが怖いと感じているのなら、いつもお世話になっている美容師さんに“こんなことが不安なんだけど”と、遠慮なく問い合わせてみてください。

それでもお出掛けする事に抵抗があるのならば、無理に出掛けないでください。いつも定期的に会っている美容師さんなら、お問い合わせの連絡をもらえただけでも「状況が落ち着いたらまた来てくれる」といった励みになるし、あなたが無事でいる事に心の底からホッとしてくれるはずなんです。

感染の爆発的な拡大を抑える事に成功している日本の場合、終息までにかなりの時間を要する事になりそうです。引き続き、新型コロナウィルス(COVID-19)の正しい知識と情報を集めるため、続々発表される研究報告に目を配り、自分ができる最大の範囲で勉強を続けていかねばなと思っています。

そうそう、結局のところ、美容師の色は何色でもない色。服のテイストに似合うようなヘアスタイルを提案するファッション性だったり、お仕事に差し支えないよう衛生面を重視したカットをすることもあったり、独自性を前面に出した個性を形づくる場合もあります。それぞれの美容師ごとに得意分野があるし、詳しいジャンルがある。大切にするものも一人ひとり違う。

日本の美容師は現在52万3543人。東京だけでも6万7050人。自分と惹き合う色を持った美容師さんと出会えるのは奇跡なのかもしれない‥夢がありますね。ただただ果てしない気もするけれど(笑)


最後までお読みいただきありがとうございました。

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