三角と四角
楽しい図形の話と思わせる作戦(笑)。
三角と四角もカクカクしてるけど、三格と四格もカクカク、ガクガクしてる人向けに。
筆記はともかく。
話すとき、頭の中では格・性・数・前置詞の格支配などの知識を総動員して、形容詞なんて入って来ようものならさらに4×4の表を3つも頭の中で広げてみたり。頭の中は大忙しで一瞬でキャパオーバー。
そこは出来ればあやふやにしておいて、ゴニョゴニョっとお茶を濁して話し終わり(切り)たい。
やってたわ(笑)。
でも、そこが肝心かなめの、誤魔化しちゃったら文が成り立たない「て・に・を・は」に当たるところだから避けて通れない。
・・ということは分かってる・・けどっ!
というわけで、今日は杓子定規の用法から抜けて、ラク〜に克服できる
実践・格の話。
ドイツ語に全地球測位システム(GPS)付いてる
gehenとかfahrenのような「行く」という意味のある動詞には動き・移動があるので目的語は4格を取る、と習いましたか?
それだけの理解だと、
Ich gehe in den Park spazieren.
は納得だけど、Ich gehe im Park spazieren.
は間違い。
と理解してしまうことがあります。
1. も2. も前置詞のinを使っているけど、1. は方向を示す、2.は場所の前置詞として使われています。
どちらの文章も正しいのなら、gehenの時は4格を取る、という杓子定規の知識だけでは不十分ということになりますね。
どちらの文も公園で散歩することには変わりないけれど、話者がまだ公園の外にいるのか、すでに公園の中にいるのかで表現が変わってきています。
友人が電話してきて、日本語で「公園で散歩しようと思ってる〜」と言われたら。
その友人がこれから公園に向かうのか、すでに公園に到着しているのか、わかりませんね。
ドイツ語は逆に、自分の現在地を伏せて(?)「公園で散歩しようと思ってる〜」と言えない驚異のGPS付き言語であることが分かります。
話者の意図することを、3・4格支配の前置詞はめっちゃ細かく伝えてくれる。
話者のイメージするところが前置詞の格にギュッと詰まってくるから、そこを正確に他者に伝えられ、また正確に理解出来る手応えを感じるとき、ドイツ語解像度が上がったな、と実感できると思います。
たかが格、されど格。
このGPS付き言語であるところのドイツ語ですが、「私はそのとき、ここにいました。」と明言するのではなければ、通常は上記のように「公園で散歩しようと思ってる〜」の一言にその人の居場所が暗示(?)されているわけです。
たかが格、とは言っていられない例を紹介します。
1. Als Ich in die leicht nach rechts gekrümmte Straße fuhr, kam uns ein anderes Auto entgegen.
2. Als Ich im leicht nach rechts gekrümmten Straße fuhr, kam uns ein anderes Auto entgegen.
「右の緩いカーブの道を走っていたら、対向車がやってきました。」
訳がこれで十分なときもあれば、不十分なときがあります。
では、車(運転手)がカーブの手前を走っていたことを示していますが、
では、車(運転手)がすでにカーブに差し掛かっていたことを示しています。
通訳現場は、事故現場。
混乱する話者を通じて、現場を見ることなく通話のみで素早く正確に事故の状況を関係機関に伝えることが仕事です。
後の保険会社とのやりとりの中では事故当時の状況は過失割合などでも重要になってくるため、誰かの人生を左右しかねない。
格で確定する刑がある。
・・と思えば、語尾をゴニョゴニョしている場合ではない、と思えますね。
おまけ
因みに「動きがあれば目的語は4格」と同じように、
「行き先が水辺なら前置詞はan」と習いましたか?
本当にそうでしょうか?
Ich bin an den See gefahren.
私は湖に(車で)行った。
これはよく使う一般的な文です。
つまり、私は多分湖で泳いだり、湖畔で寝転んでみたり、ボートに乗るために、もしくは誰かを訪ねるためか、これだけでは文脈がわかりませんが、とにかく湖まで行った、という意味です。
Ich bin in den See gefahren.
私は車で湖に突っ込んだ。
つまり、私は故意か不注意か、湖に車ごと突っ込んでいます。
文脈がわかりませんが、鉄道事故ならその車両ごと湖に突っ込んだ、ということも考えられます。
どちらの文も正しいです。
車で湖に突っ込みたくなることくらいあると思いますが、それを表現できない、なんてことはありませんのでご安心を。
今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。
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