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ビジネスパーソンと現地言語(ドイツ語の場合)③

Hallo, Guten Tag!

恒例の3回シリーズの最後です。

前回、前々回と、英語圏以外の国に赴任するビジネスパーソンの現地語(ドイツ語)について書いてきました。

前回までは、ビジネスパーソンが現地の赴任先で必要とするドイツ語と、赴任前に提供される「語学」研修の実態、そしてビジネスパーソンのための語学を超えた異文化コミュニケーションに特化した研修について少し触れました。

実はここ数年、グローバルビジネスを取り巻く環境の変化や多様性についての社会の理解や考え方が少しずつ変化してきていることにも伴って、英語一択のコミュニケーションから、非英語圏における現地に根ざしたビジネスコミュニケーションの相互理解のアプローチがより強く求められていることを感じています。それは異文化コミュニケーションの研修に参加する企業の数やその理解が高まりに見ることが出来るのですが、今回はそんな新たなグローバル環境における、ビジネスパーソンのドイツ語について書きたいと思います。

グローバルビジネルの多様化

さて、このシリーズの1回目にも書きましたが、日本で赴任前の研修を受ける多くの人は大企業に勤めるビジネスパーソンです。
昨今、変革の過渡期に晒されていない企業はないとはいえ、参加する企業の多くが歴史も深く、市場シェアも安定しているエスタブリッシュメントであることもまた事実です。

日本から出向する大企業に勤めるビジネスパーソン同様、ヨーロッパの大手企業に勤める管理職も実は現地語や現地文化をそれほど意識せずとも、業務上英語に困ることはありません。彼らは数年ごとに転職を繰り返してキャリアアップしていくことで、世界中を飛び回りながらヨーロッパ市場の流動性とダイナミズムに一役買っていますが、行く先々で英語だけで困らないグローバル環境が用意されていることがほとんどです。

場合によっては業務上ばかりか、私生活でも現地語に触れなくとも困らない場合が実は多々あるのですが、業務のみに集中できる環境が与えられ、それ以外の現地と密接につながる生活部分が自身から切り離されアウトソーシングされた人間の末路については、私の経験も踏まえていつか書こうと思います(ヤバそう( ̄∀ ̄))。

さて、少なくとも業務ではほぼ100%英語で事足りるという環境で、それでもわざわざローカル言語のドイツ語を学び異文化トレーニングを受ける必要があると考える企業が増えているのは何故なのでしょうか?

そこにはグローバル化を取り巻く環境の変化が関係しています。

数十年前、ドイツにいる日本人と言えば、音楽家・駐在員・研究者・政府関係者・留学生。
現在。ドイツにいる日本人と言えば上記に加えて、日本人の経営するヘアーサロンに勤める人、飲食店(和食店・ラーメン店・お寿司屋さん)に勤める人、日本語教師、スポーツ選手、スタートアップ企業、看護師、マイスター制度などドイツ独自の教育制度に入り込んだ研修生、日本人の顧客に特化した不動産営業、ワーキングホリデー滞在、その他日本企業以外に勤める多くのビジネスパーソンがいます。
この他にもドイツでビジネス展開する日本人やクラシック音楽以外の分野で活躍する芸術家など、ドイツに住む日本人の雇用先や収入源は実に多様化しています。

そこはエスタブリッシュメントではない、会社内部に現地の情報やネットワークやコネを十分に持たない、新規に進出してゼロイチの挑戦をする企業や個人が多くいます。実にエキサイティングでチャレンジングな世界ですが、その中にも異文化コミュニケーショントレーニングに参加する団体や企業、個人が増えています。

グローカルという考え方 

さらに、人口減少に伴って衰退していく国内産業の救世主的なアプローチと言われたり、現地の環境・文化に配慮した海外展開のアプローチとして謳われたりしていて、流行りのSDGsとも親和性が高いと思われるグローカルという考え方の浸透も、異文化コミュニケーション理解の必要性を後押ししています。

背景には、オセロの駒をひっくり返していくような資本主義で世界を席巻する時代からの脱却があるのではないかと思います。
グローバルがローカルを飲み込むというの2極対立的思考から、グローバル的な視点がローカルに寄り添い適応した先に、グローカルという新たな価値が生み出した多様性と個別性を持つ商品やサービスが生まれました。その流れが異文化理解の引き金となり、相互理解の機運の高まりにもつながっているのかもしれません。

さて、そんな環境変化の中、実際の業務ではどんな場面に直面するのでしょうか。

職業柄、日独間のトラブルをよく経験しますが、原因はコミュニケーションであることがほとんどです。正確にいうと原因となる事象(故障・納期遅れ・事故など)があって、その対応や責任問題、問題解決策などに関するコミュニケーション不備が原因です。
現地の業務では英語のコミュニケーションで十分なため、ローカル語であるドイツ語が必要ないと思っていたけれど、実際に行ってみたら英語で話されるドイツの(商)文化的な影に気づかずに思わぬところで苦労する、ということもあります。

また、ローカル社員が集まればやはりその会話はドイツ語に。
内容はスモールトークから、英語ではない利点を活かしたちょっとした「都合の悪い」業務上の話まで(笑)多岐に渡ります。

英語でお互いに意思疎通出来るため、ある程度までは問題ないのですが、あるところで行き詰まり、異文化コミュニケーションの専門家を自社に置くことを決めた企業もあります。

異文化コミュニケーショントレーニングのアプローチの一つに、コミュニケーションの見える化があります。
情報を可視化するアプローチは身近な方も多いと思いますが、ことコミュニケーションの可視化となると、抵抗があるものです。
トレーニングについてはまた他の機会に書こうと思います。

グローバル人材の育成、育成とよく言われますが、それが英語やその他の影響力を持つ言語(特に中国語、フランス語、スペイン語、日本語、ドイツ語)能力を持つことと狭義に理解されているうちは、立板に水のごとくプレゼンができて相手を論破できるだけのグローバル人材ならぬグローバル人災になりかねない・ω・)ノ

・・・かも知れない。


今日も最後まで読んでくださりありがとうございました。


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