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NIリサーチャーコラム #31 春は出会いの季節 Part2 ~ その瞬間を大切に ~(2023年4月執筆)

執筆者: NIマーケティング研究所(集計分析担当) T.A

※NIリサーチャーコラムでは、当社の各リサーチャーが日々の業務等で感じた事を自由に紹介しています。

1)今年も桜は綺麗でした

昨年の春に、「#21 春は出会いの季節 ~ ”1”から始めるマーケティング ~」を書いてから1年が経ちました。早いものです。

そして先日、昨年同様、今年も新入社員の研修を担当させていただきました。

希望と不安が織り交ざった表情ながらも熱心に質問を投げかけてくる新入社員を見ながら、コロナ禍で大変な学生生活を送ってきた彼らには、これから先、くじけずに明るい未来に進んで欲しい、などという親心的な想いを抱いたものです。

と、同時に、去年研修した新入社員はあれから1年を経て、今はそれぞれの場所で活躍していることに嬉しさを感じ、これまた感慨にふけってしまいました。

そして、そんなことを思うようになった自分が、ますます歳をとってしまったとも実感します。

また、歳をとったと思うと同時に、1年前の研修の中で、いったいどんな小話をしただろうかと、はっきりと思い出せないこともあることにふと気が付きます。

もちろん1年前のことですから、印象的だった出来事などは明確に覚えてはいても、その時々の小さな出来事や些細なことは、何もかもそう明確に思い出せないのは仕方ないことだとは思います。

しかし、それは時間の長さの問題だけではなく、その時々の小さなことや些細なことは、それが最近のことであったとしても意外としっかりは思い出せないものです。思い出せても曖昧だったりします。

年齢を重ねることで自身も記憶力の低下を実感し、また認知症を患う家族の介護をはじめたことで再認識し、自分自身に最近言い聞かせている言葉があります。

記憶は記録ではないのだ」と。

もちろんこれは年齢等による影響も大きいことなのですが、たとえ若い世代であっても、どんな世代でも本質は同じであると思っています。

昨年も桜が綺麗だったことは覚えていても、昨年の開花日をぱっと答えられる人は多くはないはずです。

2)刹那の想いを掬い上げる

各種調査に携わっていると、よく目にするのが「どのような時に、そう感じられましたか?」といったような、シーンやオケージョンを問う質問です。

回答者は記憶を掘り起こして回答するわけですが、おそらくそれは強く記憶・印象に残った、回答者にとって代表的なシーンやオケージョンが主に回答されてきているのかと思います。

どういった回答内容が多いか、比較などで大枠を把握するのには十分ではあるのですが、多くの人はまず思い起こすことができた代表的な回答がメインとなってくることが考えられるため、そこから新たな発見、隠れたインサイトを発見するためには十分な回答は得られにくいことがあるかもしれません。

もちろん、少数意見などから新たな発見、隠れたインサイトの片鱗を見出すことができることもありますが、それが実際に幅広く共感される内容なのか、結局は本当にただの少数意見なのかの判断は難しいかもしれません。

様々なことが便利になり、大きな課題に対しては多くのことが満たされるようになった今、新たな発見、隠れたインサイトなどは、はっきりとは記憶に残りにくい小さな、些細なことの中に残されていることも多いのではないかとも思います。

そのような記憶に残りにくい小さな、些細なことについてまでを、”感じたその瞬間”に正確に把握できないかと開発されたのが当社のサービス
FAST Feelings(ファスト フィーリングス)」です。

3)FAST Feelings(ファスト フィーリングス)

「気持ちの瞬間 を 言葉として大量に切り取る」をコンセプトに、日常の中で感じた「気持ちの瞬間」を、チャット形式でリアルタイムに回収できるシステムです。

「FAST Feelings(ファスト フィーリングス)」紹介ページはこちら

通常のアンケートでは、指定した質問に、任意のタイミングで1人が1度だけ答えてもらう形になりますが、「FAST Feelings」では、回答のタイミングを指定し、その指定した「瞬間」の直後であれば、1人が何度でも回答ができるような形式をとっています。

アンケートに一度参加頂いた後は、指定したタイミングが発生した際に(上記図であれば、ストレスを感じた瞬間に)回答画面を開いていただき、その瞬間に感じたことを回答していただく形式です。

回答期間の中で、あらゆるタイミングでの回答が可能になるため、記憶を掘り出して出てくるような印象的、代表的な内容以外にも、小さなことや些細なことまでが幅広く、数多く拾えてくるのが特徴です。

実際に何度かデータに携わらせていただいたこともありますが、データを見ていると、確かに自分ではなかなか思いつかない、あえて言わないであろう内容であっても、「あー、あるある!」と共感できる内容も種々見られ、非常に面白く、興味深い内容でした。

また、今後、画像のアップロード機能の追加なども予定されています。

回答と一緒にその瞬間の画像をアップロードしていただくことで、より回答内容がイメージしやすくなったり、回答内容だけからは伝わりにくい細部にわたるデータが集められるようになったりすることなどが期待されます。

例えば、実際の家庭生活の中で「これは困った、不便!何とかならないかな?」と思ったシーンについて、

・それはどんな不便でしたか? → 自由回答
・どのようなタイミングで不便と思いましたか? → 自由回答
・その不便によって困ることは何ですか? → 自由回答
・実際に不便を感じた部分はどこでしたか? → 画像

といったように、上記は例で幅広く聞いていますが、もう少し焦点を絞った上で、生活の中での実体験を、その瞬間に回答していただく際に、言葉や選択肢のデータだけではでは表現しにくい部分などを、画像データで補い、よりイメージを掴みやすくするといった使い方も考えていけるようになるのかと思います。

尚、このような機能追加は「FAST Feelings」に留まりません。

より役立つ、使いやすいデータをご提供できるよう、各種手法・サービスにおいて改良・開発を日々進めていますので、小さなことや些細なことでも、まずは当社にご相談をしてみて頂ければと思います。

4)興味反応クリッカー

もう1つ、目的や用途は「FAST Feelings」とは異なりますが、同じくモーメントを扱う調査手法として、「興味反応クリッカー」も合わせてご紹介させていただきます。

「興味反応クリッカー」紹介ページはこちら

こちらは、動画を見ていただきながら、同時にその瞬間ごとの気持ちに応じて、対象者が 「○」「×」を回答(クリック)することで、その瞬間瞬間の直感的な評価を測定する調査手法です。

アウトプットとしては、動画開始から終了までの時間を追って〇と×の割合が視覚化されるので、その動画のどこでポジティブな、もしくはネガティブな感情を持つ人が多いのかを検証することができます。

現在は主にCMの評価などに使われる手法ではあるのですが、最近では動画を活用したアンケートとしても応用ができるのではないかと考えています。

例えば、動画を活用した商品特徴の説明、使い方の紹介などについて、どういった点についてわかりやすかったか、わかりにくかったか、動画を見ながらその瞬間的な評価を得る、といったことなどにも活用していくことはできるのではないかと考えています。

また昨今、動画を伴ったSNSやHPなどのインターネットを使った広報活動は、TVCM以上に多くの人の目に触れるようになっています。

TVCMは放映前に様々な基準で審査もされますが、企業様が独自で動画を制作し、それを公開するケースも多々あるのではないでしょうか。

しかしそれはプラスにも、また時として思いもよらずマイナスにもなりうる時代です。

その動画を見た消費者がどのタイミングでどう感じるのか

公開前にその反応を確認するプレ調査の一環としても活用いただけるのではないかとも思います。

5)アジャイルなマーケティングに向けて

昔から「秋の空は七度半変わる」という諺があるように、元来、人の心は移ろいやすく、
またネットの情報やSNSなどからも幅広く大量の情報が溢れる現代においては、人の心はますます大きく揺れ続け、日々の変化も激しい状況です。

そのような中で、マーケティングにおいてもアジャイル(機敏)な対応は、今後より求められていくものとも考えられています。

従来の手法でも、アジャイルなマーケティングに繋げていくことは可能ですが、「感じた瞬間、思った瞬間の生の新鮮な気持ち、反応をとらえたい。」といった場合には、本コラムでご紹介したような手法も是非ご活用いただければと思います。

この春、新入社員の入社や人事異動などもあり、皆様とも新たな出会いが増えてくることかと思います。

是非、この機会に新たな手法・サービスとも出会っていただき、新たな発見との出会いに繋げて頂ければと思います。


執筆者プロフィール

NIマーケティング研究所(集計分析担当) T.A

大学時代は社会調査を専攻するも、ロスジェネのさきがけ世代で、大学卒業時は就職氷河期真っ只中。
一度はシステムエンジニアとしての道を歩み始めるも、IT不況のあおりを受け、勤めていたSIerは倒産。
路頭に迷っていたときにネットリサーチの存在を知り、今までの経験をハイブリットできないかと調査業界へ転身。
ロスした分を取り戻すべく、デスク~現場をがむしゃらに走り続けて10余年。現職に至る。
現職では、主に消費財メーカー様の商品開発、市場分析などのテーマに集計分析から報告まで担当している。